元々のパフォーマンスも良いTS-464だが、さらなるパフォーマンスアップを図ることもできる。ボトルネックになりがちな部分を「フェーズ」に分けて、順番に強化してみよう。
TS-464の有線LANポートは、2基共に2.5GBASE-Tに対応している。2.5GBASE-Tは、最高速度1Gbps(理論値)となる「1000BASE-T」用のケーブルを流用して2.5Gbps(理論値)の通信を実現した規格だ。
NASは“1対多”の通信を行うことになるため、NASの通信帯域は複数のクライアント端末で分け合うことになる。少なくともNASとスイッチ(ハブ)との間の通信を2.5Gbpsに引き上げれば、端末1台当たりに割ける帯域(通信速度)は向上する。端末を2.5GBASE-Tに対応させなくても、同時接続台数が増えた場合の速度低下が起こりにくくなるのだ。
そこでお勧めしたいマネージドスイッチが、QNAPの「QSW-M408-4C」だ。税込みの実売価格は8万円前後と、TS-464をもう1台購入できるような価格帯だが、それに見合った機能を備えている。
QSW-M408-4Cは12ポート構成となっており、うち4ポートが10Gbps通信に対応するSFP+(10GBASE-SR)/RJ45(10GBASE-T)のコンボポートで、5GBASE-T/2.5GBASE-Tにも対応している。残りの8ポートは1000BASE-Tポートだ。
サーバ/NASが高速通信対応で、残りのクライアント機器は1000BASE-T対応――そんな構成のネットワークに最適なスイッチである。
ここで先ほどの読み書きテスト環境に再登場してもらい、スイッチをQSW-M408-4Cに置き換えた上で、TS-464とクライアント端末を10GBASE-Tポートに接続して、読み書きの速度がどのくらい向上するのかチェックしてみよう。シーケンシャル(SEQ1M Q8T1)の読み書き速度は以下の通りだ。
読み書き共に約2.5倍の速度になった。ネットワークの通信速度向上が読み書き速度へとリニアに反映された格好である。
ちなみに、QSW-M408-4CとTS-464は共にIEEE 802.3ad規格の「リンクアグリゲーション(ポートトランキング)」に対応している。
リンクアグリゲーションは複数の物理回線を1つの回線として扱う技術で、束ねた物理回線の数だけ帯域を広げることが可能だ。1台当たりの帯域も広がることになるので、多数の端末が同時接続した場合の通信速度をさらに改善できる。
TS-464の設定でポートトランキングを有効化した上で、2基の2.5GBASE-TポートにLANケーブルをつなぎ、QSW-M408-4Cの2基の10GBASE-Tポートにつなげば、TS-464の通信帯域を5Gbpsに拡張可能だ。
1000BASE-T接続を2.5GBASE-T接続にするだけで約2.5倍のパフォーマンス向上を図れるということは、TS-464には“まだ”パフォーマンスの余裕がありそうだ。
そのポテンシャルを引き出すべく、TS-464に10GBASE-T対応ネットワークカード「QXG-10G1T」を装着して、ピュアな10GBASE-T環境におけるパフォーマンスをチェックしてみよう。
QXG-10G1TはPCI Express 3.0 x4バスに接続できるカードで、Windows/Linuxで稼働するPC/サーバでの利用はもちろん、PCI Expressスロットを備えるQNAP NASでも利用できる。税込みの実売価格は2万6000円前後だ。
QXG-10G1Tを組み込んだ後、TS-464とQSW-M408-4Cを10GBASE-Tで接続し、シーケンシャル(SEQ1M Q8T1)の読み書き速度を計測した所、結果は以下の通りとなった。
2.5GBASE-Tでの計測結果と比べると書き込みで約1.35倍、読み出しで約1.24倍となった。ネットワークの強化による速度アップとしては、十分及第点といえるだろう。
先に紹介した通り、TS-464には4基のストレージベイと2基のM.2スロットがあり、M.2スロットにはPCI Express 3.0接続(NVMe規格)のM.2 SSDを装着できる。
M.2 SSDはNASを構成するストレージとして使うことはもちろん、ストレージベイに装着したストレージに対する「SSDキャッシュ」として利用できる。PCI Express接続のSSDは、ストレージベイに取り付けるSerial ATA規格のストレージよりも高速な読み書きを行える。これをキャッシュとして活用すれば、ストレージにHDDを使った場合でもより高速な読み書きを実現できるのだ。
SSDキャッシュは「読み取り専用」「書き込み専用」「読み取り/書き込み」のいずれかを選択できる。2スロットあるのでSSDキャッシュ自身をRAID構成とすることも可能だ。
ただし、書き込みキャッシュを利用する場合は、障害の発生を避けるためにRAID 1構成とすることをお勧めする。一方、読み取りキャッシュとしてのみ利用する場合は、RAID 0構成とすることでパフォーマンスをより向上できる。
SSDキャッシュはNASとしてのTS-464のパフォーマンス向上はもちろんなのだが、TS-464で行う内部処理の速度改善にもつながる。具体的には、動画のエンコード、顔認識、仮想マシンの実行、データベースの処理など、システムに負荷が掛かる処理のパフォーマンスを大きく改善してくれる。
実際にどのくらいの速度向上効果があるのか、TS-464にデータベースを構築して処理スピードを比べてみよう。テスト環境は以下の通りだ。
その結果は以下の通りである。
いずれもSSDキャッシュを有効にするとおおむね7倍のパフォーマンス向上を確認できた。SSDキャッシュ加速の画面でキャッシュのヒット率を調べてみると、書き込みと読み取りの両方で効果的にキャッシュが働いている様子も伺える。
M.2 SSDは、QNAP独自のデータ最適化技術「Qtier」にも活用できる。
Qtierでは、NASに搭載されたストレージを「超高速(SSD)」「高速(SAS:Serial Attached SCSI)」「大容量(SATA/NL-SAS)」の3階層に分けた上で、これらを単一のストレージプールとして利用する。頻繁に利用されるデータは超高速層に配置し、めったにアクセスされないデータは大容量層に移動する。
仕組みが仕組みだけに定量的なパフォーマンス測定をすることは難しいが、有効化すると全体的な体感速度は確実に向上する。
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提供:QNAP株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2022年11月8日