コラム

アイロボットのロボット掃除機「ルンバ」の新型が好調な売れ行き その理由を解き明かす(3/3 ページ)

アイロボットジャパンのロボット掃除機「ルンバ」の新型が好調な売れ行きを示している。その理由はどこにあるのか。同社への取材を通して分かったことをお伝えする。

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販路による「売り分け」はうまく行っている

 新しいルンバは、大きく分けると「家電量販店を通じた店舗販売」と「オンライン販売(自社サイトやAmazon.co.jpなどのECサイト)」の2つのチャンネルを通して展開されている。アイロボットジャパンによると、現時点ではそれぞれのチャンネルにおいてに狙い通りの売り分けができているという。

 家電量販店では吸引機能に特化したRoomba Max 705 Vac ロボットと、本体内に最大60日間のゴミを収納できるRoomba 205 DustCompactor Comboが好調だ。家電量販店に来店する購入者にはさまざまななニーズがあり、「吸引に特化した最高峰の製品が欲しい」という用途ではRoomba Max 705 Vac ロボットが売れている。また、初めてロボット掃除機を購入したいという来店客は実際に動きを見て購入する傾向にあり、動作を検証した結果Roomba 205 DustCompactor Combo ロボットの清掃力や拭き取り力が評価を得ている。

 オンライン販売では、オンライン専用モデルのRoomba Plus 405 Comboや、エントリーモデルのRoomba 105 Combo + AutoEmpty充電ステーションが売れている。競合他社と比べて高い付加価値が評価されている。


売れ筋は販売チャンネルによって意外と異なる

 なお、アイロボットジャパンは花王のホームケアブランド「マジックリン」との協業により、ロボット掃除機専用の洗剤「iRobot 床用洗剤 supported by マジックリン」を製品化し、このほど販売を本格化した。

 ルンバの床拭きに適したオリジナル洗剤で、清潔感のあるさわやかな香りですっきりとした床に仕上げることができる。公式オンラインストアにおける販売価格は1900円だ。

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花王との協業で生まれた「iRobot 床用洗剤 supported by マジックリン」は、ルンバの床拭きに適した成分配合となっている

新しい「ルンバ」は新しい「アイロボット」の象徴に

 4月16日に日本で行われた新製品発表会では、初来日した米iRobotのゲイリー・コーエンCEOが登壇し、新製品について説明すると共に、経営再建に向けた取り組みについても説明した。わざわざ日本の発表会に登壇したのは、iRobotの経営面における懸念を払拭する狙いもあったといえる。

 iRobotは、3月12日に発表した2024年度業績において、負債の借り換えや売却の可能性など「さまざまな選択肢」を視野に入れた取り組みを開始したことを公表した。それによって、企業の年次報告書(Form-10K)には「継続企業の前提(Going Concern)」に関する懸念が盛り込まれた(参考リンク)。

 これについて、発表会でコーエンCEOは「(企業経営に関する)疑問や懸念、誤解を招くような一部報道があった。iRobotは財務基盤の強化策を講じており、事業戦略の見直しを行っている。すべてがポジティブなアクションである」とした上で、「新製品は(従来製品よりも)利益率が向上しており、収益の成長に貢献する。また次世代の新製品も開発中だ。(Form-10Kに)付記された内容は、事業運営や製品開発、製造、サービスの提供には直接的な影響を及ぼさない。iRobotは盤石である」と、日本のメディアを前に直接訴えた。


日本での製品発表会に登壇したゲイリー・コーエンCEO

 アイロボットジャパンの集計によると、今回の記者会見の報道件数は約600件で、そのうち製品に軸足を置いた報道が56%と過半数を占めたという。一方で、ビジネス軸での報道は25%、製品とビジネスの両方をカバーした報道が19%だったそうだ。通常、アイロボットジャパン(あるいはiRobot)に関する報道は製品軸がほとんどを占めることが多い中、今回はビジネス軸での報道が多い結果となっており、それが結果としてiRobotの経営面での懸念を払拭(ふっしょく)することにつながっている。


メディア掲載状況を集計した結果

 事実、この発表会がプラスに働いたと思われる動きもあったようだ。

 3月に量販店を訪れたお客さまから『今アイロボットの製品を購入しても、会社が無くなってしまい、サポートを受けられないのでは?』という誤解に基づく問い合わせがあり、実際に販売も大きく落ち込んだ。しかし、新製品発表会以降はこうした問い合わせが一気に無くなった。フルラインアップで新製品を一斉発売したことも、経営面での懸念払拭につながった要因になったと捉えている。

 アイロボットジャパンは、国内市場において「2030年までに掃除機の5台に1台をロボット掃除機にする」計画を新たに打ち出した。

 新製品投入時の瞬間風速や特定店舗における集計では、この水準には至っていないようだが、冒頭で触れたように、中~高価格帯のカテゴリーでは従来機種に比べて2~3倍の販売台数を記録する出足の良さを見せている。今回の新製品は「5台に1台をロボット掃除機に」という長期目標に向けて、着実な一歩を踏み出したといえそうだ。

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