「100年後の人にあって良かったと思われるもの」を目指して 浮川社長と浮川専務のMetaMoJiが進める現場のDX:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(1/3 ページ)
世界情勢の不安定化や物価の高騰、そして継続する円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載の第9回はMetaMoJiだ。
コロナウイルスの流行から世界情勢の不安定化、製品供給網の混乱や物流費の高騰、そして続く円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。連載第9回はMetaMoJiだ。
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MetaMoJiは、日本語ワープロソフト「一太郎」で知られるジャストシステム創業者の浮川和宣氏が率いる企業だ。2009年に設立された同社は、独自の日本語手書き入力システム「mazec(マゼック)」をベースに、大林組と共同開発した建設業向けデジタル野帳「eYACHO」、さまざまな業種や業務に適用できる「GEMBA Note」など、タブレットと手書きを組み合わせた提案によって、建設現場や生産現場、営業現場など、IT化が遅れていた「現場」の改善をリードする。
2024年には、MetaMoJiの創業から15年目を迎えることになる。前編では、浮川和宣社長と浮川初子専務に、MetaMoJiの創業から、今に至るまでの新たな挑戦について語ってもらった。
今から100年後の人たちがあって良かったと思う物を作りたい
―― 浮川和宣社長は、ジャストシステムでは創業から30年間に渡って社長を務めましたが、その後に設立したMetaMoJiも、2024年にはその半分の期間となる15周年を迎えます。改めて、NetaMoJiの創業時を振り返ってもらえますか。
浮川社長 もう、そんなに経つんですね(笑)。2009年の創業当初に思っていたのは、社会をもっと楽しくして、もっと便利にしたいということでした。また当時、若いエンジニアの一人から、「今から100年後の人たちが、あの時のあの技術が、MetaMoJiから生まれてよかったと思ってもらえるようなものを生み出したい」と言い出したのです。それは私たちの共通の思いでしたね。
―― ジャストシステム時代にはカナ漢字変換をする際に、スペースキーを押し、さらに繰り返し押すと、次候補が出てくるという操作を考案しました。この操作方法は、日本語でキーボード操作をする上では、100年後も残る操作方法だと思います。そうした経験が、その思いに反映されている感じがします。
浮川専務 MetaMoJiのエンジニアは、全てがジャストシステム出身者でしたから、それを近くで見ていて感じていたことなのかもしれません。ただ、そうはいっても創業当初はあまり明確な目標もなく(笑)、ネットワークを活用して、何か新たなことをやりたいという気持ちでスタートしました。
そのときに開発していたソフトウェアの1つが、20秒間までの動画を投稿できる動画配信アプリで、今のTikTokのようなものでした。これは、試作レベルまで開発が進んでいましたが、途中で開発を中止することを決定しました。
浮川社長 開発の中止を決定したのは、MetaMoJi創業直後の2010年1月に、Apple CEOのスティーブ・ジョブズ氏が、iPadを発表したのが理由でした。これが、MetaMoJiが目指す世界になると直感的に感じたのです。
開発を進めていた動画配信アプリについても、これは将来、大きなビジネスになりそうだという直感はあったのですが、iPadの衝撃の方がはるかに大きく、そちらに一気に舵を切りました。PCでは机の上だけの利用に固定されていたものが、iPadであれば自由に持ち出すことができ、いろいろな現場でITが活用されるきっかけになると考えたからです。
そこで、米国で先行発売していたiPadを購入してきた知人から現物を譲り受け、さらに、個人輸入でiPadを入手し、約20人のエンジニア全員が使えるようにしました。
浮川専務 会社もまだスタートしたばかりでしたから、プレッシャーがあるわけでもないですし、「こっちだ!」と決めたときの動き方は素早かったといえます。エンジニア全員も、iPadが持つインパクトの大きさを実感していたと思います。
浮川社長 では、私たちがiPadを使ってできることは何だろうか――。そう考えたときに、あることに気がつきました。iPadは文字を入力する際に、画面上にソフトウェアキーボードが表示され、これが大きなスペースを取り、どうしてもデータの表示部分が小さくなってしまうのです。これを解決するにはどうしたらいいか。そこで誰もやっていない手書きに挑戦することにしました。
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