激安とはいえない廉価スマホ「iPhone 16e」を使って分かった本質的価値 Appleの“次の時代”を見据えた一手か:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
2月28日、iPhone 16eが発売される。発売に先んじて借用できたので、実際に使ってみて感じたことをまとめたい。
A18チップでApple Intelligenceを“ベーシックな”機能に
さて、AppleがiPhone 16eをラインアップに加えた最大の理由は、Apple Intelligenceを全てのApple製品ユーザーに届けるためだ。
Apple Intelligenceを動かすには、最新世代のNeural Engine(推論エンジン/NPU)が必要となる。AI処理の効率を高める観点では、CPUコアやGPUコアもより新しい方が望ましい。それなら、最新のA18チップを使った方が基準をクリアしやすいという判断が働いたのだと思われる。このチップを今後のiPhoneを購入する人に(あらかじめ)届けておきたいということだ。
ただし、iPhone 16eのA18チップは、iPhone 16のそれと比べるとGPUコアが1基少ない4コアとなっている。とはいえ、Apple Intelligenceを提供するためのCPU性能やAI処理性能に変わりはなく、日常使用での応答性に不満が出ることはまずないだろう。
さて、そのApple Intelligenceだが、先日デベロッパー向けにβ版が提供され始めた「iOS 18.4」において、日本語に対応したAIモデルを利用できるようになった。日本での正式な対応は4月初旬の予定だが、先行する英語版とほぼ同じ機能が利用できるようになる。
Apple Intelligenceに関しては、また別途詳細をお伝えしたいが、各種アプリの応用も洗練具合が発表時よりも進んでおり、日常的に使うアプリの中で自然にAI機能を取り入れられるよう工夫されている。ただし、機能そのものがまだβテスト段階であるため、確定的なことは言えない。
また「GenMoji」などの画像生成に関しては、国ごとの好みのテイストなども話題になるだろう。しかし日常の使いこなしの中で、ユーザーが好む言い回しを使い始める面なども見せており、文章作成やタスク遂行をする上で、欠かせない機能にはなっていきそうだ。
Appleは今後、iOS/iPadOS/macOSなどにおいてApple Intelligenceが存在することを前提にユーザーインタフェース(UI)や機能を設計し、自社製品のエコシステム全体の基盤にしようとしている。
クラス最強のバッテリー駆動時間を実現する「Apple C1」
バッテリー駆動時間もiPhone 16eの大きな魅力だ。Appleの公称値では、最長26時間の動画再生が可能だといい、同じ6.1型のiPhone 16(公称18~19時間程度)を上回る。ストリーミング動画再生でも最長21時間駆動するが、これはiPhone SE(第3世代)を11時間以上も上回る大幅な改善だ。
その理由は大きく2つある。1つは内部構造の刷新によるバッテリー容量の増加、もう1つは消費電力の大幅な削減だ。後者については、A18チップの効率性向上と、Apple初の自社設計セルラーモデム「Apple C1」の省電力性が寄与している。Apple C1については、別の記事で解説しているので、併せて参照してほしい。
割り切っているところは実用上どうなのか?
一方で、iPhone 16eの充電面にはコスト優先の“割り切り”が見られる。iPhone 16eは「MagSafe」に非対応で、ワイヤレス充電は従来規格の「Qi」(最大7.5W)となる。
「iPhone 12」以降のほとんどのモデルが背面にMagSafe用マグネットリングを内蔵し、15Wの高速ワイヤレス充電や磁着アクセサリをサポートしていたが、16eではこれが省かれた格好だ。Qiを使った充電こそ可能だが、スピードは遅くなる。
ただし有線では急速充電に対応している。20W以上の出力のUSB PD(Power Delivery)対応電源アダプターを使うと、約30分で50%の容量を充電可能だ。言うまでもなく、USB Type-Cに端子が統一された恩恵はiPhone 16eでも受けられる。ただし映像出力(DisplayPort Alternate Mode)には非対応なので気を付けたい。
充電回り以外にどの部分を割り切っているのか、まとめてみよう。
まず米国向けモデルでは、他のiPhone 16ファミリーでは対応しているミリ波(mmWave)の 5Gに対応していない。しかし、これは日本を含む米国外のユーザーには関係ない。
無線LANはWi-Fi 6 (IEEE 802.11ax)までの対応で、6GHz帯での通信に対応しない。他のiPhone 16ファミリーがWi-Fi 7(IEEE 802.11be)に対応したのとはやや大きな差がある。
またUWB(超広帯域通信)チップが非搭載だ。UWBは「AirTag」の精密探索やデジタルキーの共有に使われるが、iPhone 16eではBluetoothやGPSで代替することになる。もっとも、実際の影響としてはAirTagでは「探す」機能が使えない程度の影響しかないので、多くのユーザーにとっては大きな支障とはならないだろう。
なお、音声通話や位置情報、その他の基本的な通信機能は他のiPhone 16ファミリーとおおむね同等だ。衛星通信による緊急SOSや、ロードサービス連絡などの衛星通信機能も備えている。
SIMスロットの仕様は販売地域によるが、日本で販売されるモデルはnanoSIM+eSIMのデュアルSIM対応となる。USB Type-C端子はUSB 2.0規格(最大480Mbps)で、先述の通りUSB PDには対応する一方、DisplayPort Alternate Modeには非対応となる。
Appleがユーザーに届けたい「最新iPhone体験」のための基本モデル
iPhone 16eの位置付けは、実はiPhone SE(第3世代)から変わっていない。最新のiPhone体験を、より広いユーザー層に解放するために存在する。
ディスプレイやデザインの刷新によって、見た目と使い勝手はハイエンドモデルに迫る近代性を獲得した。A18チップとApple Intelligence対応によって“新しい”ベースラインを引いたともいえる。
最新iPhoneの機能やカメラについて「少し持て余すなぁ」と感じていた、買い替えに及び腰だった人たちにこそ、iPhone 16eは検討する価値があると思う。これをいうと本末転倒かもしれないが、そのバッテリー性能の高さだけでも魅力的だろう。
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価格は9万9800円(税込)から。21日午後10時に予約受け付けを開始し、28日に発売する。
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