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「Apple Watch」の圧倒的な完成度とそれでも拭えない不安本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)

群を抜いた完成度で登場した「Apple Watch」だが、これをもって「スマートウォッチというジャンルが確立する」とまでは確信できていない。

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それでも気になる「将来性」に関する不安

 まとめに入りたい。

 「腕時計としてのApple Watch」は、予想以上に完成度が高かった。シンプルなエラストマーバンドの「Apple Watch Sport」はともかく、通常の時計にはあまり使えないマグネットを用いたミラネーゼループ、レザーループといったバンド、それに素晴らしい精度で組み上げられたリンクブレスレットは、純粋に上質な腕時計としての装着感を提供してくれる。

 時計としてのデザインや存在感は好みにもよるだろう。裏面形状の工夫などで腕への当たりがやさしいと思う半面、シンプルなApple Watchのボディラインを「つまらない」と感じる人も少なからずいると思う。

 しかし、これまでのスマートウォッチのように、「スマートウォッチだから我慢して装着する」ような製品ではない点は画期的だ。

 惜しまれるのは、盤面デザインの豊富さやカスタマイズの幅で、確かに組み合わせとしては多いものの、もう少しバリエーションが増えてもよいと思う。現在、ユーザーはもちろん、デベロッパーにも盤面デザインの拡張は許していないとのことだが、将来、盤面デザインツールが提供されることを望みたい。

文字盤のデザインはいくつかのバリエーションが用意されており、カスタマイズも可能だが、今後のさらなる拡張を望みたい

 一方、腕時計として高いレベルの製品ではあるものの、エレクトロニクス製品として(時計としてのデキに見合うだけの)成熟した製品と言えるかどうか? というと、まだそこには漠然とした将来性への不安が残る。

 今回、アップルはS1プロセッサというApple Watch専用チップを開発、搭載した。S1はシングルチップのプロセッサではなく、メインプロセッサに加えてメモリやストレージ、センサー、通信デバイスなどを統合したモジュールだ。

 このS1プロセッサは、iOSデバイス向けのApple A4〜A8プロセッサなどのように高性能化されていくと考えられる。そうしたとき、果たしてWatch Kitがどのように機能向上し、性能や省電力性が高まっていくのか。今のところ、まったく分からない。

 製品の買い換えサイクルが読みやすいスマートフォンとは異なる「腕時計」というジャンルの中で、将来、S1プロセッサを用いたApple Watchをどう扱っていくのか。あるいはS1がS2になったとき、アップグレードすることは可能なのか。アップルはアナウンスをしていない。

 実際に自分のApple Watchを入手し、使い始めた感覚で言えば、そう簡単に陳腐化しないよう、第1世代製品のプラットフォームはスマートウォッチとしては余裕を持たせて作ってあり(メモリは512MバイトのSRAM、フラッシュメモリは8Gバイト)、しばらくの間はストレージ容量やバッテリー持続時間など互換性に問題のない範囲での改良が続くのではないか……と予想する。

 が、これはあくまで筆者が感じた推測であって、アップル自身は将来について何ら保証をしていない。「短期間で鮮度が落ちる」のはデジタル製品の宿命とはいえ、ここまで徹底して「腕時計」として作られている製品だけに、腕時計という製品ジャンルからイメージする鮮度が長期間落ちないよう、アップルがどう工夫するのか、将来のビジョンについてはもう少し語られてもよいように思う。

 一方、まだアプリのサポート状況は完璧ではないが、販売初期の段階でAndroid Wearを大きく越える受注状況を考えれば、しばらくの間、さまざまな提案を楽しむことができそうだ。

 また心配されたバッテリー持続時間も、筆者の使い方の範囲であれば1日半は余裕で使えており、充電さえできるならば困る場面はなかった。おそらく2年ぐらい毎日使えば不満が出てくるだろうが、すでにバッテリー交換サービスについてプログラムを発表済みだ。バッテリー容量が80%未満にまで劣化した場合、製品の保証期間、あるいはApple Care+の適用期間中は無料、対象期間外の場合も9800円でバッテリーを交換できる。

懸念されたバッテリー持続時間だが、筆者の使い方の範囲であれば1日半は余裕で使えている。マグネット式充電ケーブルは、本体裏面へ手軽に装着して充電できる(写真はミラネーゼバンドを装着した様子)

 いまだ「腕時計型ウェアラブル」というカテゴリに関して、明確な将来像をApple Watchから感じ取れずにいるが、成功に最も近い製品であることは間違いないとも思う。こうしたデバイスに興味があるならば、購入の際に検討すべき第1候補であることは確かだ。



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