Windows 10“次々期”大型アップデート「19H1」のプレビュー始まる:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」
Windows 10開発プレビュー版「Windows 10 Insider Preview」は、これまで「Redstone」の開発コード名で知られていたが、2019年春の大型アップデートからは「19H1」というシンプルなものに変わる。Windows 10 Insider PreviewはRS5と19H1に分岐し、それぞれ開発を進める。
難産だった「Redstone 4(RS4)」こと、Windows 10の大型アップデート「April 2018 Update(1803)」が2018年4月末にリリースされてから3カ月が過ぎようとしている。
この間に、どれくらいのユーザーがアップデートを行ったのだろうか。モバイル広告プラットフォームのAdDuplexが公開している最新レポートによれば、6月末時点でのWindows 10におけるApril 2018 Updateのシェアは78.1%で、ほぼ8割に達した。過去の推移を見る限り、8月中には恐らく90%以上の水準に達する見込みだ。
「Windows as a Service(WaaS)」におけるWindows 10の最新バージョンへの入れ替えペースは日を追うごとに加速している。
これは、2018年秋に一般公開予定のWindows 10次期大型アップデート「Redstone 5(RS5)」から、“さらに次”のアップデートが見えつつある中、WaaSのコンセプトがベンダーとユーザーともに広く受け入れられつつあるのだと考えている。
RS5の開発は中間地点、早くも“次々期”アップデート登場
Windowsの開発プレビュー版「Windows 10 Insider Preview」の新バージョン(ビルドと呼ぶ)を一般公開前に試用できる「Windows Insider Program」では、7月に大きな変化が訪れた。
米Microsoftが7月11日(米国時間、以下同)にWindows Insider ProgramのFast Ringユーザー向けに配信した「Build 17713」では、デスクトップ画面右下に表示されるウオーターマークが変化しており、このことに気付いた方もいるかもしれない。
直前の「Build 17711」と比較してみると、Build 17711では「Windows 10 Pro Insider Preview」の「rs_prerelease」となっているのに対し、Build 17713では「Windows 10 Pro」の「rs5_release」と表記されている。これはFast Ringでの表示だが、同ビルドにおいて明確に「開発途上バージョン」が「RS5のリリースに向けたバージョン」に分岐したことが確認できる。
なおBuild 17713では、それまでのビルドで「Skip Ahead」を選択していたユーザーの設定がいったんリセットされ、当該のユーザーは全員Fast Ringに戻されていた。
Skip Aheadには2つの特徴があり、1つ目は「現行開発バージョンよりも“先”のバージョンを試せる」ことで、もう2つ目は「プリインストールのMicrosoft製アプリ群を個々のアプリ単位で最新のものにアップデートできる」という点にある。
つまり、Fast Ringでは「Microsoftが規定した“パッケージ状態”でのWindows 10の開発途上バージョン」が試せるのに対し、Skip Aheadでは「より新しいバージョンを自分で選択して試すことができる」という違いがある。
このSkip Aheadだが、選択可能になる期間は非常に短く、一度タイミングを逃すとFast Ringなど他のRingからの変更は行えない。ケースバイケースだが、大型アップデートの配信が終わって次のバージョンの開発がスタートしてからしばらくしたタイミングが選ばれることが多い。
ここでSkip Aheadに切り替えたユーザーは「rs_prerelease」の表記が継続され、Fast Ringに残ったユーザーには「rs△_release(△は数字)」のような形で分岐する。つまり、Build 17713のタイミングでSkip Aheadへの分岐の準備が整ったというわけだ。
そして、Microsoftは7月25日にRS5としての「Build 17723」をFast Ringで、さらにRS5の次に予定している大型アップデートとなる「Build 18204」をSkip Aheadで公開した。この公開前にSkip Aheadが再び選択できるようになっており、Windows 10 Insider Previewはここで2つに分岐した格好だ。これら2つのビルドは現時点ではほぼ同じ更新内容だが、今後は機能などに違いが出てくることになる。
うわさ通り、2019年春の一般公開を目指すWindows 10の“次々期”大型アップデートは「19H1」と呼ばれることが、Windows公式ブログの発表から明らかになっており、「Redstone(RS)」の開発コード名はRS5が最後となるようだ。
いずれにせよ、Skip Aheadの登録は8月中の早いタイミングで締め切られる可能性が高いため、興味ある方は早めにFast Ringから切り替えておくといいだろう。
一方、RS5ではFast Ringのリリースペースが遅いだけでなく、Slow Ringに至ってはまだ1回しかビルド配信が行われていない状況で、「ほぼ機能していないのでは?」という疑問がわいてくる。
Windows 10も最初期の「Threshold 1」「Threshold 2」から、Redstoneで現状配信が行われる「RS5」まで、既に7つ目の開発バージョンに達している。機能的にも目立った更新が減りつつあり、そろそろWindows Insider Programを含む全体の更新計画の見直し段階に入りつつあるのかもしれない。
関連記事
- Windows 10大型アップデート「April 2018 Update」は何が新しくなったのか
ギリギリ4月に間に合わせたWindows 10の大型アップデート「April 2018 Update(1803)」。その変更ポイントをチェックする。 - 突如現れた軽量OSの「Windows 10 Lean」とは?
ようやく2018年春のWindows 10大型アップデート「April 2018 Update」が配信されたばかりだが、2018年秋の大型アップデート「Redstone 5」では新しいエディションが追加されるのではないかと、Windows Insider Program参加者の間で話題になっている。 - 「Surface Go」日本版は本当に高いのか Office付属は妥当なのか
ウワサの低価格Surfaceこと、「Surface Go」がついに登場した。しかし、日本モデルは米国モデルと一部仕様が異なり、それもあって最小構成価格が高めなことで、批判の声も少なくないようだ。今回はSurface Go日本モデルのこうした点について考察する。 - 「Windows on Snapdragon」に早くも次世代モデルが登場か
まだ製品数が少なく、日本市場への投入もないことから、徐々にユーザーの興味が薄れつつあるような「Windows on Snapdragonデバイス」だが、ここに来て次世代モデルのウワサも聞こえてきた。 - 「他のセキュリティ対策ソフトはもういらない」とアピールするWindows Defenderの現状
Windows標準のセキュリティ対策機能は“オマケ程度”という認識はもう過去のもの。Windows 10の世代では、Microsoftがセキュリティ対策を大幅に強化しており、最新のセキュリティ動向を考慮したアップデートも続けているのだ。 - MicrosoftがWindows不要のIoTセキュリティ「Azure Sphere」を投入するワケ
注力分野が「Windows」を中心としたクライアントソリューションより、「Azure」を中心としたクラウドサービスに移りつつあるMicrosoft。Windowsを必要としない新たなIoTセキュリティサービスである「Azure Sphere」投入の狙いを探る。 - 2018年春のWindows 10大型アップデートが完成か 見え始めたRedstoneの終わり
2018年4月に配信が始まる予定のWindows 10次期大型アップデート。いよいよ完成のとき、一昔前のWindows OSでいえば「RTM(Release To Manufacturing)」の時期が到来したようだ。 - 「Windows 10 S」を新しい動作モードとして広めようとするMicrosoft
Microsoftの「Windows 10 S」に対するスタンスが変化しつつある。一部には「Windows 10 Sは死んだ」といった論調の報道もあるが、実際は死んだどころか、むしろ特定用途ではメインストリーム製品としてプッシュする勢いで扱いが変わってきているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.