ついに登場した「iPhone Duo」と新CEOが掲げるAI時代の新構想「Intelligent Personal Hub」――Appleが描くAI時代のプライバシーと未来(5/5 ページ)
Appleが発表した初の折りたたみスマホ「iPhone Duo」。しかし今回のイベントの核心は、新CEOのジョン・ターナス氏が掲げた「Intelligent Personal Hub」というAI時代の新たな構想にある。同社が描く未来の「正体」に迫ってみよう。
iPhone Duoはスペック勝負の製品ではない
他社の折りたたみスマホと比較すれば、薄さや軽さ、カメラなど、個別のスペックでiPhone Duoを上回る製品は存在する。しかし、Duoの特徴は一芸で勝つことではない。
ディスプレイやヒンジ、ボディー、カメラ、サウンド、Apple Pencil、ソフトウェア、アニメーションまで、極端に弱い部分を作らず高い水準にそろえ、それらを1つの心地よい体験へ統合していることにある。これはスペック表だけでは分かりにくい。
例えば、なかなかカメラを見てくれない幼児を撮影する機能がそうだ。撮影者は内側の大画面で構図を確認しながら、子供の方を向いたアウターディスプレイにはスヌーピー(PEANUTS)のアニメーションを表示する。子供がそちらを見て笑った瞬間を撮影する仕掛けだ。
単に「画面が2つあります」で終わらせず、「画面が2つあるからこそ何ができるのか」まで考える。こうした機能を見ると、この新カテゴリーを普及させるために、社内で長い時間をかけて議論と試行錯誤を積み重ねてきたことが想像できる。
カスタマイズ性より「迷わなさ」を iPhone Duoに息づくAppleの哲学
今回、勇気のいる決断だと思ったことの1つが、開いた時の画面を2分割して使う場合、ドックを必ず右側の画面に表示することをルール化した点だ。案の定、会場では「左利きの人はどうなるの」という質問が噴出していた。
Appleのことなので、当然、左利きユーザーの利用も十分テストした上での仕様決定だとは思うが、利き手によって必ずしも同じにはならない体験を、それでも理解のしやすさのためにルール化できるのはAppleらしいと思う。
Androidの折りたたみスマホを使ってみると分かるが、制約がなく、分割した左右2画面が対等な関係だと、まるでPCのような使い方になって、初心者には状況把握が難しい状態を作ってしまうことが多い。
どんな時でもドックは右側に表示されるという認識を築ければ、初心者だけでなく疲れている時の上級者も迷わずに済む。
PCに慣れたユーザーは「柔軟なカスタマイズ」を求める傾向が強いが、それを求めるユーザーはむしろAndroidの方が向いている。Appleは、きちんとルールを作り、統制が取れた画面設計を通して分かりやすさや使いやすさを作っていく会社だ。
その姿勢はiPhone Duoでも崩れていない。今回、この仕様を採用するのに合わせてバッテリー残量やWi-Fi、携帯電波などを一目で確認できる分かりやすい丸型アイコンをデザインするなど、決まったルールの中では、少しでも快適に使ってもらうために工夫や努力を重ねている。
最大の弱点は日本での販売価格
もちろん、これだけ妥協を減らした製品だけに安くはない。冒頭でも触れた通り、米国での256GBモデルが1999ドルで、同容量のGalaxy Z Fold8の1899.99ドルと約100ドル差なのに、日本ではiPhone Duoの256GBモデルは36万4800円だ。Galaxy Z Fold8の256GBモデルは26万9880円と、9万4920円に価格差が広がっている。
体験や音質、ハードウェアとソフトウェアの統合まで含めれば、iPhone Duoに価格なりの価値がないとは思わない。それでも日米の価格差を知ってしまうと、少々理不尽なものを感じる。
予約開始は10月16日と、まだ時間はある。できることなら、それまでに日本価格を見直してほしい。それが難しいのであれば、少なくとも次のモデルでは、日本でももう少し手の届きやすい価格になってほしいところだ。そのためにも、個人的には円高基調が続いてほしいと思っている。
米中を含む海外市場では、日本のような為替レートのハンディを背負っていないので、iPhone Duoの登場で他社製品も含めた折りたたみスマホ市場全体が活性化し、これまでスマホ全体の2%といわれていたシェアが大きく躍進するのではないかと期待している。
今後の他社の折りたたみスマホのスペックや画面上の演出にも、大きな影響を与える存在となることだろう。新CEO、ジョン・ターナス氏時代の始まりを告げるのにふさわしい良い製品に仕上がっていたように思う。
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