ジョブズ氏の帰還からAI時代へ――Appleが描く「パーソナルAI」の未来は原点回帰なのか:Apple 50年史(後編)(4/5 ページ)
1996年末のスティーブ・ジョブズ氏の復帰を皮切りに、AppleはNeXTのオブジェクト指向技術を取り入れ、次世代OSへの抜本的な刷新を図った。Appleが歩んだ50年のイノベーションの軌跡と未来を考えてみた。
時代はポストPCへ
それまで、Appleの製品はパソコンしかなく、しかも主流であるWindowsではなく、こだわりを持ってMacを選ぶユーザーしかいなかったため、世界的には3~5%ほどまでシェアが落ち込んでしまっていた。しかしiPodが出ると、これを使いたいというWindowsユーザーが続出し、他社からWindowsでiPodを使えるようにするソフトまで続々発売され始めた。
こうした状況を受け、2002年にAppleから正式なWindows版iPod(iPod for Windows)が登場すると、これが爆発的なヒットとなり、AppleはそれまでのMacだけを売っていた時代とはユーザー数が異なるビジネスをすることになる。
初期のiPodは、MacとFireWireというケーブルでつなぐだけで、充電と曲の転送やプレイリストの同期が同時にできたが、Windows PCは標準でFireWire端子を備えた製品が少なかった。そこで2003年の第3世代iPodからはFireWireの接続にも、USBの接続にも対応できる独自の端子を開発してUSB対応を始め、2005年には完全にUSBに移行している。
2005年には、それまで21年間のMacの累計出荷台数280万台を、販売開始から実質3年ほど(Windows版では2年ほど)のiPodがあっさり抜いてしまう。
このiPodの爆発的な成功が、Macユーザー以外にもAppleというブランドを広め、2007年発表のiPhoneが成功する足掛かりとなった。
当初、iPodはFireWire端子のみのサポートだったが、Windows機では一般的でなかったため、USBでもFireWireでも接続ができるように30ピンコネクターが開発され、これは初期のiPhoneにも踏襲された
2006年に創業30周年を迎えたAppleが「最初の30年は序章に過ぎなかった。2007年へようこそ」といって発表したのがiPhoneだったが、同製品には「iPodを出しているAppleの待望の携帯電話」として世界中から大きな注目が集まり、iPodの勢いすらも上回る速さで、エレクトロニクス製品市場で最も勢いよく売れた製品の記録を塗り替えた。
ジョブズ氏は年間10億台出荷する携帯電話市場の1%(つまり年間1000万台)を売りたいと言っていたが、現在、iPhoneは年間2億台近くが売れている。
2008年にアプリストアの「App Store」をオープンしたことで、世界中に多くのアプリ長者が誕生した。
2007年1月に発表されたスマートフォン「iPhone」。当時、最新式携帯電話といえば同じ時期にラスベガスで開催されるConsumer Electronics Show(CES)で発表されていたが、この年の携帯電話最大のニュースはサンフランシスコのMacWorld Expoで行われた。CESを取材した人たちが、その週の後半、そのままサンフランシスコに移動して初代iPhoneの取材をしていた。このモデルは日本では発売されなかった
また、2010年にタブレットの「iPad」が登場すると、iPadの販売初速はiPhoneを上回った。現在、iPadは生徒1人1端末を持つ日本のGIGAスクール構想でも、人気の端末となっている。
ただ、iPhoneとiPadに並々ならぬ情熱を注いでいたスティーブ・ジョブズ氏は2011年にiPad 2とApple新社屋「Apple Park」構想を発表した直後に惜しまれつつも逝去した。彼は晩年、Appleのパソコンメーカーとして始まったというレガシーを全て精算し、iPod、iPhone、iPadという非パソコンの製品を発表し、社名をApple Computerから、Computerの文字を取り、デジタル時代のライフスタイルブランド「Apple」に切り替えた上で、次の時代の改革をティム・クック氏に託した形になった。
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