グラフィックスメモリを倍増した「Radeon RX 7600 XT」は6万円台で買える動画編集にもお勧めなGPUだった:先行レビュー(3/3 ページ)
AMDがRadeon RX 7700 XTとRadeon RX 7600の“間”を埋める新型GPUをリリースした。発売に先駆けて、その実力をチェックしていこう。
より重たいゲームでのパフォーマンスをチェック!
ここからは、より負荷のかかるゲームタイトルを動作させたのパフォーマンスをチェックしていこう。
最近は「なるべく安価にゲームが遊べるPCを組み、いわゆる家庭用ゲーム機の代わりとしても利用したい」という人も多い。特に近頃は家庭用ゲーム機だけでなく、Windowsでもプレイできるタイトルが増加傾向にあるため、「PlayStation 5」や「Xbox Series X|S」の代わりにゲーミングPCを組む(購入する)という人も増えている。
PCを使って快適に遊べるかどうかは、パーツ選びの際に気にしたいポイントだ。中でもGPUの性能は最も重視すべきポイントの1つで、しっかりチェックしたい。
そこで今回は、重量級ゲームタイトルとして名高い「Cyberpunk 2077」と「Microsoft Flight Simulator」の2つのタイトルをRadeon RX 7600 XTで遊んだ際の平均フレームレートを計測していく。
両タイトル共にAMDの超解像技術「FidelityFX Super Resolution(FSR)」に対応している。同機能を有効にすることで、GPUの本来のターゲット解像度を超える高解像度でも高いフレームレートでゲームをプレイすることができる。ただし、FSRを含む超解像技術は「低解像度で出力されたゲーム画面をリアルタイムで引き延ばす処理」であるため、映像の解像感が失われやすいというデメリットもある。
画質を重視するか、解像度を重視するか――そこは人それぞれだと思うが、今回はなるべく高画質設定で、かつ“超解像技術で高フレームレートで遊ぶ”ことを想定した設定で計測する。
Cyberpunk 2077では画質プリセットを「ウルトラ」とした上で、その他の設定も「画質優先」とした状態で計測した。Microsoft Flight Simulatorでは初期状態のままでディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦し、2分間の平均フレームレートを「CapFrameX」で計測した。結果は以下の通りだ。
- Cyberpunk 2077
- フルHD
- FSR無効(ネイティブ解像度):24.27fps
- FSR有効:84.43fps
- WQHD
- FSR無効(ネイティブ解像度):14.70fps
- FSR有効:63.17fps
- 4K
- FSR無効(ネイティブ解像度):6.93fps
- FSR有効:36.69fps
- フルHD
- Microsoft Flight Simulator
- フルHD
- FSR無効(ネイティブ解像度):60fps
- FSR有効:60fps
- WQHD
- FSR無効(ネイティブ解像度):50fps
- FSR有効:60fps
- 4K
- FSR無効(ネイティブ解像度):27.6fps
- FSR有効:59.8fps
- フルHD
スコアが示す通り、FSRの効果は絶大だ。
FSRがオフの状態では、一般的なPCディスプレイやTVリフレッシュレート(フレームレート)である60Hzの上限ギリギリかそれ未満で、特にCyberpunk 2077では時折カクついた感じになってしまう。それに対して、FSRを有効にすると、WQHD以下の解像度では高リフレッシュレートのディスプレイを使いたくなるくらいスムーズな動きとなった。さすがに、4K解像度のCyberpunk 2077は、FSRをもってしても「ちょっと物足りないな……」と感じてしまったが。
ただ、本来のターゲットに据えている解像度を考えれば、Radeon RX 7600 XTは必要十分な性能を備えている。ベースとなったRadeon RX 7600のターゲット解像度はフルHDであり、動作クロックの向上と、グラフィックスメモリの増量で「WQHDでも従来より快適に動く」とうたっているGPUであることを忘れてはいけない。
レイトレーシングなど必然的に動作が重たくなる設定を有効にした状態でこのフレームレートを出せているのだから、Radeon RX 7600 XTはしっかり性能を発揮できていると考えて良い。
動画の書き出しは上位モデルと遜色なし
最後に、Radeon RX 7600 XTのゲーム以外のパフォーマンスをチェックしよう。
GPUはゲーム以外にも写真や動画の編集、書き出しといったクリエイティブシーンでも活躍する。特に最近はスマートフォンでも4Kやそれ以上の高解像度の動画が撮影できるため、それらを取り込んでPCで編集する機会も増えてる。
もちろんゲームという視点でも、動画配信などGPUでの動画エンコードのパフォーマンスが求められるシーンは多いため、今回は「Adobe Premier Pro」を使って4K動画のエンコード速度をチェックした。
ここでは、小型アクションカメラ「GoPro HERO 10」を使って撮影した数本の4K動画を、30分ほどの4K動画としてまとめて書き出すのに要した時間を比較する。結果は以下の通りだ。
- Radeon RX 7600 XT:4分55秒
- Radeon RX 7700 XT:4分54秒
- Radeon RX 7600:7分31秒
- GeForce RTX 4060 Ti(8GB):7分54秒
- GeForce RTX 4060:8分2秒
Radeon RX 7600 XTの動画エンコード速度がビックリするほどに速い。上位モデルのRadeon RX 7700 XTとほぼ同じ時間で完了している。「何か設定を間違えたのかな?」と思い、テストをやり直したものの、結果は変わらなかった。
Radeon RX 7000シリーズに搭載されているAV1エンコーダーの性能が高いことは、過去のテストでも明らかになっている。それにしても、この速度には驚きを隠せない。恐らく、グラフィックスメモリが16GBになった効果が一番よく分かるテストといえるかもしれない。
何を目的にするかにもよるが、「動画の書き出しを高速化しいけど、予算が……」という人には間違いなく刺さる結果だろう。
性能は順当 「グラフィックスメモリ倍増」は動画書き出しに効果あり
テスト結果の通り、Radeon RX 7600 XTは順当に「Radeon RX 7600とRadeon RX 7700 XTの間を埋めるGPU」という仕上がりだ。基本的には同クラスのGeForce RTX 4060/4060 Tiとも十分に張り合えるスペックなので、フルHD解像度をターゲットとするグラフィックスカードに良い選択肢が増えたと見てよいだろう。
とりわけ動画のエンコードは、この価格帯のGPUの中で最速といっていい。ホビーユースでも本格的なクリエイティブシーンでも、動画編集を頻繁に行うのであれば最もコストパフォーマンスに優れたGPUと断言できる。
消費電力についてもアイドル時で81W、ピーク時(3DMarkのTime Spy Extreme実行中)でも296Wと、今回のテスト環境では300Wをギリギリ下回る程度だった。Radeon RX 7600 XTの導入はグラフィックスカードの交換だけで済ませられそうなのも、ライトユーザーにとっては歓迎すべき選択肢となるはずだ。
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