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2017年のPC・タブレット動向を冷静に振り返る本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

世の中が常に変化をし続けているように、「パーソナルコンピュータとは何か」も変化し続けているが、2017年はどんな年だったのか。PCとタブレットを中心に、この1年の動向を振り返る。

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縮小傾向にあるAndroidタブレットの行方

 一方、Androidベースの製品はタブレットデバイスを縮小する方向だ。Samsung、ASUS、Lenovoなどが代表例に挙げられる。

 唯一、このジャンルに力を入れているのは、Huaweiだろうか。日本市場向けに地上デジタル放送の受信機能と防水機能を搭載した「MediaPad M3 Lite 10 wp」は、低価格ながら4スピーカーを搭載し、映像メディアを気軽に楽しむ「現代のテレビ」的な提案をしている。

 こうした機動力のある商品企画と開発体制がHuaweiの強みだが、裏側の視点にまわると、各国市場の細かなニーズに応えつつ、しかもリーズナブルな価格(上記製品は実売3万円台後半)を実現できなければ売れない時代とも言える。

MediaPad M3 Lite 10 wp
Huaweiの「MediaPad M3 Lite 10 wp」。ワンセグ・フルセグチューナーの内蔵や、防水・防塵(IP67)への対応が特徴だ

 本来ならばAndroidタブレットもiPad Proと同じように、従来はPCが担ってきた生産性の一部を引き受けるべきなのだろうが、応用ジャンルの調整はOSのユーザーインタフェース設計などの見直しも必要だと思う。

 AppleはiOS 11とセットでそれを行い、恐らくiOS 12ではさらに洗練させてくると予想しているが、AndroidデバイスのOEMがPCの置き換えを主眼に置いたユーザーインタフェースの作り込みを独自に行うことは難しい。

 いや、現実問題として不可能と言ってもいい。そこまでのコストをかける経済合理性がないからだ。Appleならば、自社製品と自社OSがセットになっているが、Androidの場合は基本部分のコードは多くのメーカーで共有している。

 独自に拡張したとして、元のAndroidの更新に追随していくのは簡単ではない。すなわち、本気でAndroidタブレットの位置付けを見直しつつ、少しづつPCの方向に寄せていくと考えたとしても、ベースとなるコードにそれらが取り入れられていかなければ持続性のない一時的な提案にとどまる。

 Android製品を自社ハードウェアの機能とセットで実装しようとしても、なかなか費用対効果を出せる規模にはなりにくい。Samsungの「Galaxy Note」ぐらいの規模があれば、それでも取り組めるだろうが……。

Galaxy Note8
「Galaxy Note」シリーズの最新モデル「Galaxy Note8」。Galaxy Note7からSペンの機能を継承しながら、新たにデュアルカメラを搭載した

 ということで、Androidタブレットがどういう方向に向かうか、つまり現状のメディアタブレットとしての位置付けを超えてPC側に寄せていくかどうかは、Googleがそうした方向にイニシアチブをとるか否かに関わってくると思うが、そうすると「Chromebook」の領域とかなりの部分重複するようになる。

 さらには、当然ながら薄型軽量を特徴とするモバイル系のPCやMacとの重複も生まれてくる。当面は大きな変動はないだろうが、長期的トレンドとして2in1にしろ薄軽系クラムシェルにしろ、各社のジャンル編成が変化してくるかもしれない。

「パーソナルコンピュータとは何か」は変化し続ける

 とこのように書き進めていたが、同じようなことは誰もが考えているのだろう。例えば、米Media T3の行ったインタビューで米Appleの上席副社長フィル・シラー氏は、「使い方次第ではあるが、一部のユーザーはMacではなくiPad Proを選ぶようになる」と話した。

 インタビューの詳細はここでは割愛するが、筆者はこの話、典型的な世代間ギャップだと考えている。PCに慣れ親しんだ世代は、たとえスマートフォンやタブレットで情報に接する時間の方がPCを使う時間より長くとも、道具としてのPCの位置付け、重要度は変わらない。他に置き換えの効かないライフスタイル、ワークスタイルを送っている。

 しかしながら、昨今は学習環境や仕事環境の中で「PCに接する必要性」が出てくることはあっても、ライフスタイルの中で「PCがなければならない」という体験をする機会がない。ライフスタイル、ワークスタイルの中にPCが組み込まれていない、あるいは重要度、マインドシェアが低いなら、PCという極めて汎用(はんよう)性の高い道具である必要はない、と考える人が出てくるのも当然だろう。

 もっとも、これは新たな製品のアイデアを考えるチャンスかもしれない。タブレットというジャンルがPCと交配しはじめ、まだ数年しか経過していない。

 パーソナルな、つまり個人が求めるコンピュータとはどのようなものなのか。世の中が常に変化をし続けているように、「パーソナルコンピュータとは何か」も変化し続けている。本来、PCはパーソナルコンピュータの理想を追い続けながら進化し、そのカタチを変えてきた製品だ。

 筆者がPCを使い始めたころ、それはブラウン管につながれ、キーボードだけで操作をしていた。その後、マウスを用いてグラフィカルな画面を通じ、メタファーとして表示されるアイコンやボタンなどを操作するようになった。

 そしてタッチパネルで自在にコンピュータを操る時代となり、今は常にネットワークでコンピュータ同士が接続され、表示内容に合わせて指で指示を出すだけで、多様なサービス、アプリケーションを利用できるようになっている。

 その結果、スマートフォンやタブレットというカタチの製品が生まれたわけだが、PCの基本的なカタチは2in1という、ある意味、過渡的な形態のまま変化してない。しかし、2018年は大きく変わる可能性もありそうだ。

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