メモリ不足によるPC高騰が直撃! Windows 10 ESU延長の裏事情と「脱Windows」の現実味:Windowsフロントライン(1/2 ページ)
Microsoftは、コンシューマー向けWindows 10のESU(拡張セキュリティ更新プログラム)の提供期限を2027年10月まで延長した。この背景には、深刻なメモリ供給問題によるPC価格の大幅な高騰があり、ユーザーにWindows 11への移行猶予を与える狙いがある。ESU延長の裏にあるMicrosoftの思惑と、2027年以降に待ち受けるプラットフォームの課題を考える。
既に各所で報じられている通り、MicrosoftはWindows 10のコンシューマー向けユーザーに提供されているESU(Extended Security Updates)の期限を1年先の2027年10月12日まで延長した。
年ごとの契約更新が必要で、加えて1年を経るごとに1ライセンスあたりの利用額が倍増するエンタープライズ向けESUに対し、コンシューマー向けESUは一度適用条件を満たしてしまえば期限まではセキュリティアップデートの配信を受けられる。
この延長措置について、多くのメディアによれば、昨今のDRAM(ならびにNAND)の供給問題によるPC本体価格の大幅な上昇が背景にあるという。
この影響により、最低でも同クラスのモデルで2〜3割、Microsoft Surfaceのように5割も価格が上昇したケースがある。また日本においては急速に進んだ円安でこの影響はさらにひどく、米国などの国よりも極端な価格上昇が見られる。
近年、メインストリーム向けのPCでも16GBが標準となりつつある中、搭載メモリを8GBに削って快適性を損ないつつも価格引き下げに動くケースさえある。
買い控えは避けられない状況だが、Windows 11ではインストールにあたってTPM 2.0以上と特定世代以降のSoCの搭載を要求している。そのため、比較的古い世代のPCを利用するユーザーはWindows 10のサポートが終了し、Windows 11の導入を要求されたとしてもハードウェアが未対応ゆえに買い換えが必須となり、Windows 10のサポート終了(EOS)とともにセキュリティ上の脅威にさらされる結果となる。
それならば、従来1年限定だったESUの提供期間を1年延長し、PC買い換えのための猶予期間を与え、そしてメモリ問題のほとぼりが冷めるまで待とうとしていると考えられる。
本当に1年の延長で済むのか?
エンタープライズ向けESUは3年間提供されるため、コンシューマー向けESUの提供期間が2年間になったところで、実はMicrosoftにおいてコスト的な追加負担は少ない。本来であれば、2年目以降にコンシューマー向けのESUユーザーから見込まれる追加収益が発生しない程度だ。
ただ、コンシューマー向けESUはエンタープライズ向けとは提供条件が異なっており、後者がシンプルに追加コストを払えば利用できるサービスなのに対し、前者は30ドルの追加コストを払う代わりに、「OneDriveへのバックアップ設定」または「Microsoft Rewardsを1000ポイント」のいずれかの条件を満たすことでESUが利用可能だ(Microsoft アカウントを持っていることは最低条件)。
無料オプションがある時点でお気付きだと思うが、Microsoftはコンシューマーに対してはESUそのものでもうけようとは考えていない。Microsoft アカウント(MSA)利用を必須としつつ(EEA:欧州経済圏では必須条件ではない)、OneDriveバックアップをひも付けることでMSA関連のオンラインサービス利用をさらに促す一種のプロモーションと位置付けている。
加えて、提供期間を区切ることで、「可能な限りの早期な移行」を促す狙いだ。移行を促すという点はエンタープライズ向けESUでさらに顕著で、ESUが年契約で年を経るごとにコストが倍増するというのも、移行へのプレッシャーを意味する。企業ユーザーにとってはコスト負担が設備更新を促すのに最適だからだ。
ただ、こうした移行プレッシャーは逆効果になる可能性もある。あまりに露骨にESUの費用を高くすると「サポートが終わるけど放置でもいいや」と考えるユーザーが現れる恐れがある。
これは特にコンシューマーに顕著だとみられ、「お金がかかるなら放置でもいい」となりかねない。そのため、Microsoftとして“Windows 10では必須ではない”MSAの活用を促すために、費用の支払いの代わりにMSA関連サービスの登録へと誘導するというのが採りうる選択肢なのだろう。
ここで問題となるのが、「本当に2027年中にPC(メモリ)の価格問題が解決して、買い換えに充分な水準まで下がるのか」という点だ。
もともと、2025年時点では「2026年末が価格上昇のピーク」という論調があり、影響そのものは2027年まで続くという比較的楽観的な見方だった。ただ現状は幾分か状況が悪化しつつあると考えられ、メモリ不足は2027年以降にわたって比較的深刻な状況が続き、結果としてPC市場も少なくとも同件の影響を受けて10%以上落ち込むと予想する調査会社のデータもある。
Microsoftのみならず、IT業界全体にとってリスクとなるのは、前述のように移行を諦めてESU終了時点でセキュリティパッチを適用しなくなるユーザーが出現し、Windowsというプラットフォーム自体の脆弱(ぜいじゃく)性を高める結果となり得る点だ。
これは、本来セキュリティを高めるためにWindows 11への移行を促していたMicrosoftの意図とは真逆の動きであり、コンシューマー向けESUの3年目があるのかも含め、2027年、あるいは2028年以降の大きな課題となって残るだろう。
既にこういった形でハードウェア上の理由からWindows 11への移行が行えずに取り残されているデバイスは4億台以上あるという話もある。
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