iPhoneが出たりもしたけれど、Newtonはまだまだ元気です:Newton環境がオープンソースで復活
第3回Worldwide Newton Conferenceで、アップル往年のPDA「Newton」の動作をPC上でエミュレートする「Einstein」のオープンソース化が発表された。当日のセッションでは、独仏日を代表するNewtonプログラマーによる座談会も行われている。
アップル往年のPDA、Newtonの動作を今日のPC上で再現するエミュレーターソフト「Einstein」が、「Open Einstein」としてオープンソースで復活した(GPL v2ライセンスにて公開)。発表は7月7、8日の2日間に渡って開催された第3回「Worldwide Newton Conference」(以下、WWNC)のセッション中に行なわれた。
Einsteinはフランスの研究者、Paul Guyot博士(ポール・グヨー)が進めていたプロジェクトだ。講演中にGuyot氏は、Einsteinプロジェクトの歴史を振り返りつつ、まだ動作速度やホスト機能(エミュレーターを実行するコンピュータのハードウェア機能)との融合といった点で改善の余地があると語り、オープンソース版の「Open Einstein」を発表。オープンソース化の成果の1つとして、ドイツから来日中の独Robowerk代表、Matthias Melcher氏(マティアス・メルヒャー)が前夜のうちに「Einstein」環境をCygwinとX11をインストールしたWindows環境に移植し、デモを行っている。
なお、時間の関係でインテルMacに最適化したUniversal Binary版の提供は行われていないものの、公開したソースコードにはUniversal Binary版のコンパイル(作成)方法の書類も添付している。
ほかの多くのエミューレーターがそうであるように、Einsteinの実行にも著作権のかかったNewtonのROMのデータが必要だ。Newton OS 2.1を搭載したNewton MessagePad 2000、2100またはeMate 300を所有しているユーザーが、特殊なハードとソフトを使ってROMのデータを吸い出し、そのデータを併用すると、MacやWindows、OpenZaurusというソフトをインストールしたシャープのZaurus、Nokia Internet Tablet、(CygwinとX11をインストールした)Windowsの画面上にNewtonの画面が現れ、スタイラスペンやマウスを使って手書き文字認識を含む、Newtonの操作をそっくりそのまま再現できるようになる。
パリ、ニューヨークに続いて東京で開催された今回のWWNCでは、ほかに日本を代表するNewtonプログラマーの温井真氏(Mac OS XやUNIX、Linux上で、Newtonのプログラミング言語、NewtonScriptを実行するnewt/0の開発者として知られる)や、上述のMatthias Melcher氏、主催者のSai氏らも講演を行った。そしてカンファレンスの最後では、日仏独それぞれの代表として温井氏、Guyot氏、Melcher氏の3氏による座談会が行われた。
WWNCでは、Newton用につくられたプログラムを、エミュレーターウィンドウを介さず、今日のパソコンのネイティブウィンドウ環境で実行する「NewtView」も発表された。EinsteinがインテルMac上にWindows環境をまるごとインストールするParallelsに似たソリューションだとすると、NewtViewは、Mac OS X上でWindows用ソフトを直接実行するCrossOverに似たソリューションと言える。
Einstein開発者のGuyot氏も、Newton実行環境をウィンドウ内にとどめてしまう今日のEinsteinでは物足りないと考えているようで、Einsteinとは別に「Relativity」という技術の開発も行っている。
これはEinsteinとホストコンピューター上の資産を融合するためのプロジェクトで、Relativity技術によって、例えばエミュレーションしているNewton環境からホストコンピューターで動作するiTunesを操作したり、ホストコンピューターの文字入力機能を使ってNewton環境に文字を入力したり、逆にEinsteinを使ってホストコンピュータのワープロソフトに手書きで文字入力をしたり、といったことが可能になるという。
座談会のもう1人の参加者、独のMelcher氏はNewton用ソフト開発環境の「DyneTK」を紹介した。Guyot氏は、「Newton環境に対する三者のアプローチはそれぞれ異なっているが、競合するものではない、今後、三者が手を取り合っていくことで、Newton環境の再現はさらに進むだろう」と抱負を語った。
会場にはiPhoneも登場し、来場者は興味津々の様子だったが、「iPhoneはiPhoneですばらしいが、PDAとしての完成度の高さではNewtonも負けていない」という声も聞こえた。
温井氏はTVとPCを比較したスティーブ・ジョブズ氏の有名な言葉を模して「iPhoneは頭をオフにして使う道具、Newtonは頭をオンにして使う道具」と評した。もっとも、Guyot氏はEinsteinプロジェクトのオープンソース化によって、いずれはiPhone上でもEinsteinが動作すればと望んでいるようだ。
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