コラム

「PowerColor」グラボはどのような環境で生まれる? 台湾TULの工場を見学してみたCOMPUTEX TAIPEI 2024(3/4 ページ)

「PowerColor」ブランドのグラフィックスカードで知られるTULは、台湾に本拠を構えるメーカーだ。COMPUTEX TAIPEI 2024に合わせて、本社工場を見学する機会があったので、グラフィックスカードの生産の実情をお伝えにしたいと思う。

できたてホヤホヤのグラフィックスカードは全数検査を実施

 さて、いよいよグラフィックスカードの製造ラインを見学です。ここは本来は入ることができない重要な場所ですので、じっくりと見せてもらいました。

 まず、基板が1枚ずつ流れてきて、ハンダパウダーが塗布されます。

 ハンダ付けというと、ハンダごてを使った作業をイメージしますが、ハンダ付けしなければならない場所が膨大な上に細かいので、ハンダパウダーを基板に塗布して(載せて)、その上に部品を載せて、高温で温めることでハンダ付け(いわゆる「リフロー」)、という手順を取ります。

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 ハンダの塗布からパーツ載せまで、ものすごいスピードで進むこともあり、見ていてとても楽しいです。


流れてきた基板に……

ハンダパウダーを塗布して細かいパーツを載せていきます

 リフロー作業ですが、少し長いレーンで行われます。その後、機械を使って正しくハンダ付けされているかどうかを確認し、問題ない場合は「OK」のトレイに載せられて、次の工程に運ばれます。

 ここまでのプロセスでは、一部のパーツが搭載されていません。それは次のプロセスで載せるのだそうです。その「次のプロセス」は別のラインで行われるのですが、見学日はそのラインが稼働しておらず、見学はかないませんでした……。残念!


カバーに覆われているこの設備は「コンベクションリフロー機」。コンベクションの名の通り、対流させた熱風を使ってハンダパウダーを溶かし、部品を装着します

コンベクションラインから出てきた基板

正しくハンダ付けできた基板(表面)

正しくハンダ付けできた基板(裏面)

 残りのパーツを取り付けた後、ヒートシンクや冷却クーラーなども取り付けたら、製品が正常に動作するかのテストが行われます。テスト対象は生産“全数”ですが、PC USERを含むPC関連メディアにおける「ベンチマークテスト」でよく見かける環境とそっくりです。

 なお、「互換性テスト」や「極端温度検査(0~150度の環境での稼働テスト)」については、全数ではなくランダムに固体を抜き取って行っています。


生産が完了したグラフィックスカードは、どこかで見たようなテスト台で全数検査を行います(テスト中なのは、先ほど生産していたものとは別のカードです:以下同様)

ランダムな抜き取り式ですが、互換性テストも行われます

同じく抜き取り式で、定温ボックスを使った極端温度検査も行われます

この日は0度でのテストを見学できました

0度に保たれた環境で稼働するグラフィックスカードは青色に光っていました。温度設定も相まって、寒々とした印象を受けます

懐かしのグラフィックスカードを見る

 工場見学の最後は、TUL/PowerColorブランドのグラフィックスカードの展示コーナーです。壁面には、過去に発売されたほとんどの製品が飾られているそうです。

 皆さん、どれがどんな製品だか分かるでしょうか……?


壁面に飾られたPowerColorの歴代グラフィックスカード

こちらはSilicon Integrated Systems(SiS)のAGP接続GPU「SiS 6326 AGP」を搭載したグラフィックスカード。SiSはGPU(やチップセット)の開発からは撤退しており、現在はタッチセンサーやアクティブペン、MEMSマイクの開発/製造を手掛けています

こちらは、ATI(現在のAMD)のPCI Express接続GPU「Radeon X1950」を搭載したグラフィックスカード。いつ頃発売された製品なのか、覚えていますか?

 グラフィックスカードの製造の流れや、カスタマーサービスの“裏側”を垣間見ることができて大変参考になりました。この場を借りて、TULには感謝を伝えたいと思います。

 記事の締めとして、COMPUTEX TAIPEI 2024におけるPowerColorブースの様子もお伝えしようと思います。

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