PDAはまだまだ死なない──日本HP「iPAQ rxシリーズ」:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
日本HPから久々のPDA「iPAQ」が一挙に3モデル発売された。GPSを内蔵するなど、個人向けにフォーカスしたモデルのできばえはいかに!?
GPSを内蔵した最上位機rx5965のできは?
さて、モデルごとの特徴だが、ハイエンドのrx5965は、GPS機能の内蔵とトラベル・ツールソフトウェア(World Mate Standard Edition)の搭載により、Travel Companionの愛称がつけられている。World Mateは、度量衡や通貨の換算、世界時計、国際電話の国別コード一覧といった、旅行の際に必要なデータをまとめたアプリケーションだ。インターネット接続されたPCとの同期で、世界各国の天気予報データを取り込むこともできる。
GPS機能は、SiRFstar IIIチップにナビゲーションソフトのb-walkerを組み合わせたもの。ビルの谷間のようなロケーション(一例を挙げると、東京国際フォーラムのホール棟とガラス棟の間)でも、複数の衛星をキャッチできるなど、十分な感度を備える。rx5965は、標準の128Mバイトに加え2GバイトのフラッシュROMを備えるが、うち800Mバイトがb-walkerと地図データにより利用されている。
このGPS機能を簡易カーナビ代わりに利用するべく、rx5965には車載キットが標準で添付される。車載キットは、カーマウント金具とホルダ、シガープラグアダプタで構成され、ダッシュボードの見やすい位置にrx5965を固定することが可能だ。専用カーナビと異なり自律航法機能を持たないから、過度な期待をしてはならないが、SiRFstar IIIの高感度のおかげで、ある程度は使えるものになっている。
メディアプレイヤーとしての使い勝手も上々なrx4540とrx4240
一方、rx4540とrx4240は、1Gバイトの追加フラッシュROMを持つかどうかが違いの姉妹モデルである。前述したように、1Gバイトのストレージを使いながらPHSカードでの通信も行いたければrx4540、Bluetooth携帯の利用や、PHSカードとSDメモリカードの同時利用を行わないのであればrx4240という使い分けになるだろう。これ以外は両者のスペックは共通である。
ディスプレイである2.8インチのカラー液晶は、解像度がQVGA(320×240ドット)だ。同じWindows Mobile 5.0ベースのW-ZERO3[es](WS007SH)も同じ2.8インチサイズの液晶だが、VGA解像度であるのに比べると、やや見劣りする。液晶ディスプレイを小さくしてナビゲーションパッド(十字キー)をなくし、ハードウェアボタンを側面に移したことで、本体はかなり小型化された。サイズはHDDベースのiPod with Videoを少し分厚くした感じである。
GPS機能を持たないrx4540とrx4240の用途は、PIMとWindows Media Player 10 Mobileによるエンターテインメントが中心になる。rx4540/4240は、ナビゲーションパッドの代わりに本体右肩にスクロールホイールを搭載し、スクロールでボリューム調整、ホイールクリックで再生と停止ができるなど、片手で操作可能だ。この片手操作を常に行えるようにする意図からか、本機にはホールドスイッチがない。代わりにアクリル製のクリップカバーが付属しており、画面への不慮のタッチによる誤操作を防ぐ仕組みになっている。
音質も付属のマイク付きヘッドフォン利用時は思った以上に良好だが、サードパーティ製品を利用する場合、若干ヘッドフォンを選ぶ傾向があるようだ。なお、Windows Media Playerということで、Napsterなどのサービスの利用を期待したいところだが、カードスロットがSDメモリーカードのセキュリティ機能をサポートしていないことを考えると、対応は難しいだろう。とはいえ、フリーウェアも含めたサードパーティ製ソフトの利用も考えると、メディアプレイヤーとしての潜在能力は高い。
今回発表された3機種とも、PDAに長い歴史を持つHPの製品だけに、無線機能のオン/オフを切り替えるユーティリティや、Bluetooth対応携帯電話の接続を助けるユーティリティ、メール設定をPC側で行って転送するユーティリティ添付など、使い勝手を高める細かい配慮が目立つ。PDAに通話機能を求めないユーザー、すでにBluetooth対応携帯電話を持っているユーザーはもちろん、Windows Mobileは初めてというユーザーにも適したモデルに仕上がっている。
関連記事
- 日本HP、ポータブルプレーヤー風デザイン採用の新「iPAQ」発売
日本ヒューレット・パッカードは、PDA「iPAQ」のラインアップを一新、新デザイン筐体採用の計3モデルを発売する。GPS内蔵モデルもラインアップした。 - 日本HP、メディアプレイヤー&ナビ機能付きiPAQ Pocket PCを発表
iPAQ Pocket PCの最新モデル3機種が発表された。新iPAQはパーソナルメディアプレイヤーを意識した、横向き・木の葉型のデザインを採用。上位機種はGPSナビ機能も搭載している。新しくなったiPAQを写真で見ていこう。 - 内蔵メモリ1Gバイトの最強・最小iPAQ登場
PC編とプリンタ編に続く米Hewlett-Packardのアジア太平洋地域向けコンシューマー製品発表会リポートの最後を飾るのは、iPAQだ。 - 一挙4機種を投入──日本HP、iPAQ Pocket PCの新モデル
日本HPは12月に、iPAQ Pocket PCの新モデル4機種を発売する。全機種にWindows Mobile 5.0 for Pocket PCを搭載。ローエンドの「rx1950」には無線LAN機能が搭載された。 - マイクロソフトの最新Bluetoothマウスを試す
マイクロソフトから発表された2つのBluetooth対応レーザーマウス。その使い勝手はどうなのか。また、Bluetooth内蔵ノートPCで使うことはできるのだろうか。 - マイクロソフトの基調講演で感じた微妙な距離
WPC TOKYO 2006で行われたマイクロソフトの基調講演の模様をお伝えする。 - PCの進化はノートPCが切り開く──ムーリー・エデン氏基調講演
WPC TOKYO 2006の開幕にあわせて、インテル副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏が基調講演を行った。 - インテルのアイルランドFabを“非”公式に訪れてみた
今回はスペシャル版と題して、アイルランドにあるインテルのFab 24に“ひっそり”と訪問した。 - もう1つの“革命”という名の小型マウス
元麻布春男氏が最新PC事情を分析する本連載。今回は“革命”の名を与えられたもう1つのロジクール製マウスを見ていく。ノートPC用だからと言って侮ってはいけない。 - “革命”という名のマウス
“革命”の名を与えられたロジクールマウス。その画期的なフィーチャーは、これまでの操作性を一変させるかもしれない。 - 第9回 Vistaでオーディオデバイスはどうなる?
Windows Vistaでのオーディオデバイスの扱いはどうなるのだろうか。 - 第8回 Vistaにおけるデバイスドライバのゆくえ
Windows Vistaにおけるデバイスドライバの扱いをチェックしよう。 - 第7回 Windows Vistaの最新βをチェックする
“July CTP”とも呼ばれるビルド5472の最新Vistaを見ていく。 - 第6回 AMDのATI買収劇が意味するもの
“電撃的”に発表された米AMDによる加ATI Technologies買収劇の意味を考える。 - 第5回 Windows Vistaのアップグレードポリシーを考える
Windows Vistaのアップグレードポリシーをチェックしよう。 - 第4回 Vistaのユーザーアカウント制御を考える
Windows Vistaのユーザーアカウント制御はどのように変わるのだろうか。 - 第3回 内蔵グラフィックスでWindows Aeroは動くのか!?
統合チップセットのグラフィックスで“Windows Aero”を動かしてみた。 - 第2回 Windows Aeroの謎に迫る
NVIDIA製グラフィックスカードを使って“Windows Aero”の謎に肉薄する。 - 第1回 果たしてWindows Vistaはテイクオフできるのか?
PCウオッチャーの元麻布春男氏が、Windows Vistaの現状を斬る。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.