移転・閉店・再編――激動の“アキバ2007”を振り返る:2007年アキバ総括 電気街編(2/2 ページ)
PC-Successやワンネス、LAOX ザ・コンピュータ館など、なじみのショップが姿を消す一方で、ソフマップや石丸電気は生き残りをかけて大規模な再編を行った。電気街の激動の1年間を振り返る。
今後の“アキバ”はどうなっていくのか
アキバは変化の激しい街と言われて久しいが、ここ1年の激しい動きを目の当たりにすると、どうしても先が見えない不安を覚える。
現状を踏まえたうえで今後のアキバの道筋を知るべく、2007年は「アキバPick UP!」と併行して、アキバ関係者へのインタビュー「5年後の秋葉原を歩く」を掲載してきた。さまざまな分野の識者の発言を借りて、少し乱暴だが、街が変化しうる大まかな選択肢を予想してみよう。なお、各人が語った総合的な意見や考えについては、各インタビュー記事を参考にしてほしい。
過去の連載記事
5年後の秋葉原を歩く 第1回:アキバの未来は「新宿」「池袋」「アキバ」
5年後の秋葉原を歩く 第2回:“メイドさん”の現在と未来
5年後の秋葉原を歩く 第3回:「自作PCに未来はない」
5年後の秋葉原を歩く 第4回:「自作PCの未来は、明るい」
5年後の秋葉原を歩く 第5回:「いまがフツーなんだと思う」――閉店したPCショップ元店長が語るアキバの未来
5年後の秋葉原を歩く 第6回:行政はアキバをどうしたいのか――「前例のない街」に挑む千代田区
5年後の秋葉原を歩く 第7回:「5年後にようやくアキバは変わり始める」――千代田区議会議員が語る秋葉原の未来
5年後の秋葉原を歩く 第8回:「アキバは圧縮し、さらに密度を上げていく」――ソフマップが描く未来像
5年後の秋葉原を歩く 第9回:アキバが世界の“聖地”になる日――観光都市として見る秋葉原
現在、秋葉原の街を歩いていても肌で感じられるのが観光地化の流れだ。日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)の田所氏は、「我々の推計値では、秋葉原だけの外国人来訪者は2006年で約56万人くらいです。いまから5年後にはまず間違いなく倍増されて、120万人に達していると思います」と語る。
千代田区議会議員の小林たかや氏も「以前に比べて、観光地化していることは確かです。観光客ありきの商売が出てくる可能性も高い」とみており、これから数年は街の訪問者はさらに増えていくと考えられる。
一方で、メイド喫茶「くろすろ〜ど」の店長が「行政のさじ加減で変わってくるでしょう。街の再開発によって、オフィスビルの数が増えていますが、そうなるとアキバの客層も変わってきます。サブカルチャー系の産業が成長しにくい街になるでしょうね」と語るように、ビジネス街化が進むという懸念もある。
ただし、その変化がすべてにおいて悪影響を及ぼすわけではない。ソフマップの米澤氏は「TXにより東京とつくば方面を結ぶハブとしての機能が高まり、秋葉原クロスフィールドや旧日通ビルの影響でビジネス街としての色も出てくるでしょう。それらを含めて、今よりも街の価値が高まっていると思います」とビジネス街化の肯定的な面についても言及している。
アキバの“行政”である千代田区は「行政としては多様な用途を想定してます。用途を掲げながらも、機能を行政で制限するということではありません」と話す。このスタンスで街を見守り続けるのであれば、東京工業大学の小山氏が語る「秋葉原は消費者主導で進化していくめずらしい街。いままでのカラーを残しながら、変化していくと思います」というコメントが、一応の答えとなりそうだ。
PCパーツショップの将来はどうだろう。秋葉原はWindows 3.1の時代から自作PCの街として栄えてきたが、USER'S SIDE 小林氏は「Windows 95が登場した前後に“自作は安い”と知れ渡り、安売り攻勢を仕掛ける店が進出してきました。そこからおかしくなり、まともに利益がとれる業界ではなくなってしまった。もう自作PCに未来はないですよ」と、将来を悲観する。
しかし、「Windows XPが登場してまもなくの2002年ごろから、当店を含めて安売りから方針を変えるショップが増えてきました。価格競争をしていると先がないと、業界全体で気づいたんでしょうね」(ツートップ秋葉原本店 柿田氏)と、低迷期を経験したのちに、生き残りをかけてさまざまなショップが方向転換を行っている。
そうして存続したショップは、「今後、PCパーツショップがものすごく儲かるということはないんですが、PCパーツは必要なものなので、なくなることはない。それを踏まえて地に足のついた経営をするようになるのではないでしょうか」(U&J Mac's plus店長 芳野氏)と、“明るくも暗くもない未来”を予想する声もある。
ツートップ秋葉原本店は「ユーザーは趣味でマシンを組むのだから、店は売れ筋だけでなく、多彩なパーツを用意すべき。面白いデモ機も展示して、自作PCの楽しさを伝えていく店が増えると思います」と、5年後のアキバを語った。そうした“地に足のついた”サービスを提供する店舗が2008年には増えていくのかもしれない。
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