メモリ倍増でPCの価格も倍に? AI需要で高騰するパーツ価格の背景と無料ツールでメモリ不足を解消するテクニック:笠原一輝の「もう、どうなってもいいや!」(1/2 ページ)
さまざまなIT関連イベントや、PCのテクノロジーなどを追いかける笠原一輝さんが、取材の合間に気が付いたこと、日々ぼんやり思っているけど原稿には反映されていないこと……といったアレコレをまとめた新連載がスタートです。決して、投げやりではないですよ!
いきなり私事で恐縮だが、先日AI PC(ノートPC)を購入しようと、あるPCメーカーのCTO構成を見ていると、メモリを32GBから64GBにアップグレードしたところ、その価格が「33万円」と表示された……。
そもそも、そのノートPCを欲しいスペックに変更すると35万円前後なのだが、メモリを64GBに増やすと、メモリ容量だけでなく本体価格までほぼ倍になってしまうというありさまで、「メモリの値上がりパネェ」と思った次第だ。
こうしたメモリ価格の高騰は、なぜ起こっているのか、そしてユーザーとしてはどのように対処していけばいいのかに関して考えていきたい。
AIデータセンター向けで需要増 メモリやストレージの価格が上昇
NVIDIAの次世代AIコンピューティングプラットフォーム「Vera Rubin SuperChip」には、CPUにLPDDR5メモリ、GPUにはHBM4のメモリチップが多数搭載されている。写真はNVIDIAのジェンソン・ファンCEOのサイン入りだ
ご存じの通り、メモリ(DRAM)やストレージ(SSD/HDD)の価格が上がっている。2025年の後半から上昇する一方で価格が下がるような兆候は今のところない。メモリやストレージの価格というのは、誰が決めているのかと言えば、それは「市場」だ。
メモリやストレージの価格は、チャネル市場と呼ばれる流通経路で設定される「スポット価格」で決定される。PCメーカーがDRAMベンダーと直接取引する時には「コントラクト価格」と呼ばれる販売契約を結んだ価格で取引される。
それに対して、チャネル市場では一度限りの販売価格(それをスポット価格と呼ぶ)で取引されるのが一般的で、メーカー同士の契約になるコントラクト価格は、そのスポット価格の影響を受けて決定される。
では、そのスポット価格はどうやって決まるのかと言えば、シンプルに中学校3年生の公民で習う「需要と供給」の関係で決定される。
市場に製品が有り余っているような状況なら価格は下落し、逆に製品が足りないような状況なら価格が上がるというシンプルな関係になる。つまり、今価格が上がっているということは、供給が足りていないということだと理解できる。
では、なぜ供給が足りていないのだろうか? その理由は、AIデータセンター向けの需要が高まっており、その結果、PCやスマートフォンといったクライアントデバイス向けのDRAMやストレージが足りなくなっているからだ。
「供給が足りないなら増やせばいいじゃない」は短期的には難しい
供給が足りないなら、もっと作ればいいのではないかと思うかもしれない。しかし、それは難しい。というのも、供給量を増やすためには、メモリを生産する工場を増やさないといけないが、半導体工場の建設には莫大な費用がかかると同時に、数年単位の時間がかかる。
半導体メーカーにとって問題なのは、今需要が満たせていないから供給を増やすべく工場を建設するとしても、数年後にもその需要があるかどうかが分からないことだ。
実際、過去にはドイツのキマンダ、日本のエルピーダメモリという大手DRAMベンダーが過剰投資が原因となって、倒産の憂き目に遭っている。
つまり、半導体メーカーにとって新しい工場への投資というのは「ギャンブル」になるのだ。もちろん、ギャンブルに勝てば得られるメリットは大きいが、ギャンブルに負ければ会社が傾くだけでなく、倒産という最悪のシナリオもありうる。そういった中で、工場に投資を続ける方がいいのかどうかは、非常に難しい判断となる。
それでも工場を作る決断をしたとして、工場が完成するのは数年後だ。そのため、供給がタイトになることが明らかになった2025年の後半時点で工場を新設しようと決断したとしても、工場ができるのは早くて3年先、時間がかかれば2030年ということになる。
今後AIへの需要はさらに上昇するというのが大方の見方で、需要は増えるのに供給は短期的には増えない――。その意味では短期的に、この供給不足が解決する見通しは全く立っていないと言える。
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