「Thunderbolt 5」って本当に必要? 対応SSDで試してみた結果(2/2 ページ)
少しずつだが、Thunderbolt 5対応のPCや周辺機器が増えてきた。しかし「どんなものだろう?」と様子見している人もいると思う。そこでこの記事では、Thunderbolt 5対応SSDを使って、そのメリットを探ってみたい。
Thunderbolt 5対応SSDの実力をチェック!
Thunderbolt 5対応SSDは、まだそれほど多くない。今回は、Other World Computing(OWC)製の「OWC Envoy Ultra」の4TBモデルと、アイ・オー・データ機器製の「SSPU-TFC2」(2TB)を試す。
2024年9月に登場したOWC Envoy Ultraは、Thunderbolt 5対応SSDとしては最初期に登場した製品の1つで、ハードデューティーな利用を想定してIP67等級の防じん/防水設計かつファンレス設計であることが特徴だ。シーケンシャルの公称ピーク性能は読み書き共に毎秒6000MBとなっている。出荷時はmacOS独自のAPFS(Apple File System)で初期化されているので、Windowsで使う場合はNTFS(NT File System)またはexFATで初期化する必要がある。
一方、2025年10月中旬に発売予定のSSPU-TFC2は、国内メーカー初のThunderbolt 5対応SSDとして発表された。ピーク性能を長時間安定して維持できるように、冷却ファンを内蔵していることが特徴だ。シーケンシャルの公称ピーク性能は読み出しが最大毎秒6000MB、書き込みが最大毎秒5000MBとなっている。出荷時はWindowsとmacOSで共通して扱えるexFATで初期化されている。
まずThunderbolt 4対応PCで速度チェック
今回レビューするThunderbolt 5対応SSDは、いずれもIntelから認証を取得したモデルとなる。ピーク時の性能は低下するものの、Thunderbolt 4/USB4 Version 1.0との下位互換性を備えている。
そこでまず、参考データとしてThunderbolt 4に対応するPCに両デバイスを接続して読み書きのパフォーマンスをチェックしてみよう。利用したのはレノボ・ジャパンの「ThinkPad X13 Gen 3(Intel)」で、主な仕様は以下の通りだ。
- CPU:Core i7-1280P(Pコア6基12スレッド+Eコア8基8スレッド)
- メモリ:32GB(LPDDR5X-4800)
- ストレージ:1TB SSD(PCI Express 4.0接続)
- OS:Windows 11 バージョン24H2
Thunderbolt 4ポートは2基備えており、USB PD(Power Delivery)規格の電源入力とDisplayPort Alternate Modeによる映像出力に対応している。
テストは「CrystalDiskMark 9.0.1」のNVMeストレージ向け設定で行った。Windowsの設定は標準通り「クイック取り外し」(書き込みキャッシュ無効)としている。通常データ(ランダム)で計測したシーケンシャル性能(SEQ1M Q8T1)は以下の通りだ。
- OWC Envoy Ultra(4TB)
- リード:毎秒3895.79MB
- ライト:毎秒2842.72MB
- SSPU-TFC2(2TB)
- リード:毎秒3968.03MB
- ライト:毎秒3164.18MB
データを「0Fill」にした場合も、上記とほぼ同じ結果となった。
Thunderbolt 4(USB4 Version 1.0)では、PCI Express規格による伝送はRevision 3.0(PCI Express 3.0)に準拠する。結果を見る限り、規格の理論上限に近いパフォーマンスは発揮できている。これでも、USB 3.2までのUSB規格で接続するSSDよりも十分に高速だ。
余談だが、Thunderbolt 4対応PCに両デバイスをつなぐと、Windows 11の設定からはUSB4 Version 2.0デバイスであることが認識される。ただし、速度は最大40Gbpsに限られる
Thunderbolt 5対応PCだとどうか?
続けて、Thunderbolt 5対応PCを代表してROG Strix SCAR 18 G835に両デバイスをつないで読み書きのパフォーマンスをチェックする。ROG Strix SCAR 18 G835の主なスペックは以下の通りだ。
- CPU:Core Ultra 9 275HX(Pコア8基8スレッド+Pコア16基16スレッド)
- メモリ:64GB(DDR5-5800)
- ストレージ:2TB SSD(PCI Express 4.0接続)
- OS:Windows 11 バージョン24H2
テストに使ったアプリと設定は先ほどとそろえている。通常データ(ランダム)で計測したシーケンシャル性能(SEQ1M Q8T1)は以下の通りだ。
- OWC Envoy Ultra(4TB)
- リード:5966.61MB
- ライト:4164.80MB
- SSPU-TFC2(2TB)
- リード:毎秒5911.57MB
- ライト:毎秒4376.27MB
データを「0Fill」にした場合も、上記とほぼ同じ結果となった。
Thunderbolt 5(USB4 Version 2.0)はPCI Express 4.0による伝送に対応している。その理論上の最高速度とまでは行かないが、両モデルの公称スペックはしっかりと発揮できており、Thunderbolt 4接続時よりもさらに高速だ。「書き込み速度が少し遅いのでは?」と思うかもしれないが、書き込みキャッシュが無効であることを考えると健闘している。
両製品を比べてみると、シーケンシャル性能は大差ないが、ランダム性能を見てみると書き込みはSSPU-TFC2の方が少し高速だ。とはいえ有意な性能差はほぼない。どちらも従来の外付けSSDと比べると快適に使えることは間違いない。
なお、Thunderbolt 5で接続すると両製品ともに発熱は大きくなる。もっとも、アプローチは異なるがどちらも放熱を重視した設計となっており、ガンガンアクセスしても触れないほどの熱さにはならない。
未来への投資としてはアリかも ただ値段は高い
ベンチマークテストの結果からも分かる通り、Thunderbolt 5対応PCにThunderbolt 5対応周辺機器を組み合わせると確実に効果がある。
しかし、先述の通りThunderbolt 5対応PCはハイエンド製品が中心で価格も高めだ。今回レビューで利用したROG Strix SCAR 18 G835は、“最小”構成でも直販価格が65万9800円となる。ただし、Mac miniのM4 Proチップモデルのように20万円台前半で手に入る製品も出てきているので、時間がたてば一層手頃になるだろう。
一方、Thunderbolt 5対応SSDも黎明(れいめい)期ということもあって価格は高い。こちらも時間の経過と共にこなれていくはずだ。
ともあれ、特に超高解像度の写真や4K/8K動画を扱うクリエイター向けのデータストレージ、あるいは超大容量のPCゲームを保存するための外付けストレージとしてThunderbolt 5 SSDは有望な選択肢となりうる。将来に投資したいなら、今のうちに購入するのは十分に“アリ”だ。
(機材協力:株式会社アイ・オー・データ機器/インテル株式会社/ASUS JAPAN株式会社)
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