Apple Watchが腕時計とウェアラブルの概念を変える:林信行による世界先行レビュー(5/5 ページ)
明後日、4月10日金曜日からの予約開始にあわせて、ついにApple Watchの展示がスタートする。日本ではアップルストア銀座や表参道、そして新宿の伊勢丹に新しくできるApple Watch Storeにて展示が行われる予定だ。どうしてもウェアラブルというくくりにされがちな本製品の本当の魅力を、これまで1週間に渡って製品を試用してきた林信行が解説する。
文字盤の種類は200万通り
さて、Apple Watchを購入してきて、iPhoneとペアリングをすると、時計の画面が表示される(このペアリングのやり方もかなり斬新で面白い。写真の説明を参照)。
この時計の画面をプレス、つまり強く押し込むとゴツっという鈍い感触の後、カスタマイズ状態に入る(画面の長押しではない。Apple WatchのRetinaディスプレイは感圧式で、ただのタッチと強めに押し込んだ操作を区別している)。
フェースの基本形は、3つの文字盤が美しい「クロノグラフ」、文字盤が蛍光色で塗られた「カラー」、6つの情報表示ブロックで構成された「モジュラー」、文字盤のディテールの細かさなどが調整可能な「ユーティリティー」、アニメーションがかわいらしい「ミッキーマウス」時計、文字盤に数字がない「シンプル」、羽ばたくチョウか泳ぐクラゲか花が開く瞬間の映像に心が癒やされる「モーション」、太陽の運行が一目で分かる「ソーラー」、地球や月、太陽系を俯瞰(ふかん)して楽しめる「アストロノミー」の9種類だが、ここから色をカスタマイズしたり、コンプリケーションと呼ばれる追加情報をカスタマイズすることで合計200万通りのフェース(文字盤)が選べる。
9つのフェースは、どれも吟味されており、ミッキーマウスのかわいらしい足の動きひとつにもこだわりが感じられる。最も楽しめるのはアストロノミーだろう。地球や月を表示させてタッチ操作やデジタルクラウンでぐりぐりまわせるだけでなく、右下の太陽系のコンプリケーションをタッチすると太陽系の星の現在の状態が分かり、これを2度タッチするとどれがどの惑星かをきれいなアニメーションで教えてくれる。
くらげや花のアニメーションも美しく1つ1つが映像作品のようで見とれてしまう。どのフェースで使うか悩む人も多いと思うが、実は1つに決めなくても、気分にあわせていつでも簡単な操作でカスタマイズして気分の変化を楽しむことができる。
Apple Watchを試用して1週間ほどになるが、すべてが想像を超えていた。
アップルだから、もちろん凝って細かいところまで作ってくるだろうとは予想していたが、ここまでの気合いの入りようだとは思いもつかなかったし、それらが組み合わさることで、ここまでの心地よさが生まれることにも正直、驚かされた。
文字では表現が難しいが、通知などの時に、振動とともに鳴る澄んだキーンという音など、1つ1つの効果音もシンプルかつ上品でよく考えられている。
ネットなどでApple Watchに対する不安としてよく見かけるのはバッテリーの動作時間だろう。これについても、朝の9時から深夜まで撮影が続いた日はさすがに途中で30分ほどの充電を行ったが、それ以外の生活ではバッテリー切れで困ったことはない。
そもそもApple Watchではできることが限られているので、1回あたりのインタラクション(情報を見たり、操作をしたり)の時間が短い(長時間操作しようとしても腕が疲れてしまうのもある)。
バッテリーの持ちで言えば、一緒に持ち歩くiPhoneのほうが確実に持ちが短い。寝る前、iPhoneと一緒に充電するのを忘れなければバッテリー切れで困ることはほとんどないと思う。
1人1人の個性に合わせて生活を変える
Apple Watchを使い始めたことでiPhoneを使うことがなくなったか、と言えばそんなことはない。しかし、わざわざポケットに手を伸ばしてiPhoneを取り出してくる必要が確実に減ったのは確かだ。
筆者は特別にメールやメッセージの受信数が多いこともあるかもしれないが、印象としては通知5回につき4回はApple Watchで済むようになったと思う。これまではApple Watchで済ませていた4回分もiPhoneを取り出して確認し、せっかくiPhoneを取り出したからと返事を書き始め、ついでにFacebookやTwitterの最新の投稿をはじめ、メールを再チェックして、ふと気がつけば5〜10分ほどスマートフォンを使っていたのではないかと思う。
それが腕をあげて「あ、この内容なら返事はあとで落ち着いた時に、まとめてiPhone(あるいはパソコン)から行おう」とiPhoneをポケットにしまったままにしておくことが増えたのだ。
その一方で電話の取り逃しは減った。これまではiPhoneをバッグの中にマナーモードのまま入れっぱなしにしていて、電話が鳴っていても気がつかずにいることがあったが、今ではしばらくすると腕元でApple Watchが、運動をしていても分かるくらいのはっきりとした振動で教えてくれるのだ。
人によってライフスタイルも違えば、メッセージの受信量などの環境も違うが、筆者に関して言えば、1週間で実感できる変化を感じ始め、いつも悩まされている腰痛も少し軽減したような気がする。Apple Watchを使うことで起きたライフスタイルの変化については、別記事でもう少し詳しく紹介しよう。
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