Nehalemに向けてCentrino 2で足場を固めるインテル:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
日本で7月16日に発表された「Centrino 2」では何が変わり、何が変わらなかったのか。ポイントを改めて整理しよう。
ハードウェアによるVC1とAVCの動画再生アクセラレーション機能をサポート
さて、グラフィックスを内蔵したIntel GM45では、当然グラフィックス機能も強化されている。Intel Graphics Media Accelerator 4500MHD(GMA4500MHD)と呼ばれる第5世代のグラフィックスコアで、Intel GM965のアーキテクチャの発展型となっている。計10個の実行ユニットを持っている点はデスクトップPC向けのG45と変わらないと思われるが、コアクロックがG45の800MHzから533MHzに落とされている。それでもGM965の400MHzからは引き上げられており、インテルは前世代のプラットフォームに対し1.7倍の3Dグラフィックス性能向上が実現したとしている(ただし、これはCPUやメモリも含めたプラットフォームとしての比較であり、純粋にグラフィックス性能を比較したものではない)。
さらに動画再生支援機能という点では、従来のMPEG-2に加え、ハードウェアによるVC1とAVCの動画再生アクセラレーション機能が追加された。これにより外付けグラフィックスチップを用いることなく、内蔵グラフィックスのみでBlu-ray Discの再生が可能になる。
こうしたグラフィックス機能の強化に伴い、グラフィックスメモリに割り当て可能なメモリ量も増加している。GM45の数字は本稿執筆時点で発表されていないが、同じグラフィックスコアを持つG45では829Mバイトとなっている。GM965チップセットのGMA3100が384Mバイトまでだったのに比べ2倍以上であり、チップセットがサポート可能なメモリ量が8Gバイトまで拡大されたことも納得できる。
再起動せずにパフォーマンスを切り替えられるSwitchable Graphics Technology
こうした内蔵グラフィックス機能の直接的な機能向上に加え、GM45では内蔵グラフィックスと外付けGPUチップを切り替えて利用する「Intel Switchable Graphics Technology」がサポートされた。同様なアイデアはソニーのVAIOが一部機種でサポートしていたが、切り替えにはリブートが必要であった。Intel Switchable Graphics Technologyではリブートすることなく、AC駆動とバッテリー駆動でダイナミックに切り替えたり、ユーザーが利用するアプリケーションに応じて切り替える、ということが可能になる。ちなみにソニーは、この技術について、Intel、ソニー、NVIDIAの3社が協同して開発した、というむねの発言をしている。
このMontevinaで採用される無線LANモジュールのWiFi Link 5000シリーズには、サポートするMIMO機能により、5300シリーズ(3×3 MIMO、3つの無線機に3つのアンテナ)と5100シリーズ(1×2 MIMO、1つの無線機に2つのアンテナ)に大別される。前者は最大450Mbps、後者は300Mbpsが最大データ転送速度(理論値)となる。いずれのシリーズにも通常のMiniカードサイズと、ハーフMiniカードサイズの2種類が提供されるほか、5100シリーズには802.11n(ドラフト)のサポートがない製品も用意される。
これに加えて、5300シリーズにはWiMaxを統合した5350も提供されると発表されているが、現時点で入手することはできない。提供時期については、「サービスインのタイミングに同期して」としており、具体的な時期が明らかにされていないからだ。
こうした必須コンポーネントに加えて、Montevinaでは「Intel Turbo Memory」に2Gバイトのモジュールが追加される、といった強化が行われている。しかし、全体に新機能は少なく、65ナノメートルプロセスへのシュリンク(ノースブリッジのみ)とグラフィックス回りの強化が目立つ程度だ。
インテルは次のNehalem世代で、FSBアーキテクチャをやめ、メモリコントローラ内蔵の道へ向かう。これにより従来のチップセットとは、プラットフォーム的に断絶する形となる。Montevinaは、全く新しいプラットフォームへのジャンプを控え、しっかりと足場を固めた、という印象だ。
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