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文章は“AIと共に”執筆する時代に――「Claude 4」を活用することで変わりつつある執筆術本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

執筆の補助に生成AIを活用する――何度か試行してみたものの、しっくりこなかった。しかし、Anthropicの生成AI「Claude 4」と出会い、ついにAIと“共に執筆する”ための道筋を見つけたかもしれない。

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筆者のClaude 4の使い方を紹介

 では、ここからは筆者がどのようにClaude 4を使っているのか、現時点における実例を交えて紹介しよう。

Googleの「NotebookLM」で情報の収集/整理を実施

 まず、情報収集と整理にはGoogleの「NotebookLM」を使っている。取材で録音した音声はもちろん、配布された資料、関連するリンク(URL)など、あらゆる情報源を放り込み、相関関係を含めて整理してもらう用途に使っている。「Google Workspace」を契約している場合は、追加の「Pro機能」を利用可能だ。

 実は、NotebookLMと似た機能はClaude 4にも存在する。事前に資料を与えて、その情報を元に会話できる「Project機能」がそれなのだが、記憶できる資料の容量が少ないという問題がある。NotebookLMなら、200MBまでの資料を最大300個(無料版は50個まで)登録でき、YouTube動画へのリンクを音声データとして扱うことも可能だ。

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 NotebookLMは与えた資料の整理はする一方で、ネット上の情報を検索しないようになっている。加えて、基本的には事前学習した情報への“結び付け”も希薄だ。仮に事前学習した知識を解答に盛り込む場合も、その根拠や参照先について言及してくれる。つまり、ハルシネーションが起こりづらいのだ。

 こうした特徴は、取材成果や取材先から得た資料、インタビューなどをまとめる際にとても有益だ。ゆえに、まず第一段階でNotebookLMを使って情報を整理するようにしている。


NotebookLMは、いろいろなソースを総合して整理してくれる点で便利だ。設計上、ハルシネーションが起こりづらいのもメリットといえる

 実際の事例として、2025年初頭にデジタル庁が実施した記者会見での音声や配布資料を基に、「マイナンバーカード」関連の情報を整理して出力してもらう。資料のPDFファイル(10個)あらかじめアップロードした上で、「デジタル庁はマイナンバーカードを基盤にどのようなサービスを展開していくのか?」と指示を行った。

 結果が下の画像で、情報を整理したレポートした文書としては分かりやすい。しかし、さすがにそのままでは記事にはできない


2025年初旬に行われたデジタル庁の会見について、NotebookLMに整理してもらった結果。10個のPDFファイルをうまく整理できてはいるのだが、記事向けの文章として用いるのは難しい

Claude 4で文章を整理

 そこで、NotebookLMにまとめてもらった「レポート」をもとに、Claude 4を使って更なる事前処理を行ってみる。今回はプロンプトの前方に記事のコンセプト(構成)を指示した文章を連ねて、その後にNotebookLMが出力した文章をペーストしている。記事のコンセプトは以下の通りだ。

#記事のコンセプト
30代以上のテクノロジーに興味のある男性女性。両方に知的好奇心を持ってもらうための新しい技術や商品の紹介記事。日本語の常体で記述。ファクト情報を重視しながら、未来への可能性を示唆するコラムとする。 #記事全体の流れ ・テーマ設定と結論の示唆
・新しい技術の紹介と、それに対する疑問、あるいは懸念

  • 疑問や懸念に対して、開発者やメーカー、発信する組織がどのように考えているか、その考えに対して消費者目線で見たときに、筆者自身がどう受け止めるか?
    ・開発者やメーカー、発信する組織の主張に対して、自分自身の目線からの意見を加えて、納得できる落としどころに関して言及する
    ・開発者やメーカー、発信する組織が示唆する将来像に対して、自分自身がどのように未来を見通せるようになったのか、取材を通じた変化や未来に対する期待を表明する
    ・まとめとして取材した新しい技術や商品に振り返り、その評価を下して、さらなる発展を期待して終わる

    記事を書く上でのポイント
    ・与えた資料による事実、情報に関して重要なものとして扱う
    ・事前学習による知識を披露する場合には、与えられた資料では無いことを明確にすること
    ・類似する情報は、重複感がないようまとめて言及する
    ・一方で、情報量は減らすことなく、長文になったとしても、複数のセクションに分割して深く考察する

 少し長いが、このように最初に記事の“構造”に関する指示を与えることで、トークンを節約しつつ、最短距離で一貫性のある長文を生成できるのだ。

 実際のプロンプトと出力結果は、以下のURLに保存してある。気になる人は参照してみてほしい。


本当はClaude 4だけで記事のサンプルを作ろうとしたものの、制約があったためにNotebookLMも併用した

AIとの協働は「使いこなし」の時代へ

 生成AIへの感度の高い読者なら、今回紹介したようなことを既に実践しているかもしれない。AIとの協働は、もはや「できたら便利」ではなく「できなければ不利」な時代に差し掛かっている。

 例えば、英語の技術資料を読み込ませて日本語の記事を書く際に、中国語圏の評判などのレポートも盛り込み、ドイツでの展示会情報を加える――そんな多言語対応も、AIなら当たり前にこなせる。情報が雑多で整理されていなくても、意味のある構造化された情報にしてくれるのがAIのメリットである。要するに、文章を作成する上で最も「カロリー」の高い領域を肩代わりしてくれるのだ。

 しかし、最終的な文章の“価値”を決めるのは、依然として人間のセンスにかかっている。AIは効率を劇的に向上させるが、「何を書くのか」「なぜ書くのか」という根本的な問いには答えてくれない。

 生成AIでは、動画生成な“ド派手”な技術が注目を集めがちだ。しかし、文章生成AIはビジネスの現場において最も実用的かつ使いこなすべきツールだと考える。将来的に他のAIサービスに取って代わられる可能性もあるが、現時点ではClaude 4を使いこなすことはオフィスワーカーにとって大きな武器となるだろう。

 プログラマーが統合開発ツールのアシストなしにコーディングするのが考えられないように、文章を書く人がAIなしで仕事をすることもなくなるに違いない。近い将来「なぜそんな非効率なことを?」と言われる時代が来る。

 もちろん、あなたにとってのパートナーはClaude 4ではないかもしれない。しかし、手元で使い慣れている、あるいはアクセスできるAIサービスがあるなら、まずは使いこなしを見直してみてはいかがだろうか?

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