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インタビュー

ロボット掃除機市場はまだまだ伸び代がある 「2030年までに国内掃除機の20%に」 挽野社長が語る「4つの力」IT産業のトレンドリーダーに聞く!(1/3 ページ)

ポストコロナ時代に入り、業界を取り巻く環境の変化スピードが、1段上がった。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。大河原克行さんによる経営者インタビュー連載は、アイロボットジャパンの後編だ。

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 アイロボットジャパンの挽野元社長は、「2030年までに、国内掃除機市場全体の5台に1台をロボット掃除機にする」と宣言する。2018年に掲げた「ロボット掃除機の普及率10%」を2024年に達成し、有言実行を果たした挽野社長が次に掲げた意欲的な目標だ。

 そして、それを実現するために重要なのが、「製品力」「需要創出力」「販売力」「ケア力」という4つの力だという。インタビュー後編では、アイロボットジャパンの挽野社長に、日本におけるこれまでのロボット掃除機の普及への取り組みと、今後のアイロボットジャパンの成長戦略について聞いた。

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お話を伺ったアイロボットジャパン 代表執行役員社長の挽野元さん

ロボット掃除機市場は成長のポテンシャルが高く伸び代もある

―― 2017年3月に、アイロボットジャパンの社長に就任してから9年目に入りました。この間、日本におけるロボット掃除機の普及をリードし、ロボット掃除機の世帯普及率はいよいよ10%に達しました。そして、国内におけるルンバの累計出荷も600万台に到達しました。景色は変わってきましたか。

挽野 10%は1つの到達点ではありますが、通過点に過ぎません。まだまだこれからです。2018年にこの目標を打ち出したときの普及率は4.6%で、まずはこれを2倍にしなくてはならないというところから始めました。ようやく10%を超えたという段階であり、成長のポテンシャルは高く、まだまだ伸び代がある市場です。

 変な言い方にはなりますが、アイロボットやルンバは、「身の丈」以上といえるほど多くの方々に名前を知っていただいています。ただ、名前は知っていても使ったことがないというお客さまが多いのも実態です。

 アイロボットのミッションは「Empower people to do more」であり、人々の生活を豊かにすることを目指しています。それを実現するためには、もっと多くの人にロボット掃除機を試してもらい、理解してもらい、使ってもらいたいと思っています。

 使っていただいていないお客さまにどう使ってもらうか――。これまでの8年間は、そこに知恵を絞ってきました。月1000円ぐらいだったら使ってもらえるのではないかといった仮説から、レンタルサービスやサブスクサービスを開始してみたり、取引先との連携でトライアルプログラムをやってみたり、スティック掃除機との共用提案をしてみたりといったように、さまざまな施策を通じて、ロボット掃除機に触れていただき、さらに使っていただくための提案をしてきました。

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2019年にスタートしたロボット掃除機の有料サブスクリプションサービスも、着実に進化を遂げている

 また、将来に向けて、子供たちにルンバを使ってもらうべくプログラミング教室を開催しました。「ロボット掃除機を、いかに使ってもらうか」というテーマは、これからもしばらく続く課題だといえます。まさに「ジャーニー(旅)」と言える取り組みです。景色が変わったというところには、まだ到達していないですね。

―― 世帯普及率10%の達成においては、何が弾みになりましたか。

挽野 1つは、2018年10月に発売した「ルンバe5」の貢献があります。価格と性能のベストバランスを追求した製品であり、5万円を切る価格帯を実現しました。

 それまでは、ロボット掃除機は高価で手が届かないという声もありましたが、その常識を覆した製品であり、日本の多くの方々に使っていただくきっかけとなりました。また、2019年3月に発売した「ルンバ i7+」では、今では一般化しているクリーンベース(自動ゴミ収集機)を初めて導入し、驚きを持って迎えられました。

 一方で、コロナ禍の巣ごもり需要も、ロボット掃除機の普及に弾みをつけることになりました。家の中をきれいにしたいというニーズが高まったことに加えて、政府による1人あたり10万円の特別定額給付金を使って、ルンバを購入するといった動きもありました。こういったルンバの進化とともに、外的な要因も普及の弾みになっています。

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当時、5万円を切るプライスを実現した「ルンバe5」

―― 次の目標として、2030年までに5台に1台をロボット掃除機にすることを掲げました。これはどのような意図を持った数字ですか。

挽野 今、国内掃除機市場の主力はスティック掃除機です。一方で、かつての主力だったキャニスター掃除機は約20%の構成比に縮小しています。つまり、今のキャニスター掃除機の市場構成比が5台に1台という水準です。2030年には、ロボット掃除機の普及率をここまで持っていくことが、次のマイルストーンです。

 そして5台に1台というところまで行くと、そこからさらに弾みがつくと考えています。グローバルで見ても、ロボット掃除機が5台に1台を占めている市場はないと思います。これを達成すれば、ロボット掃除機の普及率において日本が最も進んでいる国になるといえます。

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