Moveモーションコントローラーの“リモコン感”にはガッカリ 体験して分かった「PlayStation VR」の強みは?:予約できなかった人、慌てるでない
予約困難になりつつある「PlayStation VR」。ソニー・インタラクティブエンタテインメントにお邪魔して実際に体験した結果、「発売日に手に入らなくてもいいかも」と思っちゃいました。その理由は……。
6月18日より、ソニーストアや各量販店で予約受付を開始したプレイステーション 4(PS4)用VRシステム「PlayStation VR」(PS VR)ですが、Web上では予約受付開始の午前9時を迎えるとともに即売切れ状態になるなど、最近の家庭用ゲーム機では久しぶりに大きな盛り上がりを見せています。筆者も残念ながら予約できず、量販店で実施している抽選予約の結果を待っている状態です。
2016年は、各社からVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の一般向け製品版が立て続けにリリースされたこともあり、「今年はVR元年になるのでは」と各所で、もてはやされています。VRがここまでメディアの話題をかっさらっている状況を見れば、その考えは間違っていなかったと言っていいでしょう。
今回は、品川にあるソニー・インタラクティブエンタテインメントにお邪魔して、実際にPS VRを体験した感想をお伝えしようと思います。
装着感は良好、可動部分が多くて頭にフィットさせやすい
PS VRのVRヘッドセットを装着するには、白いリング状の前方部分にあるクッションにおでこを当てながら、後方のクッションが後頭部に違和感なく当たるように白いバンドを調整します。装着したら、ディスプレイが内蔵されている黒い箱を、底面にあるボタンを押しながら前後に調整してピントや装着感を最終調整します。いろいろなところが可動するので最初は混乱しますが、慣れればどうってことなく、むしろ細かく調整ができて自分にあった装着感を追求できます。
VRヘッドセットのサイズは約187(幅)×185(高さ)×277(奥行き)ミリ、重さは約610g(ケーブル含まず)で、手に持ってみると見た目や数字の割にかなり軽く感じます。前後の重量バランスに偏りもなく、重さによる不快感は少ないです。
VRヘッドセット部分にはフルHD(1920×1080ピクセル)表示に対応する5.7型有機ELディスプレイ(OLED)を搭載しています。OLEDは残像が液晶に比べて少ない特性を持つため、VR HMDに採用するディスプレイとしては最適。さらに映像表示は120fps(1秒間あたり120回コマの画像表示)に対応し、滑らかな映像表現が可能です。
実際に試遊して頭を激しく振ってみたりもしましたが、映像の追従性もよく、VRヘッドセットが頭からずれたりすることもありません。視野角は約100度で、他社のVR HMDと比べてもほぼ同等。装着直後は周囲の枠が気になったりもするのですが、ゲームが始まると自然と視界の中心に意識が向くのか、枠が段々気にならなくなり、十分な没入感を味わうことができます。
ただし、ずっと装着していても疲れないというわけではありません。夢中になってプレイした後に、PS VRを取り外すとやはりそれなりの疲労を感じます。この疲れを感じてでも遊びたいコンテンツがあるか、それが重要となりそうです。
コントローラーは改善の余地あり
PS VRでは、ゲームの操作に「DUALSHOCK4」と「PlayStation Moveモーションコントローラー」を用います。VRヘッドセットに搭載された9つのLEDやPlayStation Moveのスフィア(光球)を、2つのレンズと映像センサーを搭載した「PlayStation Camera」(プレイヤーの前方に設置)でトラッキングし、三角測量と同じ要領で奥行きを計測して動きを検知します。
特に奥行きを検知する機能は、プレイヤーに手を伸ばさせたり、前方へコントローラーを押し込ませたりするような操作が可能となり、ゲームに立体感が生まれてより没入感を高めることに成功しています。
ただし、残念に感じたところもあります。それはモーションコントローラーの「PlayStation Move」です。せっかく高い没入感を実現しているのに対し、Moveの「リモコン感」にはがっかりしてしまうのです。Oculus Riftの「Oculus Touch」は、ボタンやトリガーのほかにフィンガートラッキング機能を備えており、本当にVR空間に自分の手が現れたような未来の感覚が味わえます。HTC Viveの「SteamVRコントローラー」だって非常に高精度なトラッキングによって、VR空間へ自在に介入できる手の代わりとなります。
Moveはトラッキング精度に問題があるのか、本体を静止している状態でもオブジェクトが細かく震えていたり、かなり動きが大ざっぱだったりという印象が拭えません。銃で小さな的を狙うとなんとか命中はするのですが、アシストが効いたような感じがして「自分の腕で命中した」というような感覚が味わえないのです。このおかげで、筆者は「別に発売日に手に入らなくてもいいかな」とさえ思ってしまいました(とはいえ必死に予約できるところを探してるんですけど)。
そしてMove本体はこれまで世に出たVR HMD用のモーションコントローラーとしてはかなりシンプルな製品です。そもそもこのハードウェアは、2010年9月にPS3用として発売したもの。6年前のデバイスをそのまま持ってきたことに対すること、そして実際に使ってみてどう感じるかは、ユーザーが他のVR HMDを体験しているか否かでだいぶ印象が変わりそうです。
ただし、他のVR HMD製品がどれも10万超え(そして数十万円クラスのハイスペックPCが必要)なのに対し、PS VRが税別で5万円を切っていることも考慮する必要があります。
PS VRが他のVR HMDに負けないこと
PS VRが他のVR HMDに負けないこと、それはソフトウェアのラインアップでしょう。現在、国内34社をはじめとする全世界230社以上のパブリッシャーやデベロッパーがPS VRへの参入を表明しています。国内では15本のローンチタイトルが予定されており、発売後も40本を超えるタイトルが準備されています。
PS VRのラインアップは、国内のユーザーにとって昔から「このゲームの中に入ってみたい」と誰もが思ったことのある有名タイトルばかり。これは他社のVR HMDで実現することはなかなか難しいもの。これこそがPS VRの最大の強みです。単純にゲームを楽しみたい人に、いくらOculusやHTC Viveのモーションコントローラーが素晴らしいかを説いても、そのユーザーにとって1本のキラーコンテンツタイトルがPS VRに存在すれば、その人にとってPS VRが至高のVR製品になるはず。
前述したように、PS VRのハードウェア性能(主にモーションコントローラーの件。VRヘッドセットは他社製品に比べても遜色ありません)はハイエンドを求めるユーザーにとって完璧ではないにしろ、コンテンツによってユーザー体験を向上させることは不可能ではないはずです。10月13日の発売日以降、PlayStationらしいVirtual Realityの世界が実現することに期待しています(お願いだからモーションコントローラー、新規開発ですごいのをお願いしますよソニーさん!)。
関連記事
- VR USER
- PS4用VR HMD「PlayStation VR」、10月13日に国内発売
ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、プレイステーション 4用VRシステム「PlayStation VR」の発売日をアナウンスした。 - 「PlayStation VR」は2016年10月に4万4980円で発売 PC向け高性能VR HMDの約半額
SCEが開発しているプレイステーション 4用のVR対応ヘッドマウントディスプレイ「PlayStation VR」。発売時期と価格がついに明らかになった。 - VR空間で手が使える衝撃――「Oculus Touch」を体験して感じたモーションコントローラーの重要性「NVIDIA ULTIMATE FESTA 2016」
NVIDIAが、最新技術を披露する「NVIDIA ULTIMATE FESTA 2016」をアキバで開催。多彩なイベント内容のほか、VR体験コーナーでは年内登場予定の「Oculus Touch」を体験できた。VR空間で自分の手が使えるだけで、没入感は飛躍的に向上する……! - “ヴァーチャル・セックス”は、何を産み出す? 「アダルトVRフェスタ」で最前線にいるクリエイターに聞く
「歴史上、ポルノが繁栄しないメディアなど存在しない」――VRブームを迎えた今、水面下で盛り上がりを見せるのがアダルトコンテンツだ。VRは“大人の快楽”にどんなブレイクスルーをもたらすか。国内初となるイベント「アダルトVRフェスタ01」で、アダルトVRの最前線にいるクリエイターたちに話を聞いた。1ページ目はVRの現状、2ページ目以降はアダルトVRに関する話題を取り扱う。 - 誤解だらけの「ホログラム」 それっぽい映像表現との違いは?
最近の映像表現でやたらと目にする「ホログラム」という言葉。しかし、本来の意味で正しく使われていることがほとんどないのをご存じだろうか。 - やっと届いた「Oculus Rift」製品版を開封して分かったこと
出荷遅延が続く「Oculus Rift」ですが、ようやく手元に届きました。US在住という地の利もあり、比較的早めに入手できたので、パッケージの開封からレポートします。 - 据え置き機と遜色なし!「GALAXY×Gear VR」で気軽に楽しめる“VR”の世界
VR元年といわれる2016年――さまざまなVR製品が市場に登場しているが、モノが高価だったり、ハイスペックPCが必要だったりと、いわゆる“フツー”の人が遊ぶにはまだまだハードルが高いのが現状だ。そこで注目したいのがGALAXYスマートフォンと組み合わせて使う「Gear VR」である。本連載では、Gear VRで実際にどんなアプリが楽しめるのかを紹介していこう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.