“後出し”の生成AI「Apple Intelligence」がAppleの製品力を高める理由:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/5 ページ)
生成AIにおいて出遅れを指摘されているAppleが、開発者向けイベントに合わせて「Apple Intelligence」を発表した。数ある生成AIとは異なり、あくまでも「Apple製品を使いやすくする」というアプローチが特徴だ。
生成AIの時代において、Appleは新たなテクノロジーイノベーションの波に乗り遅れた――そんな声が増していたことは、多くの人が実感していたと思う。
Appleは、デバイス上に大規模な推論エンジン(NPU)を率先して搭載した実績がある。しかし、同社はプライバシーを重視するがゆえに、それを生成AIのために使うことを拒み続けてきたのだ。それはクラウドベースの生成AIでも例外ではなく、いわゆる「GAFAM(※1)」と呼ばれる米国のビッグテックの中で唯一、大規模な生成AIに対する取り組みを発表してこなかった。
(※1)Google、Apple、Meta Platforms(旧Facebook)、Amazon.com、Microsoftの5社を指す略語
これは、他のビッグテックとは異なり、同社がハードウェア事業を“本業”に据えていることとも関係する。自社ブランドの製品を選ぶユーザーの、日々のコミュニケーションや行動を取得し、それを研究開発や製品機能の向上に役立てる――そのことに拒否感を持っているからだ。
生成AIの基本となる「大規模言語モデル(LLM)」を利用する際に、iPhoneなどのデバイスに保管されている、極めて個人的な情報を安全にクラウド上で処理する手段がなかったことも、Appleが生成AIで“蚊帳の外”に置かれていた理由でもある。
少し前置きが長くなってしまったが、そんなAppleが「Worldwide Developers Conference(WWDC) 2024」において、自社の生成AI「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を発表した。
それは今までの「Appleは遅れている」という声を払拭(ふっしょく)するだけでなく、生成AI時代において独自の地位を築き、本業であるハードウェア製品の魅力を高める強力な一手となりそうだ。
WWDC 2024はオンライン(バーチャル)セミナーが主体だが、6月10日(米国太平洋夏時間)には米カリフォルニア州クパチーノにあるApple Park(本社)でリアルの「特別なイベント」も行われた。このイベントには抽選によって選ばれた世界中の開発者の他、日本を含む世界各地の報道関係者やインフルエンサーが招かれた
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