第1回 LOOX UとSH6の性能を見極める:真夏のUMPC徹底攻略(2/2 ページ)
暑い夏はノートPCも小さく、軽く、スマートに持ち歩きたい。本特集では、品薄が続く人気UMPCの「LOOX U」と「KOHJINSHA SH6」を触り比べてみた。
ベンチマークテストで比較する2台のUMPC
ここでは定番のベンチマークテストプログラムを使って、U50WNとSH6WP10Aのパフォーマンスを確認してみた。OSは、U50WNがWindows XP Professional(SP2)、SH6WP10AがWindows Vista Home Premiumだ。厳密な比較と言う意味ではOSを統一したほうが望ましいが、実際の使用環境を考慮して、今回はそれぞれプリインストールOSのままとしている。そのため、テスト結果は参考程度に見てほしい。SH6WP10Aは購入直後にOSをWindows XPに入れ直す猛者も少なくないようだが、現状ではWindows XP用ドライバがメーカーから提供されておらず、Windows Vistaのまま使い続けるユーザーが大半だろう。
まずはPCとしての基本的な処理能力を比較するため、Windows VistaとWindows XPの両方に対応している総合ベンチマークテストプログラムの「PCMark05(V1.2.0)」を実行した。PCMark05ですべてのスコアを有効にするには、1024×768ドット以上の画面解像度が必要だが、どちらも液晶ディスプレイは1024×600ドット表示にとどまる。そこで外部ディスプレイにアナログRGBで接続し、外部ディスプレイにのみ1024×768ドットでデスクトップを表示した状態でテストした(U50WNはクレードル経由で接続)。
ちなみに、1024×768ドット以上の画面解像度を要求するのは「Graphics」のテストだが、ほかのスコアが内蔵ディスプレイ使用時と外部ディスプレイ使用時で誤差程度しかないことは確認済みだ。
PCMark05のテスト結果は、おもにCPUの動作クロックとOSの違いが反映されたようで、U50WNが優勢となった。Graphicsのスコアについては、CPUの動作クロックとOSの違いを考慮すれば、U50WNが上回ることは予想できたが、2倍以上の差が出たことは意外だ。
おそらくこれに関連するのがMemoryのスコアで、こちらもU50WNが約25%高いスコアを記録している。CPUのA110とA100は、L2キャッシュが512Kバイト、FSBクロックが400MHzと共通なので、OSの違いがほとんど出ないはずなのだが、ドライバ周りが最適化されていないのか、Vistaでは負荷が増えるためか、いずれにしても明確な差が現れた。
もっとも、個別のスコアがすべて同じ傾向なわけではない。SH6WP10Aは2.5インチHDDを採用しているため、全体的にWindows Vistaでは低めにスコアが推移している中、HDDのスコアでは約1.5倍の差を付けて圧勝している。2.5インチHDDの採用は、操作レスポンスの向上に影響してくるはずだ。
次に「3DMark03」を実行することで、3Dグラフィックスの性能を比較した。3DMarkの最新バージョンである「3DMark06」はWindows VistaとWindows XPの両方に対応しているが、これら2台のUMPCで実行するには、どう考えても荷が重いベンチマークテストプログラムだ。そこで今回は、PCの処理能力に相応で、Windows Vista上でもほぼ問題なく実行可能なことが確認できている3DMark03を用いた。
3DMark03の結果だが、総合スコアではCPUの動作クロック以上に差が出た。OSとドライバの違いもあると思うが、U50WNのほうが約1.5倍高いスコアだ。もっとも現実的には、どちらも今どきの3Dゲームを楽しむには力不足と言える。
最後におなじみの「FINAL FANTASY XI for Windows オフィシャルベンチマークソフト Vana'diel Bench3」、いわゆるFF XIベンチを実行してみた。テストの設定は、高解像度のHigh(1024×768ドット)と低解像度のLow(640×480ドット)が選択できるが、Highの設定は内蔵ディスプレイで実行できないため、両製品とも外部ディスプレイに表示して実行している。
ここでもCPUの動作クロックで上回るU50WNが勝利した。とくにLowの設定では「楽」評価にあたる1299を記録しており、とりあえず「FINAL FANTASY XI for Windows」が動作可能なレベルにある。もちろん、OSとドライバの違いを無視するわけにはいかないが、購入状態での性能差はそれなりに大きいと言えそうだ。
以上のようにベンチマークテストプログラムでの比較は、U50WNが総じて良好な結果となった。メインメモリの容量こそ同じだが、CPUの動作クロックで200MHz上回り、OSもより動作が軽いWindows XP Professional(SP2)を採用しているため、当然と言える。SH6WP10Aは2.5インチHDDを採用したことがアドバンテージだが、総合スコアでの巻き返しは図れなかった。本体サイズの小ささを考慮すると、U50WNのパフォーマンスは高く評価できるが、それだけに価格差もあるので、手放しで評価できるかどうかは微妙なところだ。
次回は、ユーザーインタフェースの違いをはじめ、起動やスタンバイへの移行にかかる時間、標準バッテリーの駆動時間などを検証することで、ベンチマークテストプログラムの結果からは判断できない実際の使い勝手を比較していく。
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