これぞ新世代のスタンダードノートか?――「HP ENVY6-1000」にUltrabook普及のカギを見た:15.6型サイズで厚さ19.8ミリ!(3/3 ページ)
日本HPが発表した15.6型Ultrabook「HP ENVY6-1000」は、今後メインストリーム向けPCのスタンダードになると同社はアピールする。その理由は何か? 実際に使って確かめてみた。
Ultrabookとして標準的な性能、3Dゲームもなんとか動く
ストレージ以外の基本スペックは、CPUがTDP(熱設計電力)17ワットのCore i5-3317U(1.7GHz/最大2.6GHz、3次キャッシュ3Mバイト)、メモリが8Gバイト(4Gバイト×2、PC3-12800)、グラフィックスがCPUに統合されたIntel HD Graphics 4000、プリインストールOSが64ビット版Windows 7 Home Premium(SP1)となる。Ultrabookでは珍しく、メモリを8Gバイト搭載しているのはうれしい点だ。
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは、HDDを搭載するUltrabookとしては標準的といえる。キャッシュ用SSDの効果が反映されないため、プライマリハードディスクのスコアが低くなり5.9となった。それ以外のサブスコアは7程度と優秀で、Windows 7環境でストレスなく作業できるパフォーマンスを備えていることが分かる。
ベンチマークテストは、総合ベンチマークテストのPCMark 7、PCMark Vantage(x64)、3D系ベンチマークテストの3DMark06、ストリートファイターIV ベンチマークなどを行った。CPU、データストレージ、グラフィックスといったスペックが共通する(ただし、こちらのメモリ容量は4Gバイト)HPの14型Ultrabook「HP ENVY4-1000」と、富士通の15.6型ノートPC「FMV LIFEBOOK AH77/E」(2011年秋冬モデル)のスコアを併記する。
FMV LIFEBOOK AH77/Eの基本スペックは、CPUがCore i7-2670QM(2.2GHz/最大3.1GHz/3次キャッシュ6Mバイト)、メモリが8Gバイト(4Gバイト×2、PC3-10600)、ストレージは750GバイトHDD(5400rpm)、グラフィックスはCPUに統合されたIntel HD Graphics 3000を利用し、OSは64ビット版のWindows 7 Home Premium(SP1)となる。
FMV LIFEBOOK AH77/Eと比較すると、スコアは全体的にHP ENVY6-1000が高く、特に3D系ベンチマークの差が大きい。Intel HD Graphics 4000が搭載するハードウェアエンコード機能「Intel Quick Sync Video 2.0」の影響が大きいと思われる。HP ENVY6-1000は、液晶ディスプレイの解像度が1366×768ドットと高くないこともあって、描画品質を低く設定すれば、多くのゲームタイトルに対応できそうだ。
高負荷時はやや熱を感じる
ENVY6-1000は、ベンチマークテストを実行しているときなど、システムに高い負荷がかかると、底面奥側にある排気口から温かい排気が吹き出す。PCMark 7を実行している最中の騒音レベルを計測したところ、41.5デシベル(環境騒音32デシベル、本体手前5センチの位置で計測)と高負荷時の動作音もうるさいとは感じなかった。もちろん、Webブラウズなどの普段使いにおいては、騒音はまったく気にならない。
ファンが回るような高負荷時には、キーボード左側が熱を持つ。室温約25度の環境下で、PCMark 7を実行した直後に表面温度を測ったところ、キーボード左側で約39度、キーボード左上にある電源ボタン付近は最高で44度まで温度が上がった。もちろん普段使いではここまで温度は上がらないものの、3Dゲームで遊ぶようなときには注意したい。
搭載するバッテリーは4セル式で、ユーザーによる着脱には対応しない。バッテリー動作時間の公称値は約8時間で、実動作時間の測定は、BBench 1.01(海人氏・作)で行った。「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」で、PCは無線LANに常時接続、電源プラン「HP推奨」(バランスと同様)という設定でテストを行ったところ、バッテリー残量7%で休止状態へ移行するまで、6時間54分だった。
公称値の約8時間には及ばないが、7時間近く動作するので、家の中で持ち歩いて映画や音楽などのコンテンツを楽しんだり、SNSを使う分には、バッテリーの心配をすることはなさそうだ。
PCの入門機としてふさわしいUltrabook
HP ENVY6-1000の想定実売価格は約9万円。オフィススイートを搭載せず、スペックも標準的であることを考えると、売れ筋の国内メーカー製15.6型ノートPCと同等の価格と言える。仕事用にも使いたいという人にはOffice Professional 2010(SP1)や外付けDVDスーパーマルチドライブが付属するオフィスモデルも用意する。こちらの価格は約12万円となる。
「これはちょっと大きすぎる」「家の外に持ち出すかもしれない」という人には、14型ワイド液晶ディスプレイを搭載する「HP ENVY4-1000」もいい。HP ENVY6-1000より、ボディが一回り小さく、デザインやインタフェース、スペックはほぼ共通する(メモリ容量は4Gバイトとなる)。こちらは直販限定で6万9930円(税込み)と、HP ENVY6-1000よりもさらに2万円ほど安い。もっと低予算でPCを購入したい人や、モバイル用途も視野に入れたい人は、こちらのモデルも検討するといいだろう。
使いやすくてコストパフォーマンスがよいHP ENVY6-1000は、インテルが提唱するUltrabookのコンセプトに合った製品といえる。全体的に無難な仕様で特徴がないとも言えるが、それはUltrabookでの話だ。この製品がライバルとするのは、一般的な売れ筋の15.6型ノートPCだろう。
このマシンは、普段PCをあまり使わない人に、起動の速さや持ち歩きやすい薄型のボディといったUltrabookの恩恵を味わってもらうにはちょうどよく、「家でちょっと使うくらいのPCがほしい」というような、初めてPCを購入する人に向けた入門機にふさわしい。こういったUltrabookのメリットが当たり前のものとして多くの人に受け入れられたとき、スタンダードなA4ノートPCはすべてUltrabookになるのかもしれない。
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