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Windows 10「October 2018 Update」のファイル消失問題とは何だったのか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

ファイル消失問題によって配信停止に追い込まれていたWindows 10の大型アップデート「October 2018 Update)」。ようやく配信が再開されたが、Windows 10における開発体制や配信手順には見直しが必要との声が少なくない。

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なぜユーザーのファイルが削除されてしまったのか

 今回のトラブルの詳細については、Windowsの公式ブログで10月9日に解説されている。

 これは「既知のフォルダのリダイレクト(Known Folder Redirection:KFR)」という機能に起因するものだ。前提として、この機能を有効にすることで、ユーザーは「既知のフォルダ」の場所を別のフォルダに指定できる。

 Microsoftによれば、2018年4月に配信したWindows 10大型アップデート「April 2018 Update」のフィードバックで、このKFRによりユーザーのPC上に「既知のフォルダ」の空のコピーが余分に生成されるという苦情があった。

 そこでOctober 2018 Updateのリリースに際し、これら「既知のフォルダ」の空のコピーを削除するというコードを埋め込んだが、これが別の変更点と連動する形で、結果としてKFR機能を有効にしていたユーザーの「“旧”フォルダの場所」や「そこに格納されていたコンテンツ」の両方を削除してしまう問題を引き起こしたという。

 KFRという書き方だとピンとこないかもしれないが、「デスクトップ」「ドキュメント」「ピクチャ」「スクリーンショット」「ビデオ」「カメラロール」という名称を挙げれば分かりやすいだろう。これらは各ユーザーフォルダの下に「c:¥users¥(ユーザー名)¥(既知のフォルダ名)」の状態で作成されており、それぞれ該当するファイルを格納している。

 Windows 10では構造上、これらのフォルダはデフォルトで全てCドライブ上に作成されるため、ストレージ容量の少ないノートPCやタブレットなどでは、あえて別ドライブや外部メモリ、あるいはOneDriveを指定してCドライブ外に待避することで容量を節約するテクニックを用いているユーザーも少なくないだろう。

KFR
「ドキュメント」や「ピクチャ」などのフォルダは、「c:¥users¥(ユーザー名)¥(既知のフォルダ名)」として作成されている。別の場所に変更できるが、その際に旧フォルダやそこに格納されていたファイルが削除されてしまう不具合が発生した

 ここで、全てのフォルダ内の情報が「ユーザーの指定した別のフォルダ」に格納されていれば問題ないが、例えばオリジナルの変更前のフォルダ内にデータが残っていた場合などでは、2つのフォルダに同じ種類のファイルが存在することになる。

 ここでOctober 2018 Updateをインストールすると、同アップデートに搭載された機能がKFRを参照して「“新しい方”のフォルダを“有効(Active)”なフォルダと判断」し、「“旧”フォルダ」を削除してしまうことが起こる。これがユーザーファイルが消滅するからくりだ。もしユーザーの意図しない形でKFRが有効化されていた場合、作業ファイルそのものが知らないうちに全て削除されてしまう可能性がある。

 その他の条件があるのかは不明だが、TwitterやRedditなどでの投稿を見る限り、かなりの規模で作業ファイルを削除されてしまったユーザーがいるようで、Microsoftはファイルを削除されてしまったユーザーのデータ復旧に乗り出すと表明した。米国のケースではMicrosoft Storeでの実店舗サポートの他、「+1-800-MICROSOFT」のフリーダイヤルによるサポート窓口を提案している。

 一方、Microsoftによれば、トラブル発生時にOctober 2018 Updateは全てのユーザーに配信されたわけではなく、あくまで「Windows Updateを実行したか、Media Creation Toolなどを使って手動でアップデートを行ったユーザーのみ」がインストールしている状態で、影響を受けたユーザーは「非常に少ない数(a very small number)」だという。

 そのため、前述のように該当するユーザーを対象に対策アップデートを先行配信し、一般ユーザー向けを含むWindows Insider Program以外の全てのチャネルでの公式配信を停止していたが、11月13日にようやく不具合が完全に修正できたとして、配信の再開に踏み切ったという流れだ。

 Microsoftは「広範な内部検証に加えて、Windows InsiderやOctober 2018 Update適用済みの数百万台のデバイスからのフィードバック、診断データについて時間をかけて詳細にチェックした結果、データ消失の証拠はこれ以上ない」と判断して、配信再開を決定したという。

 October 2018 Updateは慎重を期して、今後アップデート対象となるデバイスの状態に応じて順次ゆっくりと行っていく。また、アップデートに伴い、ユーザーのデバイスに導入されているアプリケーションの非互換性などの問題も発生しないよう、問題解決まで手動で「更新プログラムのチェック」を行っても、アップデートしないとしている。

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