「3.0」世代の新規格が明らかに──IDF 2007基調講演から:Intel Developer Forum 2007
IDFでは、CPUやプラットフォームに限らない、開発中の新しい技術規格も紹介される。2007年のIDFで取り上げられたのは「USB」「PCI Express」の次世代規格だ。
IDF 2007では「Penryn」「Nehalem」といったCPUのほか、開発が進められている新しい技術規格も紹介されている。これらの説明を聞いていると、初日の基調講演リポートで「IntelはiAプラットフォームの水平展開を狙っている」と書いた、そういう動向がよく分かってくる。この記事では、このような、新しい技術規格について何点か取り上げていこう。
USB 3.0
IntelはIDFにおいて、従来のUSB 2.0における上限帯域が480Mbpsなのに対し、USB 3.0ではその10倍の速度を目指すと説明した。IDF初日の9月18日(米国時間)には、Intel、Hewlett-Packard(HP)、Microsoft、NEC、NXP Semiconductors、Texas Instruments(TI)といったベンダーが参加して、「USB 3.0 Promoter Group」の設立を発表している。
USB 3.0は、USB 2.0、同 1.1との下位互換性を持っているので、既存のインタフェースはそのまま流用できる。当面は、銅線を用いて通信速度の向上を実現するものの、最終的には光ファイバーを用いて通信帯域の増加を目指すという。Intel デジタルエンタープライズ部門プレジデントのパット・ゲルシンガー氏は、「2008年での仕様策定を目指す」とUSB 3.0の開発スケジュールについて説明していることから、対応する製品が出荷を開始するのは2008年後半から2009年以降になるとみられる。また技術の性格上、当初はハイエンドPCやサーバなど、ごく一部の用途に限られる可能性が高い。
SSD(Solid State Drive)
Intelは、フラッシュメモリをHDD代わりに使う「SSD」(Solid State Drive)市場への参入を明らかにしており、MicronとNANDフラッシュ生産で提携を結んでいる。IDF 2007では、そのSSDサンプルの1つが紹介された。
ゲルシンガー氏によれば、SSDはHDDをリプレイスするものではなく、あくまで両者が補完関係になると認識しているという。「SSDはHDDを置き換えるわけではない。HDDの高密度化が進む一方で、フラッシュメモリにはまだそこまでの高密度化やコスト単価の低さは望めない。SSDの利用にあたっては、それ自身の特徴を生かさなければいけない」(ゲルシンガー氏)
ゲルシンガー氏が想定しているSSD用途の1つがデータセンターなどのシステムで、「HDDの処理速度がボトルネックとなるようなアプリケーション、例えばデータベースなどで力を発揮できるだろう」と説明する。またノートPCなどでの利用も、SSDのメリットを引き出せると認識しているという。
Tolapai、そしてQuickAssist Technology
IDF 2007のキーワードとなった感のある「iAの水平展開」をよく示す1つの好例が「Tolapai」だろう。TolapaiはSOC(System on Chip)型のアーキテクチャを採用した組み込み向けCPUだ。Silverthorneが携帯用の小型デバイス向けだとすれば、Tolapaiは通信機器やドーターカードなどに搭載する用途を想定している。TolapaiにはCPUコアのほか、通信機能に対応するアクセラレータなどが組み込まれるなど、特定用途向けの組み込み機器に特化した構成をとる。
このTolapaiと同時に発表されたのが「QuickAssist Technology」だ。サーバ向けCPUとサードパーティのアクセラレータを組み合わせて高速処理を行うためのフレームワークで、特定用途でのアプリケーションやシステム動作の高速化を支援する。
これら2つの技術は一般ユーザーにはなじみの薄いものだが、Intelが自社のx86アーキテクチャを使ってPC以外の分野への進出を目指しているというトレンドを知るには、最も適した“教材”といえるだろう。
PCI Express 3.0
PCI Express 2.0をサポートするIntel X38 Expressがようやく登場しそうな現時点において、少々気が早いとも思うが、PCI Expressの次のトレンドも見えつつある。現行のPCI Express 2.0の倍のパフォーマンスを発揮する「3.0」の規格策定作業が進行中で、仕様の確定を2009年までに済ませ、実際の製品がリリースされるのは2010年になるという。CPUのマルチコア化や高速化で転送するデータ量が増え、特にサーバ分野で顕在化しつつあるI/Oのボトルネックを解消することが期待されている。
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