中国で“デュアルコア”なCeleronを探す……はずだった(後編):山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
連載第1回目で購入したレノボ製PCをアップグレードするべく、中国内陸都市の電脳街に突撃した筆者たち。当初の目的「日本未出荷のデュアルコアCeleron」を狙うも、あっさり方向転換を迫られたのであった。
パーツショップでPCをアップグレードしてもらった
われわれは、同じ電脳街の別ビルにある本店へ女性店員に連れられていった。本店は2階建ての、例えるなら“長屋”のような建物の中にあった。本店に着くなり、そこでもお約束のように円卓に座らされると、女性店員は本店のスタッフにパーツを交換したいという旨を説明する。落ち着いて見回してみると、最初に訪れた店以上に本店にはAthlonとYestonの製品や販促品で埋め尽くされている。
本店のスタッフが来るなり、(今度は)慣れた手つきでレノボ製PCのケースを開け、公道にそれを持っていき(おいおい)、ブロアーでケース内部の埃を飛ばす(これこれ)。通行人が通るが、店員が通行人を気にすることもなければ通行人も埃を気にするそぶりを見せない(あれあれ)。ケース内部の清掃が完了すると、再び円卓にPCを置いて分解を始めた。
本店で見かけたスタッフは分解を行う技術担当の若い男性が2人と販売員が3人(男性1人と女性2人)。どうも販売員の父親らしい老人が1人いて、店の仕事を時々手伝っているが、基本的には日のあたる場所で椅子に腰掛けて気持ちよさそうに昼寝をしている。それに店内でウルトラマンのお面をつけて走り回る幼児が2人(男の子と女の子)。子供らはスタッフがPCを組み立て始めると脇に立ってじっと見ている。将来の夢はお父さまやお母さまのように電脳を組み立てることです、とか思ってるかもしれない。
途中でスタッフの手が止まった。「ケースのスイッチが特殊だから、電源スイッチがそのままじゃ使えないよ」 筆者が「任せます」と答えると、彼らはケースから伸びたケーブルを裂き(おいおいおいおいおいおい)、店の奥から持ち出してきた細いチューブをチョキチョキと切りだす。できたマカロニのようなものを裂いたケーブルに巻きつけてライターであぶり、ゴムを溶着させてケーブルに絶縁処理を施した。こうしてできたものをマザーボードのコネクタに差し込んで、それから電源スイッチに対応するピンをショートさせて火を入れた。
「できた。ついてきて」。彼らはそういうと筆者を“長屋”の2階に連れて行った。2階の作業場では、PCをディスプレイに接続して動作確認を行う。客に見せるところでないためか、部屋にあるソファは汚れていて、一緒にいた中国の知人も座るのをためらっていた。
PCケースのスイッチは動かないが、それ以外に関しては問題なく動作し、オーバークロックされていることを確認すると、スタッフは作業場の奥から小型スイッチを持ってきて、ケースを開けなくてもPCが起動できるようにリセットスイッチと電源スイッチを自作してくれた。「緑のスイッチが電源、赤のスイッチがリセットボタン。絶対に水をかけないように」
こうして、筆者のメインPCはAthlon X2 5000+ BlackEditonマシンに生まれ変わった。技術スタッフ1名を2時間拘束して工賃はなんとタダ。オーバークロックは自己責任でなく、ショップのサポート対象となるようで「問題があったら来てください」とのことだった。日本よりパーツは若干安く、人件費はそれ以上に安く、そして自己責任であるはずのオーバークロック設定を店が保証してくれる。中国のパーツショップ事情は、実に「おおらか」で「懐が深い」のであった。
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