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「EdgeTech+ 2025」で生成AIと製造現場の関わりを見た モノ作りの現場で深刻な人手不足を解消する切り札となるか(3/4 ページ)

生成AIをモノ作りといったフィジカル分野でどのように活用できるのか。そのヒントを得られる展示会「EdgeTech+ 2025」が開催された。エッジAIがモノ作り現場などでどのように省力化や省人化、業務効率化につながるかを見てきた。

小さく始めて必要を感じたらシステムを大きくする――日本HP

 日本HPでは、ディスプレイ裏に取り付けられるようなコンパクトなものから複数のグラフィックスカードを搭載できるモデルまで、各種ワークステーションを展示していた。


日本HPのブース

 「生成AIを使いたくても、製造業や研究所、開発をしている部署などでは、入力した情報をAIの学習に使わせるわけにはいかない。そのため、ローカルで企業オリジナルのAIモデルを構築して活用する必要がある」と、エッジソリューションの必要性について担当者は解説する。

 とはいえ、どれだけの規模のものが必要なのか、ローカルAIがマッチするのかといった手探り状態の企業も多い。そのようなわけで、まずは小さいものを導入して“勘所”をつかんだり、使えると感じたりした場合に大きいものへと乗り換えるという方法を、日本HPでは提案している。

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導入当初から、いきなり高額なグラフィックスカードを搭載したPCを導入するのは難しい。「小さく始めて、後に大きくすることを検討してもらえれば」と担当者は語っていた

 生成AIという言葉を聞くと、著作権のある画像を学習に使われたなどの話題に事欠かないが、エッジAIであれば、そういった問題は生じない。国家機密レベルのナレッジをエッジAIで運用しているという航空自衛隊横田基地の事例を担当者は紹介してくれた。

 「覚えないといけないことがたくさんあるが、新任者ではすぐに対応できないこともある。自然言語で質問し、必要な情報を引き出すナレッジデータベースをエッジAIで運用しており、業務効率化に役立っている」とのことだ。


航空自衛隊横田基地の事例を紹介するWebサイト

 日本HPが取り組んでいる「バーチャルヒューマン」の展示も行っていた。2分間の実在する日本HP社員の動画から、会話するときの口の動き、瞬きや表情などを取り込み、質問に対して音声で回答するというものだ。「企業によって使いどころはさまざまだと思うが、ヒントを得てもらえれば」と担当者は話していた。


バーチャルヒューマン佐藤さん。「何に使えるかという議論のヒントにしてもらえれば」と担当者は語っていた

開発を加速するインテルのオープン・エッジ・プラットフォーム

 インテルでは、最新エッジAI戦略「Open Edge Platform」(以下、オープン・エッジ・プラットフォーム)の業界別AIデモを展示していた。


インテルブース

インテルでは「オープン・エッジ・プラットフォーム」の展示を大々的に行っていた

 運輸/小売/製造/ロボットといった業界別に最適化されたAI Suiteがどのように働くのか、空間を移動するものをどのように追跡していくのか、モノをどのように認識するのかといった情報を動画で展示することで、活用のヒントとなっていた。


オープン・エッジ・プラットフォームのサイトでは、各業界に最適化されたSDKのAI Suiteを無料ダウンロードできるようにしている

画像を解析している様子

これらを支えているIntel Arc GPU。「手を触れないでください」と掲示してあったが、担当者自ら「処理性能は高くても、温度はそれほど上がっていない」と手で触って証明していた

 インテルのオープン・エッジ・プラットフォームには用途別SDKが用意されており、全て無料である。担当者は「“インテル ソリューションハブ”で検索してもらえれば、業界別に最適化されたAI Suiteを簡単に見つけて試してもらうことができる。開発速度を加速させるのにきっと役立つはずだ」と語っていた。

 インテルのパートナー企業が提供するさまざまなハードウェアも展示されていた。例えば、第4世代Intel Xeonプロセッサを組み込んだリコーPFUコンピューティングの「RICOH AR8300 モデル 320P」、Core i7-14700Eを搭載したNEC「FC-S13G」シリーズ、Intel Core Ultra(シリーズ2)を搭載したASUS JAPAN「NUC 15 Pro+」などだ。


リコーPFUコンピューティングの「RICOH AR8300 モデル 320P」

NEC「FC-S13G」シリーズ

ASUS JAPANの「NUC 15 Pro+」

 さらに同ブース内でパートナー企業がデモ展示を行っていた。そのいくつかを紹介する。

東京エレクトロン デバイス

 東京エレクトロン デバイスでは、インテルが提供するオープン・エッジ・プラットフォームのSDKの1つ「OpenVINO」などを併用することで、ハードウェアを変えることなくインテルプロセッサの性能を最大限に引き出すという実証的デモを展示していた。

 「YOLO11n」(ヨロイレブンエヌ)という物体検出ソリューションのオリジナルのフレームワーク「PyTorch」を使うと、CPU性能が4FPSだったものが、OpenVINOへフレームワークを変えるだけで、CPUの性能が5倍に引き上げられていた。また、CPU内蔵GPUも使われるようになっていた。

 さらに、トラッキングに「ByteTrack」(バイトトラック)を併用することで、CPU性能が10倍の40FPSに、CPU内蔵GPUは17倍の68FPSという処理速度になっていた。

 担当者は「処理速度が遅いならハードウェアを換装しよう、と考えがちだが、適切なアルゴリズムを当てるだけで、CPUの持つパワーを最大限に引き出せる。しかも、グラフィックスカードを交換するより、はるかに低消費電力で済む。そういう手法もあることを知ってもらいたい」と話していた。


トラッキングアプリケーションなどを変えるだけで、どのようにパフォーマンスがアップするかを把握できる展示

Intelが提供しているオープン・エッジ・プラットフォームの1つ「OpenVINO」をどのように活用できるかを展示していた

岡谷エレクトロニクス

 岡谷エレクトロニクスは、顔認識ソリューションを展示していた。最大10万人の顔を登録することができ、約0.1秒で認識して認証を行う。

 担当者は「指紋認証のように何かにタッチする必要がなく、しかも指紋認証より高速だ。入館時の認証や、工場内の装置のログインなどに活用してもらいたい」と話していた。


岡谷エレクトロニクスのエッジ・オンプレ顔認証システム

登録されていない顔を認識

すると、ハザードランプが回転しながら光り、警告する

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