次元を超えた画像解析技術――「Deep Zoom」と「Photosynth」を体験する:Lookup! せんせーしょん(4/4 ページ)
超ズームの次の一手は想像のななめ上どころか、次元を超えていた。日本の誇る文化をモチーフにした実例で、Photosynthの魅力に迫る。
マイクロソフトが目指す「ソフトウェア+サービス」
現在、マイクロソフトは「ソフトウェア+サービス」という標語を掲げている。1980年代の構造化プログラミングからオブジェクト指向へ、そして1990年代のコンポーネント指向を経て、現在のSaaSに代表されるサービス指向へと至った。その次の取り組みがソフトウェアとサービスを組み合わせた「ソフトウェア&サービス」である。
言葉だけを取り出してみれば目新しくもないが、仮想化技術、クラウドコンピューティング、ブロードバンドネットワークなど、「いつでもどこでも利用できる」という、より自然な形でのサービスを提供する技術は着々と成熟しつつある。
さらにネットワーク上のサービスとローカルのソフトウェアを連携させ、実際の処理をローカル上のソフトウェアが行っているのか、ネットワーク上のサービスが行っているのか分からないほど融合させてしまう。それが「ソフトウェア&サービス」というわけだ。
それに加え、ネットワークを経由したサービスといえどもユーザーインタフェースの質を落とさず、むしろ向上させるための取り組みもさかんに行われている。現在、RIA(リッチインターネットアプリケーション)はマイクロソフトが非常に注力している分野であり、単に「使いやすい」というだけにとどまらず、ユーザーが「心地よい」「気持ちいい」「面白い」と感じる、直感的な情報理解を可能にするインタフェースを目指し、「ユーザーインタフェース」を「ユーザーエクスペリエンス」に変えようという努力が続けられている。その1つの例がDeep Zoomであり、Photosynthというわけだ。
旅行に出かけたときなど、広大な風景や圧倒的な存在感のある建築物を眺め、その感動を残そう、あるいは伝えようと写真に収めることはよくあるだろう。しかし、そのスケール感をうまくカメラに収められずにがっかりすることも多いのではないだろうか。特にレンズ交換のできないコンパクトカメラでは人間の視野に比べてはるかに狭い範囲でしか撮影できない。その問題を解決する方法の1つにパノラマ撮影(合成)がある。複数の写真をつなげることで擬似的な広角画像を実現するものだが、どうしてもライブ感が薄れ、記念写真的な印象が残ってしまう。
ビデオ撮影で視点を移動させることで解決できる部分もあるが、動画の場合は早送りや巻き戻し、一時停止を駆使しなければ撮影者のペースで見るしかない。Photosynthはこの問題に対する新しいアプローチでもある。もちろん、Photosynthが完全に優っているわけではない。まだまだSynth作成に時間がかかりすぎるし、誤認識された場合のマニュアルでの修正手段もない。実際に操作してみると思い通りに写真のズームができないことも少なくない。
だが、それでもPhotosynthには「こんなことができちゃうの?」という驚きとともに、いち早く未来に触れたような期待感を感じずにはいられない。Photosynthのストレージ容量は20Gバイトだが、1000枚以上の写真を費やした今回のSynthでも約0.5Gバイト程度であることを考えるとかなりの大容量だ。現状では無条件で全世界に公開されてしまうという制限はあるものの、興味を持ったら是非、試しに1つ作ってみてほしい。自分が撮影した写真なら結果は分かっているはずなのに、思わず「すごいなぁ」と言ってしまうはずだ。
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