試して分かった「Apple Vision Pro」の体験価値、可能性、そして課題:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)
予告通り、筆者は「Apple Vision Pro」を手に入れた。手に入れてすぐ試して思ったことを、つらつらとつづってみようと思う。
どこまで「視覚」と「聴覚」を支配できているか?
Apple Vision ProのLight Sealは、鼻部分の遮光に布を使っており、フィット感を阻害せずにギリギリまで遮光できる。このことは「Immersive Mode(没入モード)」時の体験を優れたものにしてくれる。
本製品を起動すると、複数のカメラで捉えた周辺の画像を的確に立体視できる。少しぜいたくをいえば、カメラ間の映像をつなぐ部分でわずかに空間がゆがむ瞬間があるものの、近くにある被写体の周辺がゆがむといった現象はほとんど感じられない。
周辺の空間認識という意味では、本製品を装着したまま家中を歩き回ることができるはずだ。解像度とコントラストが低く感じられることを除けば、特におかしなことは感じない。
実際に装着してみた図。この状態できちんと`iPhoneを使って自撮りできていることからも分かる通り、解像度とコントラストが低く感じられることを除けば見え方に違和感はない。ほんのりとではあるが、正面には「デジタルペルソナ」を表示できるようになっている
実際の視野と表示の一致という観点では、Metaの「Quest Pro」や「Quest 3」とは比較にならない。トーンカーブや色温度、全体の明るさなどで多少の違いが出てしまうが、一致させようという努力は十分に感じられる。
一方、Apple Vision Proが描写するグラフィックスの精細度は、リアリティー(現実味)があるかどうかはともかく、肉眼の視野に近い。筆者のように、日常的にメガネを使っている人間からすると、矯正視力による視界よりもむしろ細かいほどだ。
このことはApple Vision Proの右上にあるDigital Crownを回し、Immersive Modeに100%入ると理解できる。Appleは超高精細な360度映像を幾つか用意しており、このモードでは美しく落ち着いた風景の中に“包まれる”感覚を得られる。この時の感覚は、まさにリアリティーとしか言いようがない。
この高精細なグラフィックス表示を用いてレンダリングされるバーチャルオプジェクトのAR配置も高精度だ。一度配置するとズレることなくテーブルの上に置かれ、他の部屋に移動した後に戻ってみると、きちんと同じ場所に同じオブジェクトが置かれていた。
聴覚に関しても、アプリの映像が見える方向に合わせ、適切に聞こえるよう立体音響のエフェクトがかかる。例えば空間オーディオの映像を再生していると、その映像の方向に合わせて、全ての音場が展開される。複数のアプリが起動している場合は、それぞれの表示パネル(ウィンドウ)がある方向から音が聞こえる。
これは「AirPods Pro」などのヘッドトラッキングなどでもおなじみの「空間オーディオ」を応用したものだが、複数動いているアプリの音声でも展開できるのは驚きだ。例えば「FaceTime Video」で誰かと話をしている際、相手の“顔”から声が聞こえるのはもちろんだが、表示パネルの距離を変えると、話者との距離(聞こえ方)も変化する。
このために、AppleはUSB Type-C端子対応の「AirPods Pro(第2世代)」に超低遅延モードを用意した。しかし、超低遅延モードのないAirPodsシリーズでも同様の効果を感じることができた。
視覚と聴覚に対する高い精度を伴うアプローチは、結果的にうまく行っているようだ。
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