HSDPA対応の「VAIO type T」と「FMV-BIBLO LOOX T」を検証する(後編):速度チェックは新幹線に乗って(2/2 ページ)
VAIO type TとLOOX TにNTTドコモの定額データプランに対応したHSDPA通信モジュール内蔵モデルが登場。その実力を試すべく、2台を抱えて旅に出た。
内蔵モジュールのアンテナ感度は?
電波の感度が比較的よい場所での通信速度が確認できたところで、今度は電波状態が慢性的に悪い場所で2台の内蔵通信モジュールを利用した場合と、音声端末をモデムとして利用した場合の違いをチェックしてみた。内蔵モジュールということで、いわゆるアンテナ感度も気になったからだ。
ロケーションは、音声端末でアンテナバーが常時0〜1本をフラフラし、圏外になることも珍しくない屋内。設置場所から少し離れた半地下へ出る広い通路には電波が十分に届いているが、計測した場所は奥まっており電波が届きにくい。ちなみに、ここはauもソフトバンク3Gも電波状況はほぼ同様だった。
音声端末は前述の「N902iX HIGH-SPEED」を利用し、PCとはUSBケーブルで接続した。また、通信速度のバラツキが大きかったので、ここでは3回ずつ計測したすべての結果とその平均値を下表にまとめている。また、音声端末をモデムに使う場合は設置の自由度が高いというメリットがあるので、PCの横に置いた場合と、PCの液晶ディスプレイよりも少し高い位置にある棚に置いた場合の2つのパターンで計測している。
結果を見ると、2台に内蔵された通信モジュールは少なくとも筆者の予想よりずっと送受信能力が高いようだ。3Gの音声端末は内蔵アンテナが主流で、N902iXもその例に漏れないが、今回試用したVAIO type TとLOOX T70XNXは2台ともHSDPA通信モジュールがワンセグチューナーとの排他搭載となっているため、ワンセグ用アンテナの収容部がそのままHSDPA通信モジュール用アンテナに転用できているのだろう。
さすがに受信時の平均値はN902iXをPCよりも高い場所に設置した場合が優位となったが、VAIO type Tはこれにかなり肉薄し、最速のデータでは追い抜いている。送信速度の最速値では、VAIO type T、LOOX T70XNXともにN902iXを上回った。今回の比較対象はN902iXだけなので断定はできないが、「電波が弱い場所だと、音声端末は利用できても内蔵モジュールで通信できないことが多いのではないか」といった不安を持つ必要はなさそうだ。
定額利用では何ができて何ができない?
以上の検証結果から、VAIO type TとLOOX T70XNXに内蔵されたHSDPA通信モジュールは、通信速度や感度に不満がないことは分かったが、インターネットの利用には注意しなければならない点がある。これらで利用できるNTTドコモの定額データプランは、インターネットの用途を原則としてWebとメールに限定しているからだ。つまり、インターネットに接続できても、利用できないサービスやコンテンツも存在する。
そこで簡単だが、この2台で何ができて何ができないのかを簡単にチェックし、表にまとめてみた。ちなみに一般的なWebアクセスやメールの送受信(POP/IMAP4)に関しては制限なく利用できたので、表には含んでいない。
インターネット利用の検証結果 | ||
---|---|---|
ジャンル | サービス/コンテンツ | 結果 |
ストリーミング | YouTube | ○(停止あり) |
ニコニコ動画(RC2) | ○(停止あり) | |
GyaO | × | |
Yahoo!動画 | × | |
インターネットラジオ(WMA) | × | |
インターネットラジオ(RealAudio) | × | |
ファイル転送 | FTP | × |
IDiskマネージャ | ○ | |
mixistation(アルバムアップロード) | ○ | |
アップデート | Windows Update | ○ |
Google Update | ○(停止あり) | |
Apple Software Update | ○(停止あり) | |
Adobe Updater | ○ | |
VPN | Windows XP VPN(PPTP) | × |
TinyVPN(ポート番号443) | ○ |
定額データプランでは、基本的にストリーミングサービスを利用できないが、例外的にFlash Videoは再生可能としている。今やFlash VideoはWebサイトに一般的に使われており、排除するのは得策ではないとの考えもあるのだろう。
実際に利用できたのはFlash Videoを用いたYouTubeとニコニコ動画(RC2)のみで、GyaOやYahoo!動画といったメジャーな動画サービスを視聴することはできなかった。また、Flash Videoでも時間がある程度経過するとパケットが流れなくなることがあったので、無条件に利用できるわけではなさそうだ。動画に限らず、トラフィックとしては比較的小さいインターネットラジオを聴くこともできなかった。
ファイル転送では、FTPはやはり利用できなったが、ジャストシステムのオンラインストレージサービス「インターネットディスク」は専用ソフト「IDiskマネージャ」での転送も可能で、mixistationではアルバムへの画像アップロードも行えた。OSやアプリケーションの自動アップデートサービスも軒並み利用できたが、Google UpdateとApple Software Updateは途中からパケットが流れなくなることもあった。
VPNに関しては、Windows XPのPPTP接続は行えなかったが、HTTPSポート(ポート443)を用いたVPN接続は可能で、当然ながらVPN接続でのファイル共有やリモートデスクトップなども問題なく動作した。
今回試してみた限りでは、現状はWebやメールで一般的に使うポートのみを開放しつつ、ある程度はトラフィックを監視して利用制限を行っている一方、VPN接続などパケットの特定パターンを見て遮断するには至っていないようだ。
ただし、NTTドコモが現時点で保証しているのはあくまで文字、静止画ベースのWebアクセスとメールだけで、これ以外の用途に関してはいつ制限が設けられるのかは分からない。例えば、現在は利用できるポート443でのVPN接続も遮断できないわけではないだろう。この点には注意しておく必要がある。
どんな場所でもインターネットをフル活用したい人に最適
今回取り上げたVAIO type TとLOOX T70XNXの魅力は、通信カードやモジュールを別途装着することなく、全国の広いエリア(FOMAハイスピードエリア)で高速なインターネット接続が可能な点に尽きる。通信モジュールの内蔵によって、本体の携帯性が犠牲になることはなく、トレードオフになる機能はワンセグチューナーくらいで、ほとんど気にならない。いずれもモバイルノートPCとして定評がある製品なので、通信機能以外の部分で大きな不安を感じることもないだろう。
実際、無線LANやBluetoothが内蔵されたノートPCを携帯利用している人には理解してもらえると思うが、モバイル環境において通信デバイスがPC本体に内蔵されているメリットは格段に大きい。外出時に必要な通信モジュールを忘れて出かけてしまうことがあったり、破損の危険性を感じつつも通信カードを装着したままでノートPCをカバンに放り込んでいる人などには、身にしみて価値が分かるのではないだろうか。
価格については、VAIO type TがBTOで2万円増、LOOX T70XNXが標準モデルに比べて3万5000円増となっており、外付けの通信モジュールを新規購入するよりは確かに割高だ。ただし、カードスロットやUSBポートを埋めることなく、通信モジュールを内蔵して持ち運べることにメリットがあると感じる人にとっては、決して高い追加投資にはならないだろう。
とにかくモバイルノートPCでインターネットをフル活用したい人には、十分に検討の価値がある製品が登場したことになる。そろそろ来春に向けてPCのモデルチェンジの時期が近づいているが、今後もこうしたモデルの販売を継続してほしいところだ。
関連記事
- HSDPA対応の「VAIO type T」と「FMV-BIBLO LOOX T」を検証する(前編)
どこでもネットに高速でつながるモバイルノートPCは1つの理想形だ。HSDPA通信モジュール内蔵のVAIOとLOOXはこの理想にどれだけ近づけたのか? - FOMAハイスピード対応「VAIO type S/T」が正式発表
ソニーは9月25日、「VAIO type S」「VAIO type T」の直販メニューを拡充すると発表。「FOMAハイスピード」対応のデータ通信機能を追加可能になる。 - VAIOノート505が10年を経てついに復活か!?――「VAIO type T」
10周年記念モデルとして発表された「VAIO type T」が直販メニューのバリエーションを強化し、「VAIOノート505」を模した特別限定カラーが登場する。 - 富士通が「FOMAハイスピード対応LOOX T/U」を公開
今秋、富士通はFMV-BIBLO LOOX T/UのFOMAハイスピード対応モデルを発売する。これにより、モバイルPCの無線WANによるブロードバンド利用を推進していく。 - ドコモの定額データプラン、使う前に知っておきたいポイント
ドコモが10月22日から開始する「定額データプラン」は、3大携帯電話キャリアでは初めて、PCからのインターネット接続も定額で利用可能にしたサービスだ。しかし、その利用には制限事項も多い。 - ドコモがPCのデータ定額──月額1万500円でHSDPAを使い放題
NTTドコモが、PC向けのパケット定額プランを発表。下り最大3.6Mbpsのデータ通信に対応する「定額データプランHIGH-SPEED」と、送受信最大64kbpsのデータ通信が可能な「定額データプラン64K」を提供する。 - ソニーと富士通が「FOMAハイスピード」対応ノートPCを近日発売
ソニーと富士通は、NTTドコモの高速データ通信サービス「FOMAハイスピード」に対応したモバイルノートPCを発売する。 - 「華やかな」ノートPCも登場したVAIO 秋モデル
ソニーは9月3日、2007年秋モデルのVAIO新製品を発表。多くは構成を強化したマイナーバージョンアップだが、VAIO type Cが新デザインの筐体を採用してリニューアルした。 - Santa Rosaを導入したパワフルモバイル「VAIO type S」発表
ソニーは、春モデル以来となる「VAIO type S」の新モデルを発表。ようやくこのシリーズにも“Santa Rosa”が導入された。 - 店頭モデルにCore 2 Duoを搭載した「VAIO type T」発表
秋モデルのVAIO type Tでは、ユーザーからの要望が多かったCPU強化タイプの「VGN-TZ71B」が店頭モデルとして登場する。 - LOOX UがVista+ワンセグ+2色カラバリで店頭に登場――富士通FMVシリーズ
富士通は9月3日、FMV-DESKPOWER、FMV-BIBLO、FMV-TEOの2007年秋冬モデルを発売した。LOOX UのVistaモデルやFMV-TEOのBlu-ray Discモデルが目玉だ。 - 超低電圧版Core 2 Duoを採用したモバイル2スピンドル機――「FMV-BIBLO LOOX T」
前モデルでCore Duoを採用した富士通の「FMV-BIBLO LOOX T」。この秋はついにCore 2 Duoを搭載し、さらなるパフォーマンスアップを図る。 - 人気のUMPCがワンセグ/Vista搭載で店頭に登場――「FMV-BIBLO LOOX U」
今秋から晴れて店頭モデルに追加された「FMV-BIBLO LOOX U」。OSをVistaに変更するとともに、ワンセグ機能を搭載し、カラバリ展開も行う。 - Vista搭載の“新LOOX U”は何が変わった?――写真で見る「FMV-BIBLO LOOX U50X/V」
2007年秋のLOOX Uは、ワンセグ搭載、Vista対応、店頭と直販で計4色のカラバリを用意するなど攻めの姿勢だ。早速、新モデルをじっくり眺め回してみた。 - 日本でもようやく本領発揮か──CDMA 1X WIN対応FlyBookが離陸
ダイアローグ・ジャパンは、9月6日にKDDIのCDMA 1X WIN対応モジュールを組み込んだFlyBookを発表、同社の日本拠点となるショールームで簡単便利な使い勝手が紹介された。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.