「コンセプトモデル」が発売に至らない3つの理由:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
コンセプトモデルと称してイベントでお披露目される新製品。これらはさまざまな思惑で会場に持ち込まれ、そもそも発売を前提としていないケースもあるのだとか。
最初から出す気がまったくないパターンも
さて、ここまで見て来たように、発表会でお披露目される際にはさまざまな思惑が絡んでいる。こうした結果、発表会でお披露目されながら最終的に発売に至らない製品には、おおむね3つのパターンが存在する。ざっとまとめて本稿の締めとしよう。
1つは、発売予定はあったものの、発表会での反響がなく、製品化が見送られるケース。マーケティング目的で出展したが反応が芳しくなかったり、あるいは直接的に「うーん、これはあまり欲しくないですね」というリアクションがあったため、マイナスに作用してしまうケースだ。これはまあ仕方ない。むしろ傷口が深くなる前に判断できてよかったとするべきだろう。
もう1つは発表会でもそこそこの反響があり、その後も試作検討を重ねたが、完成に至らないパターン。前回の連載でも触れたが、デザイン試作や機能試作の段階にまでは到達したのだが、その後折り合いがつかず、発売を中止するというパターンだ。
一言で言ってしまえば人前に出す段階が早すぎたわけだが、発売中止が決まるのは発表会から数カ月たってからであり、その時点では意外と問題にならないことも少なくない。話題のサイクルが早いPC周辺機器まわりの業界だからこそ起こりうるパターンである。
3つめは、そもそもコンシューマー製品として最初から出す気がまったくなく、発売されないことが最初から織り込み済みというパターンだ。これは競合他社への牽制を目的としている場合に起こりうるケースで、競合他社が過剰に意識してくれればそれでよしというケースだ。
また、法人用途やOEM用の顔見せが目的の場合、コンシューマー向けとして発売に至らなくとも、実はその裏で何十万台という取引が成立している場合もある。一般向けに発売に至らなかったから失敗かというと、まったくそんなことはない。何を目的に発表会に持ち込まれたかによって、成功なのか失敗なのかという判断は大きく異なるわけで、「発売されなかった=失敗」と判断するのは早計だ。
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