新「FMV」に込めた不退転の決意 学生から「パソコンはいらないよ」と言われても王道を行く理由 FCCLの大隈社長に聞く:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(1/4 ページ)
不安定な世界情勢が続く中で、物価高や継続する円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載の第18回は、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の大隈健史代表取締役社長だ。
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富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、FMVブランドをリニューアルした。ブランドロゴを刷新するとともに、個人向けPCについては、ノートPCの「FMV LIFEBOOK」を「FMV Note」に、デスクトップPCの「FMV ESPRIMO」を「FMV Desktop」に名称を変更。「シンプルで分かりやすいこと」「時代に合った価値観であること」「日本のお客さまを見つめ、コンピューティングテクノロジーで日本の暮らしを応援すること」の3点を、新たなブランドコンセプトとして発表した。
そして、ブランドリニューアルを象徴する製品に位置付けたのが、若年層を対象にしたモバイルノートPC「FMV Note C」だ。なぜ、今FMVブランドをリニューアルしたのか。FMV Note Cはどんな狙いから誕生したのか。富士通クライアントコンピューティングの大隈健史社長にインタビューした。その内容を2回に分けてお届けする。
なぜトップシェアを獲得したのにブランド変更を行ったのか
―― 2025年1月に、FMVのブランドをリニューアルしました。この狙いを教えてください。
大隈 FMVのブランドリニューアルとして、まずはロゴを変更しました。シンプルであり、洗練されたフラットなデザインを採用しました。従来の重厚感を持ったロゴから、軽やかなイメージを持ったものになったと思っています。
富士通のコンシューマーPCブランドとしてFMVが誕生したのは1993年10月であり、長い歴史があります。FMVは日本におけるPCブランドとして、一定の認知度を持っていますが、この認知度は過去からの歴史や、その蓄積によって得られています。言い方を換えれば、40代以上の世代によって、支えられているブランドだといえます。
実際に調査をしてみると、若者世代にはFMVといってもパソコンのブランドということすら認知されていないことが分かりました。つまり、パソコンとして認知されていないため、若者がパソコンを選ぶときには候補にすら入らない。
この状態を放置し、過去に築いた遺産に寄りかかっているだけでは、FMVの将来はありません。今こそ、FMVとはどういうブランドなのかということを、しっかりとコミュニケーションすべきである。これが、ブランドリニューアルの最大の理由です。
―― 現在、FMVは、個人向けPC市場において、トップシェア(※)を維持しています。それにも関わらず、ブランドのリニューアルに踏み出したんですね。
※2023年度(2023年4月~2024年3月)、全国有力家電量販店の販売実績を集計する第三者機関データに基づくFCCL自社集計
大隈 確かにトップシェアなのだから、わざわざブランドをリニューアルしなくてもいいという考え方もあるでしょう。しかし、これは短期的な話です。中長期的に捉えれば、新たな顧客層に訴えていかないとFMVは過去のブランドになり、いずれは忘れ去られてしまいます。
私には、トップシェアだから今のままでいいという考え方は全くなく、むしろ危機感の方が強いのです。新たな顧客層にアプローチするために何を行うか、将来に渡って、トップシェアを維持するにはどうすべきか。それが、今回のブランドリニューアルにつながっています。
現在、個人向けPC市場でトップシェアではありますが、幅広い顧客層に支えられたナンバーワンではありません。また、ブランド力によって購入され、その結果、ナンバーワンになっているのかというと、そこにも課題があります。
製品の良さが評価されたり、強い営業力によって販売が促進されたりといったことはありますが、強いブランド力を背景にFMVを購入してもらうという点では、まだまだ努力すべき点があります。
今はブランド力によってナンバーワンになったわけではないと認識しており、裏を返せば、これからはナンバーワンにふさわしいブランド力を備える必要があります。「FMVというブランドだから買った」と言っていただけるように、ナンバーワンらしいブランド力を持てるように投資をしていきます。
―― FMVの新たなブランドコンセプトとして、「シンプルで分かりやすいこと」「時代に合った価値観であること」「日本のお客さまを見つめ、コンピューティングテクノロジーで日本の暮らしを応援すること」の3つを定義しました。それぞれの意図を教えてください。
大隈 1つ目に掲げた「シンプルで分かりやすいこと」というのは、これからの時代のパソコンに必要な要素だと思っています。パソコンは、テクニカルかつ複雑な商品です。何でもできるけど、うまく使わないと何もできない。そして、何でもできることを追求しすぎるとプロダクトアウトの考え方になり、技術者はどんどん作り込んでいってしまいます。
技術的には優れてはいても、それが必ずしもお客さまの使いやすさや、使う目的には直結しないということが起きてしまうのです。そこで、何でも詰め込むのではなく、研ぎ澄ますことでシンプルな製品を作り、シンプルに課題を解決する提案を行うことを重視することにしました。
技術をしっかりと理解して購入していただける方は、とてもありがたく大事なお客さまです。しかし、そうしたお客さまだけでなく、もっと広く、シンプルに使ってもらうための提案が必要だと考えています。
「結局、FMVを使うと何ができるの?」と聞かれたときに、シンプルに「これができます」と言えることが必要で、これからの時代に求められている要素だと思っています。
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