あらゆる障害に希望を与える「Access コントローラー」のカスタマイズ性――テクノロジーの発展を加速してきたインクルーシブな試み【SIE編】:林信行の「テクノロジーが変える未来への歩み」(1/4 ページ)
テクノロジーが困っている人を助け、そして新たな発展へと結びつく――SIEが投入したPlayStation 5向けの「Access コントローラー」を林信行氏が試した。
PlayStationでおなじみSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)から、一部のユーザーが熱望していた製品が発売された。最新ゲームコントローラーの「Access コントローラー」だ。
満を持して登場した誰も置いてきぼりにしないコントローラー
この製品を障害を持つ人のためのコントローラーと紹介する人もいるが、公式ホームページの文言は「ゲームをより遊びやすくするためにデザインされた、幅広いカスタマイズが可能なPlayStation 5用コントローラーキットです」と記されており、障害を持つ人だけに限定した製品ではないことが伝わってくる。
ソニーは近年、誰一人置いてきぼりにせず製品を利用できるようにするインクルーシブデザインに力を入れている。2023年1月にも、原則全ての商品やサービスを2025年までに障害者や高齢者に配慮した仕様にすることを宣言している。
同月、CES 2023で「Project Leonardo」というコード名で発表された「Access コントローラー」は、そんなソニーグループの製品の中でも象徴的な製品だ。
障害を持つ人でも使いやすいコントローラーを開発したのは、SIEが初めてではない。開発当初は国勢調査や医療データなどを元に「最も一般的な障がいの状態を特定して解決を試みる」という形で開発を進めていたが、やがてそのアプローチは「効果がない」という結論に至り、その後、後発な分、実際にアクセシビリティコミュニティー(障害を持つ人たちや、障害を持つ人たちを支援する団体)と身近に寄り添いヒアリングを重ねた丁寧なもの作りを行うべく方向転換を行った。
完成したコントローラーは、ユーザー1人1人が持つ身体的能力的特徴に合わせて、どこまでも細かくカスタマイズできるコントローラーだった。
発売前に製品を試す機会を得た筆者は、怪我をして片手が使えない状態を想定して製品の開封からセットアップ、カスタマイズまで全て片手で行ったが、全く苦労を覚えずにセットアップを完了することができた。
そもそも最初に製品のパッケージを見て驚かされた。パッケージの下には紙でできた2つの丸い輪っかが付いているが、これは右手/左手どちらか片方の手で引っ張ればテープが剥がれ、箱を開けられることがすぐに分かるデザインだった。
もちろん、開封後の製品の取り出しやカスタマイズも全て片手でできる。
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