Appleが加速するインクルーシブな試み 2025年内に導入予定のアクセシビリティー機能を発表:林信行の「テクノロジーが変える未来への歩み」(1/3 ページ)
Appleが「世界アクセシビリティー認識デー」に合わせて、2025年内に導入予定のアクセシビリティー機能を発表した。その内容を林信行氏がまとめた。
5月の第3木曜日は、「世界アクセシビリティー認識デー」(Global Accessibility Awareness Day/GAAD)だ。米国時間でのGAADに合わせて、Appleのティム・クックCEOが2025年に搭載予定のアクセシビリティー機能についてXに投稿した。
この40年間、私たちは最高のテクノロジーはアクセシビリティーを考慮したものだと信じてきました。より多くの人々が世界をナビゲートし、自分を表現し、つながりを保つことができるように、新しいアクセシビリティー機能を共有できることを誇りに思います。 #GAAD
Appleはこの10年ほど、毎年この時期に、その年に搭載予定のアクセシビリティー機能を発表している。2025年の新機能の目玉は、App Storeの「Accessibility Nutrition Labels(アクセシビリティーラベル)」、Macのための「拡大鏡」、「点字アクセス」、「アクセシビリティーリーダー」が追加される他、「ライブリスニング」「パーソナルボイス」そしてvisionOS対応などだ。以下で、その詳細を見ていきたい。
何より画期的な「アクセシビリティーラベル」の表示義務化
2025年搭載予定のアクセシビリティー機能の中で、画期的なのはアクセシビリティーラベルだろう。英語での機能名は「Accessibility Nutrition Labels」。「Nutrition Labels」とは食品のパッケージなどに印刷されている「栄養表示」のことだ。
Appleは既にApp Storeで流通する各アプリがプライバシー情報をどのように扱っているかを明示させる「Privacy Nutrition Labels(プライバシーラベル)」の表示を義務付けているが、2026年からはそれに加えてアクセシビリティー機能にどの程度ちゃんと対応しているかの表示が必要になる。
アクセシビリティ機能は全ての人に向けた機能で、生まれつきの障害を持ってなくても怪我で一時的に片手が使えない人、聞こえが悪くなった人、小さい文字が読みづらくなった人の機能もある。
そしてアプリがAppleのガイドライン通りに作られていれば、特別なことをしないでも、どのアプリでも使えるはずの機能だ。ただ、アプリによっては他との差別化のために独自開発の機能を搭載していることがあり、こうした機能ではアクセシビリティー機能が使えないことがある。
これまで、アクセシビリティー機能の利用者がアプリをダウンロードしたら、必要なアクセシビリティー機能が使えなかったという不幸な行き違いが起きており、アメリカ盲人財団のエリック・ブリッジス(Eric Bridges)CEOも「消費者は製品やサービスが自分にとってアクセシブルかどうかを最初から知る権利がある」と述べていた。
アクセシビリティーラベルは、アプリをダウンロードする前に、そのアプリがVoiceOver、音声コントロール、「さらに大きな文字」、「十分なコントラスト」といった機能に対応しているかを確認し、不幸な行き違いをなくしてくれるという点で画期的だ。
この表示義務によって、これまであまりアクセシビリティー機能への対応をニーズと感じていなかったアプリ開発者も、そのニーズに気付き、それが今後、新たな顧客層と出会うきっかけにつながる可能性もあるのではないかと筆者は期待している。
いずれにしても、アクセシビリティー機能を利用している全てのユーザーにとって恩恵の大きな改善であり、Appleがアクセシビリティー機能をどれだけ大事に考えているかという姿勢を示すものでもある。ぜひ、他のOS開発者にも真似して追随してほしい動きだと思う。
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