インテル、“Santa Rosa世代”のCentrinoを発表
インテルは5月9日に“Santa Rosa”の開発コード名で知られる新世代Centrinoを発表した。CPU、チップセット、無線LANが一新されたほか、新しい機能が多数導入されている。
新世代のCentrinoを構成するのは、これまでと同じようにCPU、チップセット、無線LANモジュール。CPUはこれまでと同じ“Melom”コアのCore 2 Duoであるが、FSBが800MHzに上がり新しい省電力技術と性能向上技術が導入された。チップセットは従来のモバイルIntel 945 ExpressファミリーからモバイルIntel 965 Expressファミリー(開発コード名“Crestline”)に移行。無線LANモジュールもIEEE 802.11nに対応する「Intel Wireless Link 4965AGN」(開発コード名“Kedron”」が採用される。
CPUはこれまでと同じコアマイクロアーキテクチャを採用するが、FSBは800MHzに対応し、新しい省電力技術や性能向上技術が実装された。新世代Centrinoに対応するCPUとして今回登場するのは「Core 2 Duo T7700」「Core 2 Duo T7500」「Core 2 Duo T7300」「Core 2 Duo T7100」「低電圧版Core 2 Duo L7500」「低電圧版Core 2 Duo L7300」の6種類。主要なスペックは以下のようになる。
動作クロック(定格時) | 動作クロック(Intel Dynamic Acceleration時) | FSB | L2キャッシュ | TDP | 1000個ロットあたり単価 | |
Core 2 Duo T7700 | 2.40GHz | 2.60GHz | 800MHz | 4Mバイト | 35ワット | 6万3370円 |
Core 2 Duo T7500 | 2.20GHz | 2.40GHz | 800MHz | 4Mバイト | 35ワット | 3万7780円 |
Core 2 Duo T7300 | 2.0GHz | 2.20GHz | 800MHz | 4Mバイト | 35ワット | 2万8810円 |
Core 2 Duo T7100 | 1.80GHz | 2.0GHz | 800MHz | 2Mバイト | 35ワット | 2万4990円 |
低電圧版Core 2 Duo L7500 | 1.60GHz | 1.80GHz | 800MHz | 4Mバイト | 17ワット | 3万7780円 |
低電圧版Core 2 Duo L7300 | 1.40GHz | 1.60GHz | 800MHz | 4Mバイト | 17ワット | 3万3960円 |
FSBが800MHzに対応することで、「Meromの機能がSanta Rosaでようやくすべて使えるようになった」とインテルが述べる新世代Centrinoでは、このほかにも、「Dynamic FSB Switching」「Enhanced Deeper Sleep」「Intel Dynamic Acceleration」といった新技術が導入されている。
Dynamic FSB Switchingは、システムの負荷にあわせて動的にFSBのクロックを変更する機能。従来もEnhanced SpeedStepによってCPUの動作クロックを動的に下げることで消費電力を抑えてバッテリー駆動時間を延ばしてきたが、Dynamic FSB Switchingでは、従来のACTIVE STATEで最も低いレベルだった「LFM」のさらに1つ下の状態となる「Super LFM」を設けた。SuperFSBではFSBを半分に落とすことで、CPUのベースクロックを通常の200MHzから100MHzに下げている。
Enhanced Deep Sleepも消費電力を抑えるための技術。こちらも従来設定されていた最も電力消費が低い「C4」ステートの下に「DC4」というステップを設けている。C4ステートではL2キャッシュのキャッシュデータを保存するための電力が供給されていたが、DC4ステートでは、このキャッシュデータを徐々にフラッシュしていくことで消費電力を抑えるようになっている。
Intel Dynamic Accelerationは、デュアルコアCPUを搭載したシステムがシングルスレッド対応アプリケーションを処理しているときに、使わない片方のコアを休止状態(C3ステート)にすると同時に、もう片方のコアの動作クロックを200MHz上げることでシングルスレッドアプリケーションにおける処理速度を向上させる技術。片方のコアを休止状態にすることでそのコアから発生する熱を抑えるため、その分だけもう片方のコアのクロックを上げてもCPU全体としてのTDPは同じレベルにとどまるというのがIntel Dynamic Accelerarionの特徴だ。
チップセットのモバイル Intel 965 Expressファミリーはグラフィックスコアを組み込んだ統合型のモバイルIntel GM965 Express(Intel GM965)とグラフィックスコアを組み込まない通常タイプのモバイルIntel PM965 Express(Intel PM965)が用意される。FSBが800MHzまで対応できるようになったこと以外は、従来のモバイルIntel 945ファミリーとほぼ同じスペック。ただし、Intel GM965に組み込まれるグラフィックスコア「モバイルIntel GMA X3100」はデスクトップPCむけチップセット「Intel G965」に組み込まれたIntel GMA 3000と同じハードウェアで、高画質機能「Intel Clear Video Technology」が導入されている。
無線LANモジュールのIntel Wireless WiFi Link 4965AGN(4965AGN)は、インテルが「従来より5倍速くて2倍届く」とアピールするIEEE 802.11nに対応している。現在策定中のこの無線LAN規格は、2.4GHzと5GHzのバンドをサポートする。インテルの説明では5GHz帯もEnableの状態で出荷されるとしている。
新世代Centrinoでは、これらの「CPU」「チップセット」「無線LAN」という“構成必須要素”以外でも新しい技術「Intel Turbo Memory」が導入された。これまで「Robson」という開発コード名で知られてきたこの技術は、HDDとチップセットを結ぶPCI ExpressバスにNAND型フラッシュメモリを配置することで「アプリケーションの起動と動作が2倍になり、PCのブート時間が20%速くなるだけでなく、HDDの回転を少なくすることで電力消費も抑えられる」(インテルの資料より)ことが特徴だ。Intel Turbo MemoryではNAND型フラッシュメモリがHDDのキャッシュメモリとして動作することでデータの読み込みと書き出しが速くなり、HDDへ直接アクセスする回数が減ることでHDDの回転頻度が減って電力消費量も減ることが期待されている。Intel Turbo Memoryで用いられるNAND型フラッシュメモリは8ミリ×8ミリサイズのモジュールとして供給され、その容量は1Gバイト、もしくは512Mバイトの2種類が用意される。Intel Turbo Memoryの動作はIntel Matrix Storage Manager 7.0によって制御される。
HDDとチップセットの間にキャッシュになるメモリを用意してパフォーマンスを向上させる技術としてWindows Vistaで導入された「ReadyBoost」「ReadyDevice」があるが、これらの技術との違いについてインテルは「ReadyBoostやReadyDeviceではUSBメモリを追加しなければならないがIntel Turbo Memoryは追加デバイスが不要」「USB 2.0対応のUSBメモリと比べて消費電力が3分の1に抑えられる」「USB 2.0の帯域480MbpsよりPCI Expressの帯域は4Gbpsもある」「エンドユーザーは環境設定を気にしなくてよい」と説明している。
なお、Intel Turbo Memory用のNAND型フラッシュメモリはPCI Express接続モジュール、もしくはオンボードモジュールの形で供給されるが、インテル以外のベンダーが供給するNAND型フラッシュメモリでも同様の機能は実現できるとインテルでは説明している。ただし、この場合、“Intel Turbo Memory”と呼ぶことはできないとインテルでは述べている。また、Intel Turbo Memoryのメリットとして「Windows Vistaでしか使えないReadyBoostと違ってOSを選ばない」とインテルは説明していたが、Intel Turbo Memoryが使えるOSは“当面”のところWinodws Vistaに限られるとしている。
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かつてモバイル向けCPUは性能と消費電力をともに向上させていた。Baniusの時代になってこの流れが変わったがYonah、そしてMeromはそのトレンドを受け継ぐことはできるのだろうか。
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