新型「Mac mini」「Mac Studio」の“数字”を読み解く――驚異のAI性能と、日米価格設定のからくり:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)
Appleが新型「Mac mini」「Mac Studio」を発表した。この記事では、スペックや価格などの“数値”にフォーカスを当ててk上刷していきたい。
メモリ価格高騰+円安で価格はどうなった?
さて、次はプライスタグ、Apple Storeでの販売価格を見ていこう。
米国では、Mac miniのM6チップ搭載モデルが899ドルから、M5 Proチップ搭載モデルが1699ドルから、Mac StudioのM5 Maxチップ搭載モデルが2499ドルから、M5 Ultraチップ搭載モデルが5499ドルからという設定となっている(いずれも税別)。
Mac miniで比べてみると、2年前に出た先代のM4チップ搭載モデルが599ドルからだったので、実に300ドル(率にすると50%)増しという設定だ。Mac miniの「599ドル」という価格は、2023年1月のM2チップモデルから3年7カ月守られてきたものだが、値上げは避けられなかったようである。
そしてMac Studioを見てみると、M5 Maxチップ搭載モデルは先代のM4 Maxチップ搭載モデル比で25%増し、M5 Ultraチップ搭載モデルは先代M3 Ultraチップ搭載モデル比で35%増しという価格設定だ。率で見ればMac miniほどではないものの、絶対額が大きいので値上げのインパクトはどうしても大きくなる。
少なくとも、米国では紛れもない“大幅値上げ”になってしまっている。
値上げの原因は、ずばりメモリである。Apple Siliconでは、ユニファイドメモリをSoCと同一パッケージに実装する。今回の新モデルならLPDDR5Xメモリモジュールを実装しているが、TrendForceが発表しているレポートによると、メモリ全体の契約価格は2025年初頭から5~7倍に跳ね上がっている。これは昨今言われるようにAIデータセンターにおけるメモリの需要が非常に高まっていることの影響だ。
2026年度第3四半期(※1)の決算説明会において、関税還付を除いた実勢の粗利率が前四半期の49.3%から48.1%へ1.2ポイント下がったことについて聞かれたAppleのケバン・パレクCFOは「100%超がメモリコストの変化で説明できる」と答えている。ティム・クックCEOのいう「メモリ価格における100年に一度の“大洪水”」が、ついに製品のプライスタグに反映され始めている。
(※1)Appleの会計年度は前年9月に開始し、当年8月に締める
昨今のAppleには珍しく、新しいMac miniとMac Studioの発表は発売の1カ月弱前に行っている。気が早いようにも思えるが、これは「メモリ危機の中で、可能な限り多く生産するため」であり、「9~10月の出荷を安定させるため」に、できるだけ早く発表して注文を受ける意図があったようだ。
Mac miniの先代は2024年10月、Mac Studioの先代は2025年3月で、いずれも秋のiPhoneの発表タイミングを避けてきた。今回のようにiPhoneの“直前”に2製品を同時に刷新するのは異例ともいえる。
月を追って部材コストが上がる局面では、発表を前倒しして受注を先に固めるほど、需要の読みも部材の確保も有利になる。iPhoneの値上げ報道と時期をずらし、Macの価格ニュースを切り離す効果もある。
Appleの2026年度第3四半期決算は、iPhone/Mac/サービスの各セグメントにおいて四半期記録を更新するほど好調だったという。ただそれでも、メモリ価格の高騰は、同社の業績に影響するレベルになってしまっている
一方で、日本での販売価格を見ると景色がまるで違うことに気が付く。
日本では、Mac miniのM6チップ搭載モデルが14万9800円から、M5 Proチップ搭載モデルが29万9800円から、Mac StudioのM5 Maxチップ搭載モデルが41万9800円から、M5 Ultraチップ搭載モデルが94万9800円からという設定となっている。Mac miniはM6モデルで11%(M5 Proモデルは7%)、Mac StudioのM5 Maxチップモデルに至っては“据え置き”である。値上げ幅がゼロか、あっても小さいのだ。
これには“からくり”がある。日本では、6月24日にMacとiPadの“値上げ”を先行実施していたのだ。
この値上げにより、Mac miniの最小構成は9万4800円から13万4800円に、M4 Proモデルは21万8800円から27万9800円、Mac Studioの最小構成は32万8800円から41万9800円となった。値上げ幅でいえば約28~42%増しである。この間、米国では価格を据え置いていた。
昨今の為替レートで「1ドル当たり」に換算すると、6月の価格改定はMac miniの最小構成は「1ドル=約205円」、Mac miniのM4 ProモデルやMac StudioのM4 Maxモデルで「1ドル=約191円」という水準で、為替レートを大きく超える値上げだった。
その点、新モデルを同様に換算すると、Mac miniの最小構成は「1ドル=約151円」、M5 Proチップ搭載モデルが「1ドル=約160円」、Mac StudioはM5 Maxモデルが「1ドル=約153円」、M5 Ultraモデルが「1ドル=約157円」と、昨今の為替レートからすると妥当な価格設定に落ち着いている。
まとめると「日本のユーザーは6月にメモリ価格の高騰分を“先払い”させられて、今回はドル価格が追いついた分だけ、円換算が正常化した」といえる。だが、それを考慮に入れたとしても日本の方が値上げ幅は大きい。
Mac miniのエントリーモデルの販売価格は、2024年10月から2026年6月まで9万4800円で“動かず”にいた。そして6月から8月の2カ月で“2段階値上げ”で14万9800円になった。約58%という値上げ率は、米国の50%を上回る。
日本の価格設定を見ると、1つ面白い“逆転現象”が起こっている。
Mac miniのM6チップモデルは、学生/教職員の割引価格が13万2800円からとなっている。これは先代のM4チップモデルの13万4800円からという通常価格をわずかに下回る。学生や教職員なら「2世代新しいチップのモデル」を「型落ち機」より安く買える。
なお米国では、7月から始まった「Apple Upgrade」を使うと、Mac Studioをリースで導入できる。36カ月契約の場合、M5 Maxモデルが月額48.99ドルから、M5 Ultraモデルが月額110.10ドルから利用可能だ。
新しい“物差し”となるMac miniとMac Studio
2020年11月に発売されたM1チップ搭載のMac miniを使い続けてきたユーザーにとって、「LM Studioのプロンプト処理で13.5倍」という性能差は、値上げ分を飲み込むだけの説得力を持つ。基本性能を見れば、現在でもM1チップは十分なパフォーマンスを発揮できるだけに、現役で稼働している個体は数多い。つまり買い替え候補の母集団も厚いということだ。
NPUの性能向上や省電力化により、「常時起動のAIマシン」を机の脇に置くという使い方がこの1年で現実的な選択肢になった。「静かで、小さくて、電気を食わない」というMac miniの性質は、「常時起動のAIマシン」という使い方にピッタリかみ合う。
クラウドAIモデルを併用するなら、手元に最高性能は必要なく、置きっぱなしにできることの方が重要だ。M6チップが今後のMacの土台になることを考えれば、その第1号を手元に置く意味もある。9万4800円のMac miniを見ていたときの「安いMac」という物差しでは、もうこの製品は測れない。
そしてMac Studioは、そのスケールのさらに“外側”にいる。M5 Ultraチップと4台クラスタリングが何を成立させるのか――その辺の話は、機会があれば追って話したい。
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