歴代の“人間工学キーボード”に恥じない製品か? アルカンターラ採用の「Surface エルゴノミクス」実機レビュー(3/3 ページ)
3月に発売した「Microsoft Surface エルゴノミクス キーボード」は、高級車のシートなどに使われる高級素材「アルカンターラ」を採用し、見た目と質感に注力した製品だ。キーボードとしての使い勝手は?
機能よりもデザインを優先する人向けの一品
実際に使ってみると気になる点もある。多くのフルキーボードではキーのブロックごとで広めに取られている間隔が、本製品では通常のキー間隔と変わらないことだ。
一般的なフルキーボードでは、正面にQWERTYキーのブロックがあり、その右側にInsert/Deleteキーや上下左右キーのブロック、さらにその右側にはテンキーのブロックが並ぶ。これらブロック同士の間隔は、通常のキー間隔に比べて、やや広めにとられていることが多い。
アルファベットや数字以外のキーを押す際は、キーの位置を頭の中で覚えているように見えて、実際には指先でこのブロック間隔を読み取ってキーの位置を判断しているケースが多い。例えばBackSpaceキーを押す場合、その右側にあるInsertキーとの間隔が通常のキー間隔より広いことから、その間隔の左側にあるのがBackSpaceキーだと判断している、といった具合だ。
しかし、本製品はこのブロック同士の間隔が通常のキー間隔と同じなので、この方法が使えず、基本的にホームポジションからの距離のみでキーの種類を判断する必要がある
同社の過去の製品では「Sculpt Comfort Desktop(L3V-00029)」をはじめ、ブロックの間隔が設けられていることが多いのだが、そうではない本製品は使い勝手はかなり異なる。筆者は本製品を数日ほど使う中で、この点だけはどうしても慣れることができなかった。
もう1つ、本製品はエルゴノミクス形状で長時間の打鍵を苦にせず使えることがセールスポイントとされているわけだが、トラックパッドやトラックポイントなど、ポインタを操作する機能は搭載されていない。マウスを操作する際はホームポジションから右手を離す必要がある。
仮にキーボード手前、パームレストの中央位置にトラックパッドなどが配置されていれば、ポインタの操作はそこで済ませ、細かい作業の時だけキーボードから手を離してマウスを使うという役割分担ができるわけだが、本製品はトラックパッドに相当する機能はないので、手にフィットするせっかくの形状が生きていない。この点は、機能とコンセプトにややズレがあるように感じられなくもない。
また同社の過去製品に見られた、戻る/進むボタンは、上下スクロールのためのキーもないので、こうした部分の付加価値を求めるのであれば、若干物足りなさを感じる可能性もなくはない。
機能よりもデザインを優先した部分がいくらか見られるが、この2点がクリアできれば、手が置きやすく、操作性を向上させる多数のホットキーも搭載、またデスク上への収まりのよい本製品は満足できる一品になりうるだろう。最近のキーボードがホワイトもしくはブラックのほぼ二択という中、グレーのボディーが醸し出す高級感もなかなかのものだ。店頭であまり展示を見かけないのが残念だが、もし見かけることがあれば、パームレストの質感の高さなどをぜひチェックしてみてほしい。
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