Windows PC向けゲームの「ロード待ち」はなぜ起こる? 背景に過去との「互換性」(1/2 ページ)
Windows PCでゲームを楽しむと、コンソールゲーム機と比べてロードで待たされることが多い――これは気のせいではない。その謎を2回に分けて解説する。この記事では、「データのロード」に焦点を当てる。
昨今のコンソール(据え置き型)ゲーム機は、データのロード(読み出し)時間がかなり短くなった――そのことに気付いている人は多いと思う。「ストレージデバイスがHDDからSSDになったのだから、当たり前でしょ?」と思っている人も多いだろうが、実はロード時間の短縮は“そこ”だけが理由ではない。SSD元来の速度を超えたパフォーマンスを、技術の進歩でさらにブーストしているのだ。
一方で、PCゲームのロード時間はどうか。速度だけに着目すると、PCI Express 5.0(PCIe 5.0)接続の超高速なSSDでマシンを構成すれば、それなりの速度は出せているような気はする。しかし、普及価格帯のSSDを備えるコンソールゲーム機と比べると、「ゲーム機の方がロード速いの、気のせいかな?」と感じるシーンが多いはずだ。実はこれ、気のせいでも何でもなく、Windowsのストレージシステムが“SCSI(スカジー)の呪縛”にとらわれているせいで、ロード速度に無視できない影響が出てしまっている。
この記事では、ゲームプラットフォームにおける「データのロード」について、技術的な解説を行う。「なんでこんなにロード遅いんだ……?」と気になっている人の参考になれば幸いである。
なぜ「PlayStation 5」のゲームはロードが速い?
コンソールゲーム機の代表格ともいえる「PlayStation 5(PS5)」は、内蔵SSDとメインSoCの間を4レーンのPCI Express 4.0(PCIe 4.0)バスでつないでいる。その帯域は毎秒5.5GBに達するのだが、これに実効帯域を約2倍に広げる技術を併用することで毎秒10GBにまで“拡大“している。これはPCIe 5.0世代のSSDに匹敵する速度だ。
PCIe 4.0接続のSSDで、PCIe 5.0接続のSSD並みの速度を出す秘密だが、PS5ではSSDに記録するデータの多くを「Oodle Kraken(ウードル・クラーケン)」形式で圧縮していること、圧縮されたデータを“そのまま”読み出すようにしていること、そして読み出した圧縮データを高速展開する専用ユニットを装備していることの3点が挙げられる。
例えば、100GBのデータが、SSDでは50GBに圧縮されている。これを50GBのまま読み出し、それをCPUやGPUを一切使わず“瞬間的に”100GBに展開する――これにより、実効速度を約2倍に引き上げているという寸法である。
Oodle KrakenはRAD Game Toolsが保有している技術で、本来は利用に当たってライセンス料が発生する。PS5タイトルで広く使われているのは、PS5のプラットフォーマーであるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が包括契約をしているからと思われる。
- →Oodle Kraken(RAD Game Tools)
RAD Game Toolsは2021年、ゲームエンジン「Unreal Engine」の開発元として知られるEpic Gamesに買収されている。SIEはEpic Gamesの大株主でもあり、多岐にわたる技術提携もしている。Oodleシリーズの利用に当たっては、だいぶ好条件でライセンス契約を締結したのだろう。
余談だが、PS5の開発プラットフォームでは圧縮済みのテクスチャーを、見た目の品質をほとんど下げずにOodle Krakenで“二重圧縮”する「Oodle Texture」という技術も採用されている。
PS5ではSSDに保存するデータの多くをOodle Kraken形式で圧縮しており、メインSoC内にCPU/GPUコアとは“別に”Oodle Kraken専用の展開ユニットを備えている。これにより、CPU/GPUの処理を邪魔することなく、メモリにデータを一気に流し込める
なぜ「Xbox Series X|S」のゲームはロードが速い?
一方で、Microsoftのコンソールゲーム機「Xbox Series X」「Xbox Series S」(以下まとめて「Xbox Series X|S」)では、標準搭載のSSDの帯域が毎秒2.4GBと、PS5の半分程度となっている。これはSSDとメインSoCの接続が2レーンのPCIe 4.0バスで、バス幅がPS5の半分しかないためである。
SSDの帯域では劣るXbox Series X|Sだが、「Sampler Feedback Streaming(SFS)」と呼ばれるテクスチャーストリーミング技術を使って帯域の狭さを補っている。
SFSはSSDに保管された圧縮済みのテクスチャーパッケージから、ゲームで必要なデータだけを“直接”読み出してメモリ上に展開するという技術で、言い換えるとメモリの利用効率を重視したシステム設計ということになる。
余談だが、先に紹介したPS5における「圧縮データを高速展開する専用ユニット」に相当するものは、Xbox Series X|Sにも「Xbox Velocity Architecture(XVA)」という名称で実装されている。ただし、こちらは圧縮アルゴリズムにライセンスフリーの「zlib」「BCPack」を採用している。
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