「EdgeTech+ 2025」で生成AIと製造現場の関わりを見た モノ作りの現場で深刻な人手不足を解消する切り札となるか(2/4 ページ)
生成AIをモノ作りといったフィジカル分野でどのように活用できるのか。そのヒントを得られる展示会「EdgeTech+ 2025」が開催された。エッジAIがモノ作り現場などでどのように省力化や省人化、業務効率化につながるかを見てきた。
Airion(エアリオン)
Airionが提供しているのは「ナレッジ活用AIシステム 技術継承くん」だ。製造現場でベテランがどんどん少なくなり、後任育成がままならないという場合でも、ベテラン職人がAIとの対話を通じて、簡単にナレッジベースを作成し、新人があいまいな自然言語で検索できるようにするというシステムだ
一般的に、社内wikiなどのナレッジデータベースは、「何について」「どんな項目で」「どんな内容を」入力するかといったことを事前に考える必要があり、ナレッジを残すための下準備に手間がかかってしまい面倒な場合もある。
しかし、技術継承くんであれば「異臭がしたら継ぎ目をチェック」といった言葉をナレッジに登録するだけで、「どのような異臭ですか」「どの継ぎ目ですか」「どのトピックと関連していますか」などといった質問をAIが投げかけるため、情報がそろったナレッジを作成しやすい。
このソリューションだけでも問題なさそうだが、Airionでは「先にAIから質問を投げかけるようにしてほしい」「デスクトップの隅の方にボタンを常駐するようにしてほしい」「UIにコーポレートカラーを使ってほしい」といったカスタマイズにも応じる。
HACARUS(ハカルス)
HACARUSでは、外観検査AIソリューションを展示していた。工業製品の不良チェックなどは、今でも人の目に頼っている部分があるが、それを省人化/省力化しようというソリューションである。
一例として、ある特定の継ぎ目金具の外観検査の様子をデモ展示していたが、1画角1.8秒/60の画角で撮影した画像をAI処理により良品/不良品に分類する。仕分けのために学習させるのは20~60個の良品だけだ。熟練者の目でチェックしていたものを、短時間で仕分けられるようになる。
「熟練者であれば、HACARUSより短時間でチェックできるかもしれないが、今はその熟練者の数が減り、さらに後継者を育てる時間も取れなくなっている。後継者がいないという課題もある。HACARUSであれば、その課題を解決する」と担当者は説明してくれた。
なお、良品モデルの登録学習をする際に、人の手を加えることも可能だ。これにより、より熟練工のような良品チェックを行える。
フツパー
フツパーでは、さらに難易度の高い外観検査AIソリューション「メキキバイト」を展示していた。デモ展示に用いられていたのは、カップケーキといった食品だ。
金属や樹脂などの工業製品と異なり、食品ではトッピングの量や位置にばらつきが生じてしまうが、それらが適正量、欠損なくトッピングされているかを検査して良品/不良品をチェックする。企業規模や経営者の采配などで適正量に幅がある場合でも、カスタマイズできる。例えば、トッピングのココナッツの量が90%以上であればOKとするか、85%以上であれば問題ないとするか、といったまるで人間の検査技師のような柔軟さをAIに与えられるようになっている。
フツパー(Hutzper)では、ソフトウェアとそのカスタマイズだけでなく、必要な画角を撮影するためのカメラ、チェック後の仕分け方法(弾き落とす、NGのブザーで警告するだけなど)、チェック速度に応じたPCなどの選定も行い、オールインワンパッケージとして納品する。
「こういうソリューションがあるのは知っているけど、何を使えばできるようになるのか分からない、宝の持ち腐れになるほどのスペックはいらない、といった相談に対して、課題を解決しつつ現場にぴったり合うカスタマイズしたパッケージを提供している」と、オールインワンパッケージであることのメリットを担当者が教えてくれた。
エプソンダイレクトではさまざまカスタマイズPCを提供しているが、それは中小企業に対してもソリューションパートナーに対しても同様だ。注文を受けてから最短3日で、しかも1台から出荷する。
「すぐに欲しいというニーズに答えられるのが、我が社の強みだ」とエプソンダイレクト事業推進部部長 福田克稔氏は語る。
「保証期間が7年と長期であること、また中身は最新でも形やサイズ、インタフェースの位置を変えないPCを作り続けることで、弊社製品にぴったりなサイズの設置場所を作ってくださっている現場で使い続けてもらえている。これからも、中小企業に寄り添える製品を作り続けていきたい」(福田氏)
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