「秘伝のたれ」を捨て、ルンバは生まれ変わる――iRobotチャプター11申請も「ワクワクしかない」とアイロボットジャパン新社長が語る理由:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(3/3 ページ)
コロナ禍以降、さまざまに移ろう世界情勢の中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。大河原克行さんによるインタビュー連載の第20回は、米本社が連邦倒産法11条(チャプター11)を出したばかりのアイロボットジャパン 代表執行役員社長の山田毅さんだ。
就任1カ月半での激動 「米国の革新×中国の製造×日本の接客」で挑む
―― 2025年4月にラインアップを一新して以降、新たなルンバの売れ行きはどうですか。
山田 好調な売れ行きをみせており、量販店などのオフライン市場での販売シェアは6~7割の水準を維持しています。最先端のテクノロジーについては他社に追いつくことができ、その点では大きな評価をいただいています。掃除機能のパフォーマンスも大きく向上しました。
ただ、新たなユーザーを取り込めているかというと、そこには課題があります。ルンバに興味がなかった人に、関心を持ってもらえる商品にはなっていないことが反省点です。物価上昇に伴う市場環境の厳しさも影響していますが、マーケティングの力で新たな需要層を喚起していく必要があります。
ロボット掃除機は、何かをきっかけに一気に需要が増えるタイミングがどこかで訪れると思っています。それは、生活を楽にしたり、豊かにしたり、使い勝手を高めるイノベーションを実現できるときだと思っています。ルンバのイノベーションを通じて、もっと多くの人にロボット掃除機を使ってもらいたいですね。
―― 2025年11月1日にアイロボットジャパンの新社長に就任して、わずか1カ月半でチャプター11という大きな転機を迎えました。大変な時期に社長になりましたね(笑)
山田 いや、私にはワクワクした気持ちしかないんですよ。報道が出た後には、取引先を始めとして多くの方々に心配されたのですが、みなさんから「思ったより元気ですね」と言われていますよ(笑)。
これからは上がっていくしかありません。世界最大のロボット掃除機の製造会社と一緒になり、開発力がアップし、コスト競争力が付くわけです。米国の研究開発部門だけでなく、中国の優秀な研究開発部門も加わります。2026年以降に、優れた製品が投入できるのは明らかです。
米国企業が持つイノベーション力と、中国の企業が持つモノ作り、そして、日本ならではのカスタマーサービスを組み合わせて提供できるわけです。こんなブランドは他にはありません。1+1+1が5になるぐらいの成果が生まれると思っています。
日本では、2030年にロボット掃除機の普及率を20%にまで高める方針を打ち出していますが、今回の新たな体制への移行によって、これが前倒しで達成できそうですよ。
―― 日本のルンバユーザーは、世界中で最もルンバに愛着を持った使い方をしていると言われています。今、日本のルンバユーザーに伝えたいことは何ですか。
山田 ルンバユーザーのみなさんには、大変ご心配をおかけしています。お伝えしたいのは、アイロボットは力強い復活に向けた第一歩を踏み出すことができたということです。日本のみなさんの豊かな生活に、もっと貢献できる製品を投入することができるようになります。ぜひ期待していてください。
※インタビュー後編はこちら(「テクノロジーが前面に出すぎていた」――アイロボットジャパン新社長が語る、ルンバ復権への“原点回帰”)。
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