2万円を切る8コアな“Piledriver”の破壊力を「FX-8350 」で知る!:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
AM3+プラットフォームに新たなCPUが登場。「Bulldozer」から「Piledriver」に進化したFXシリーズの最上位モデルで性能をチェックする。
FX-8150から1割強アップの性能となるか?
FX-8350の性能検証では、比較用としてBulldozerコアで最上位モデルの「FX-8150」と、インテルのCore i5-3570K(3.4GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.8GHz)を用意した。AM3+プラットフォーム対応のマザーボードには、ASUSの「SABERTOOTH 990FX R2.0」を用いている。
システムメモリは、DDR3-1866対応のG.Skill F3-14900CL9Q-16GBXLを組み込んだが、DDR3-1866では安定しなかったためDDR3-1600に落としてテストしている。この点、FXシリーズの2製品に関してはCPUのサポートする上限でのテストではなくなっている。そのほかの機材に関しては、従来のCPUで行った性能評価に準じている。
PCMark系は、CPU、メモリなどの性能を個別に測定するPCMark 05と、ユーザーの利用場面を想定した性能を検証するPCMark Vantage、PCMark 7を使っている。いずれのテスト結果でも、FX-8350はFX-8150に対しスコアが上回っている。ただし、Core i5-3570Kに対しては大きな差を付けられている。特にPCMark VantageにおけるGamingで差が大きく、FX-8350のスコアはCore i5-3570Kの半分程度だった。
次に、SandraでCPUの演算性能やメモリの性能を確認してみた。Processor Arithmeticを見ると、FX-8350はFX-8150に対しておよそ1割程度スコアが向上していた。このスコアでは、Core i5-3570Kを上回っている。Processor Multi-MediaでもFX-8150に対してほぼ1割アップだ。Core i5-3570Kと比較して整数演算(Integer)は高いが、倍精度で下回り、浮動小数点演算と倍精度の浮動小数点演算は低かった。ただし、これはBulldozer系アーキテクチャの内部設計的な傾向だ。.NET系の2つのテストも同じ傾向を示した。暗号化処理では、AES256がFX-8150からほぼ変わらなかったのに対し、SHA256は約1割向上した。
システムメモリに関しては、FXシリーズにおける動作モードをDDR3-1600にしたことが影響し、低いスコアにとどまった。BandwidthではCore i5-3570Kに劣ったが、DDR3-1866であれば、かなり近いところまで追い上げただろう。FXシリーズで比べると、ほとんど差がないように見える。Cache and Memoryでは、8Mバイトより少ない容量の範囲でFX-8350はFX-8150より高クロックな分だけスコアを伸ばしている。コア内部のキャッシュにおけるレイテンシは、Piledriverで特に変わったというデータは出ていない。
CINEBENCH R11.5では、Multi CPUでFX-8150に対し15パーセントほどスコアを伸ばしたことに加え、Core i5-3570Kよりも高いスコアとなった。ただし、Single CPUではスコアを伸ばしつつもCore i5-3570Kには及ばない。
MediaEspressoでのトランスコード処理では、FX-8150の約1割強ほど短時間で処理を完了できた。Core i5-3570Kよりも短時間で済んでいる。ただし、Trinityのようにハードウェアエンコーダを実装しているわけではないので、これ以上になることはない、というのがFXシリーズの弱点だ。
3DMark 11で、FX-8350はFX-8150からPerformance設定で500ポイントほどスコアを伸ばした。さらにCPUが大きく影響するPhysicsテストでは、FX-8150に対し約1000ポイントほど向上している。ゲームタイトルにおける影響は、バトルフィールド3とJust Cause 2でテストした。バトルフィールド3は最高画質、Just Cause 2はディテールに関する項目をHighに設定したうえで、4xAA/8xANに設定している。
まず、GPU負荷の高いバトルフィールドでは、1680×1050どっとから2560×1440ドットまではどの環境もほぼ同じようなfpsで、この部分ではGPUがボトルネックになっているとみられる。一方で、1366×768ドットではCore i5-3570K>FX-8350>FX-8150の順で最大20fpsの差が付いた。
Just Cause 2は、1366×768ドットから1920×1080ドットまで、各環境ごとに同じようなfpsになるのが特徴だ。GPU以外の部分、つまり、CPUがボトルネックになっていると考えられる。スコアは、Core i5-3570K>FX-8350>FX-8150の順で、FX-8350はFX-8150よりも10fpsアップといったところだ。
消費電力では、アイドル時、高負荷時ともにFX-8150と変わらなかった。特に高負荷時においては、Turbo CORE Technology 3.0がかなり細かく消費電力の調整をしているようにみえる。一方で、Core i5-3570Kに対しては、アイドル時で10ワット強、高負荷時で80ワット強も差がでている。
2万円でおつりが戻ってくる「8コア」で「定格4GHz」なCPU
FX-8350は、FX-8150に対しパフォーマンス面では1割強の向上をみせた。ベースは同じBulldozerアーキテクチャであり、プロセスルールも同じで、その改良版としては、およそこの程度の性能アップが妥当なところだろう。Core i5の最上位モデルに対しては、消費電力を気にしないのであれば太刀打ちできるところまで伸びてきている。
実売価格は、Core i5-3570Kよりわずかに安いあたりになるとみられる。スペックで見れば、その価格で8コア(8コアといって適切かどうかは疑問だが)で定格4GHzのCPUが手に入るわけで、“スペック表”的なインパクトは大きい。オーバークロックが伸びやすいアーキテクチャということもあり、オーバークロッカーには面白いCPUとなるだろうか。
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