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M5 Max搭載「14インチMacBook Pro」がワークステーションを過去にする 80万円超の“最強”モバイル AI PCを試す本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/5 ページ)

AppleがM5 Pro/Maxチップ搭載の「MacBook Pro」をリリースした。今回は、SSDの容量以外は最上位構成の「14インチMacBook Pro」で、LLMをゴリゴリ動かしてみた。

驚異的なLLM処理能力と入出力スループット

 クリエイター向けMacについて、Appleは常に「処理速度」と「メモリ帯域」「SSD速度」のバランスを整えるよう配慮してきた。今回も例外ではなく、M5チップファミリーのアップデートに見合う改良が施されている。

 評価機は128GBのユニファイドメモリ(帯域幅毎秒614GB)を備え、700億~800億パラメータークラスの大規模モデルもロードできる。これまでもメモリ帯域の広さからトークン出力は高速だったが、さらなるメモリ帯域の拡大はトークン出力のさらなる向上をもたらし、GPUの改良が推論の速度を引き上げている。

 つまり、GPUの改良で行列演算が高速化し、元々のメモリ帯域の広さをさらに磨き込んだことで、AIマシンとして魅力的な性能を持つに至ったということだ。

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 前述したQwen3 Coder Next(800億パラメーター)の6bit量子化版でアプリのコードを「LMstudio」を用いて出力させたところ、なんと最大で毎秒75トークン前後の性能が出た。メモリに余裕がなくなるが、8bit量子化版もなんとか動作し、毎秒69トークンものスループットが出た。

 思考時間も十分に短く、リーズニングが可能な「Hermes 4 70B」(700億パラメーター)も十分な速度で動いてくれる。開発向けではない汎用(はんよう)LLMモデルでは出力速度が毎秒6トークン前後にまで落ちるが、それでもクラウドでの利用を戸惑うような内容や、十分なコンテキスト長を取りたい場合などにぜひ使いたいと思うパフォーマンスといえる。


ほぼフルスペックの14インチMacBook Proでは、LMstudioでコードをサクサク出力してくれる
出力中の画面を動画に収めたところ

 そして、M5 Pro/Maxチップ搭載のMacBook Proは、メモリ帯域の拡大と共にSSDも高速化されている。

 今回の新モデルでは、M5 Proチップモデルは1TBから、M5 Maxチップモデルは2TBからとSSDの容量が2倍になっているのだが、アクセス速度も実質的に2倍に向上した。25GBのファイル転送は、OS上の「Finder(ファインダー)」操作で毎秒3835MBほどで、シーケンシャルリード/ライト性能は毎秒7000MBを優に超える。

 大容量の8K ProRes RAW素材や、巨大なPhotoshopのパノラマPSBファイルなど、これまでなら読み込むだけでストレスだったデータを“引っ掛かりなく”扱えるのはもちろんだが、今回のテストでは巨大なLLMモデルデータの入れ替えでも非常に役立った。

実測のアプリテストでも強いM5 Maxチップ

 評価した構成がメモリを128GBも積んでいたのでLLMの話から始めてしまったが、クリエイター向けとして捉えた場合のM5 Maxチップの実力は、毎日触れるアプリこそ強く表れる

 動画編集は「DaVinci Resolve Studio」を用いた。M5 MaxチップのGPUに内蔵されるNeural Acceleratorが効果的に働き、AIエフェクトのレンダリング速度が前世代の「M4 Maxチップ」との比較でもおよそ3倍になるとアナウンスされている。

 中でも体感上において効果的だったのは、特定の被写体をAIで切り抜く「Magic Mask」だ。ほとんど処理を意識することなく瞬時に処理されるため、スムーズにプレビューを行える。

 「Adobe Premiere Pro」でも、ローカルのAI機能を中心に応答性が確実に速くなる。実アプリでのテストのため安定した数値は出にくいのだが、確実に体感できる違いはあるのだ。

 今後、さらにローカルでのAI処理が当たり前になっていけば、よりこの差は大きく感じるようになるだろう。


DaVinci Resolve Studioにおけるレンダリングは、Appleによる公称のテストでも高速化が確認されている

 「Blender」や「Maxon Redshift」を用いた3Dレンダリングにおいては、第3世代の「ハードウェアレイトレーシングエンジン」とGPUのパワーにより、重いビューポートの操作がまるで2Dのベクターグラフィックを扱っているかのように滑らかに追従する。

 これらのパフォーマンスが高いことそのものは、最新世代なのだから当たり前ともいえるが、M5チップファミリーのAI処理性能に向けたチップ設計の更新がうまく機能していることの証左でもあるだろう。


Maxon Redshiftによるレンダリングは、Appleのテストでも高速にこなせている

 今後、クリエイティブツールにおけるエッジAIパフォーマンスはより重要になってくると予想される。M4チップファミリーとMチップファミリーの違いは、「1世代分」というにははるかに大きいものに感じる

 その差はエッジAI、ローカルAIの活用が広がるにつれ、より克明なものになっていくと思う。

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