「インテル入ってる」はPCからIoTへ その流れが加速する2016年:CES 2016(1/5 ページ)
PC用プロセッサの会社というイメージから脱しつつあるIntel。CES 2016でアピールしたのも、“PCの先”を見据えた応用世界だった。
伝統のステージで米Intel CEOが語った「近い将来に起こること」
毎年年始に米ネバダ州ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」。開催前夜に行われる基調講演は、かつて米Microsoftのビル・ゲイツ氏によるスピーチが定番だった伝統のステージだ。CES 2016では、米Intelのブライアン・クルザニッチCEOがそのステージに立った。同氏による基調講演は、2014年のCESから数えて3回目となる。
登壇者の顔ぶれを見れば分かるように、かつては家電の世界においてもPCやその関連技術は花形だったが、そのトレンドもいまは昔、CESそのものの出展社や展示内容も変質しつつある。
事前に予想はしていたものの、今回の基調講演はゲーム以外でPCの要素がほぼなくなり、「Intelと言えばPC」というイメージを払拭(ふっしょく)しようとしているようだ。2015年の基調講演に引き続き、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を中心として、同社のテクノロジーとさまざまな分野を結び付けた新たな協業や製品例が続々と登場した。
超小型コンピュータのCurieでスポーツが変わる
2015年の基調講演では、洋服のボタン程度と非常に小さなウェアラブル機器用モジュール「Curie(キュリー)」が発表され、これを搭載するスマートウォッチのようなウェアラブルデバイスに焦点が当たっていた。
Curieは省電力の32ビットプロセッサ「Quark SE SoC」をベースにしたx86によるプログラミングに対応し、本体に384KBフラッシュメモリ、80KBのSRAM、DSPセンサーハブ、Bluetooth LEの通信機能、6軸センサー、バッテリー充電回路などを備えた超小型の組み込み用ボードだ。今回の基調講演では、10ドル以下の価格で今四半期中に出荷されることが明らかになった。
その採用例として注目したいのがスポーツ分野だ。Intelは米大手スポーツ専門テレビ局のESPNとのコラボレーションを発表し、Curieによる新しい試みを行う。冬季エクストリームスポーツの祭典「X Games Aspen 2016」において、男子スノーボード競技のスロープスタイルとビックエアにCurieを組み込み、空中での回転、ジャンプの高さ、距離、速度、着地時の力のかかり方など、演技データをリアルタイムに提供するというのだ。
これにより、アスリートに詳細な分析結果を提供し、競技の解説者に新たな指標を与え、スタンドの観戦者や視聴者には新たな観戦体験をもたらすという。
テレビ技術会社であるReplay Technologiesの「freeD」テクノロジーにより、3D撮影したバスケットボールの試合を、タッチ操作で自由なアングルから視聴できるというデモ。同技術はIntelプラットフォームに最適化しており、デモにはIntelのサーバ技術と「Surface Pro 4」を用いている
基調講演のステージ上には、パフォーマンス用のセットも用意された。ここでCurieを組み込んだBMXバイクがパフォーマンスを行うと、ジャンプの高さや長さ、スピード、加速度などがリアルタイムで計測され、スクリーン上にリアルタイムで映し出される。これにより、数値でパフォーマンスの難度が直ちに把握できるというわけだ。
壇上ではRed Bull Media Houseとのパートナーシップも発表。Curieを装着したアスリートがパフォーマンスを行うと、同様に各計測値がスクリーン上にリアルタイムで表示された。
また、シューズメーカーのNew Balanceとウェアラブル技術の開発で協業を発表。IntelのRealSenseを用いて制作した3Dプリントによるカスタムメイドのミッドソールを備えたランニングシューズについて紹介した。また、同社は2016年の年末商戦(ホリデーシーズン)での発売に向けてスポーツ向けスマートウォッチを開発する。
同様に協業しているOakleyの例では、音声で操作可能なリアルタイムのコーチング機能を備えたスマートアイウェア「Radar Pace」をプレビューした。このアイウェアをすることで、トレーニング中にフィードバックや分析結果が得られ、パフォーマンス改善に貢献するという。
今後はこうしたCurie組み込みの対象がさらに拡大し、Intelとのコラボモデルが多数現れると考えられる。
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