中国のAI大国化をアシストしたのはゲイツ氏? AI戦略の要となる「Mictosoft Research Asia」20年の歩み:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
中国・北京にあるMicrosoftの最先端技術研究所「Microsoft Research Asia」(MSRA)が、設立20周年のイベントを開催した。その内容から、MSRAの今後について考えてみよう。
Microsoftの「AI」戦略を担うMSRAの立ち位置
MSRAでは「Web & Search」「Networking & Systems」「ML & Intelligence」「Speech & Languge」「Vision & Graphics」の5つの重点テーマを持って活動しており、その成果の一端は以前にMSRAを訪問した際のレポートにもある通りだ。
MSRAというと「小冰(Xiaoice)」や、そのローカル版とも言える「りんな」のAIチャットBot開発のイメージがあるかもしれないが、実際にはLUIS(Language Understanding Intelligent Service)のような構文解析や音声認識、Azureデータセンターにおける各種技術やBingのWeb検索技術まで、Microsoftの基礎技術研究の根幹を担っている。
今、Microsoftを横断する形で独立した研究部門として存在するAI & Research部門のトップをMSRA出身のハリー・シャム氏が担当していることからも分かるように、MSRSは特に機械学習やAI活用における研究では秀でている。だが同社によれば、本社のあるレドモンドのMicrosoft Researchを含め世界中が連携して動いており、必ずしも北京のMSRAがリードしているわけではないようだ。
2018年9月には、上海に第2のMSRA拠点とも呼べる「Microsoft Research Asia-Shanghai」が設立され、上海市が運営するINESA(上海儀電)と共同で「Microsoft-INESA AI Innovation Center」が設立・運営されていくことが発表済みだ。
アジアにおけるMicrosoft Researchの拠点はインドのハイデラバードなどにも存在するが、MSRAの名称を冠する施設はこの上海と北京の2つだけとなっている。上海での活動内容については今回のイベントでは語られなかったが、今後ある程度成果が出た時点で改めて報告されることになるだろう。
Computer Visionにおける最新の研究成果。中国では画像認識を使った本人確認や行動追跡のソリューションが世界と比較しても極度に発達しており、これはMSRA並びに周辺大学のソフトウェア研究の注力ぶりが反映された結果ではないかと筆者は考えている
MSRAでは本イベント開催にあたり、世界の報道関係者を集めた「Microsoft AI Immersion Tour」という最新成果を報告する紹介ツアーも開催しており、前回のツアーからのアップデートや最新事情を取材することができた。このあたりの事情は本連載で改めて紹介していく。
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