ジョブズ氏の帰還からAI時代へ――Appleが描く「パーソナルAI」の未来は原点回帰なのか:Apple 50年史(後編)(3/5 ページ)
1996年末のスティーブ・ジョブズ氏の復帰を皮切りに、AppleはNeXTのオブジェクト指向技術を取り入れ、次世代OSへの抜本的な刷新を図った。Appleが歩んだ50年のイノベーションの軌跡と未来を考えてみた。
日本だけでなく世界でもノートPCが主流の時代へ
ジョブズ氏が製品を4種類だけに絞ったのは、4製品くらいなら全ての製品に専門の精鋭部隊を注ぎ込んで12~20カ月に1回のペースで製品をアップデートできるという狙いもあった。実際、それ以後、AppleはiMacやiBookの新色モデルも含めると、かなり頻繁に新製品を発表し、それなりに話題になった。
「半透明でカラフル」という当時の製品イメージは、一度はつぶれかかったAppleが他社とは違った面白そうなことをやっているというポジティブな印象を与えるには良かったが、毎回カラーバリエーションを出すのは在庫管理が大変で、しかも色によって好き嫌いが分かれてユーザーを失ってしまう危険もあった。
2000年代に入ると、Appleは一気に逆振りでシンプルエレガントな製品を出し始める。
その第1弾として、ビジネス的に安定してきたAppleが、5種類目のMacとして「Power Mac G4 Cube」を発表した。ジョブズ氏肝入りの製品で一部から人気が高かったが、ビジネスとしては失敗し2代限りで消えた製品でもある。
それまでのカラフル路線から、一変した5種類目のMacが「Power Mac G4 Cube」だ。2世代限りの製品だったが、ジョブズ氏の美学が詰まった美しい製品だった。これ以降、Apple製品はシンプルミニマルの外観にシフトしていく
翌年には、カラフルだったiBookから色を取り去り真っ白にしたiBook(Dual USBまたはSnow)モデルが登場している。
そして2001年には、Apple初の液晶ディスプレイ一体型デスクトップ機「iMac G4」が登場する。他社製品のように液晶の背面にパソコン本体をくっつけてしまうと、液晶ディスプレイの本来の強みである薄さが(当時の技術では)台無しになってしまうと考え、半球型の本体から伸びるステンレスアームの先にディスプレイを付けた他に類を見ない不思議な形状にたどり着いた(ひまわりからインスピレーションを得たという)。
日本では「大福」の愛称で親しまれているが、自分の目の前に置くとディスプレイだけが浮かんでいるような印象を与え、使っていて心地が良い。また、ほとんど負荷を感じず滑らかに意のままに好きな場所と好きな角度にディスプレイ位置を調整できる作り込みが、本当にすごかった。
そして、初代iBookの登場以降、実は大きな変化が起きていた。それまでパソコンは、価格の安さからデスクトップ型の方が主流だった。しかし、iBook登場後は、無線LAN(Wi-Fi)の快適さもあり、段々ノートPCのユーザーが増えていき、iBook(Dual USB)登場の頃にはほぼ半々になったと言われている(ただし、日本は元々、省スペースのためにノートPCの人気が高かった)。
一方で2000年から2001年頃は、1996年のWindows 95登場と1998年のiMac登場によるパソコンブームが一段落し、ドットコムバブルが弾け、パソコンの売上が少し落ち着いていた時期でもあった。
デジタル市場の関心は、パソコン本体から“ポストPC”と呼ばれるデジタルカメラ、音楽プレーヤー、カムコーダー、PDA(携帯型情報端末)といったものに移行しつつあると言われていた。
そのような中で、Appleは2001年1月にMacがそういったデジタル機器のハブになるというデジタルハブ構想を発表し、iTunes(当初は他社製の音楽プレイヤーに曲を転送する機能があった)を発表した。それから3カ月ほどでAppleも音楽プレイヤー市場に参入すべきかを検討して投入を決断。そこから何と半年でiPodを製品化してしまった。
初代iPodの発表会では「Windows版を出す必要なんてあるか。Mac同様の良い体験を提供できないし、私は懐疑的だ」といっていたスティーブ・ジョブズ氏。しかし、Windowsユーザーは勝手に盛り上がり、他社からWindowsでiPodを使うためのソフトが続々登場した。2002年には、ついにApple公式のWindows版iPodが発売された
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