Microsoftの決算に見るWindows 10への移行とIntel製CPU供給量の関係:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」
Microsoftが2019年度第2四半期の決算を発表した。そこから読み取れるWindows 10の現状と、当面は影響があると思われるIntel製CPUの供給量に関する部分を見ていこう。
米Microsoftは1月30日(米国時間)、同社の会計年度で2019年度第2四半期(2018年10月〜12月期)決算を発表した。同四半期の売上は325億ドルで前年同期比12ポイントのアップ、営業利益は103億ドルで18ポイント増となる。
GAAPベースでの純利益は84億ドル、非GAAPベースでの純利益は86億ドルだった。特にOffice製品とクラウドサービスでの伸びが大きく、同社が2016年6月に買収を発表したLinkedInの売上の伸びは過去最高となる29ポイント増だった。Surface事業も好調で、売上は39ポイントのアップと、ホリデーシーズンを挟んだ四半期での業績は上々で、事業撤退もささやかれた一時期のうわさを払しょくするだけの成績を残している。
Windows事業が唯一の減益カテゴリーに
この決算をもう少しだけ詳しく見ていこう。「Productivity and Business Processes」「Intelligent Cloud」「More Personal Computing」の全てのカテゴリーにおいて、売上と営業利益ともに上昇している。
ちょうど1年前の決算報告と比較してみると分かるが、More Personal Computingが1年を通じて営業利益が増える一方で、売上はそこまで変化していないのに対し、残り2つのカテゴリーは売上と営業利益ともに2桁ベースで大きく成長している。
特にProductivity and Business Processesについては、売上ベースでもMore Personal Computingに肉薄しつつあり、(More Personal Computingのカテゴリーに含まれる)Windows OEMのライセンスビジネスがかつて同社の過半を支える水準だったのが過去の話であることを如実に語っている。
クラウドと企業向け製品の強化は昨今のMicrosoftが目指す方針の延長線上にあり、かなり模範解答に近い業績といえる。一方で興味深いのが製品別の売上実績だ。
全製品で、唯一の売上減少を示しているのがWindows OEMだ。つまり、PC販売でのライセンス提供から得られる利益が減っていることを表している。2018年半ばには、減少の一途をたどっていたPC販売が若干上向いたことが話題となった。
Windows 7の延長サポートが2020年1月14日に終了することを受け、現在、各所で稼働中のWindows 7を10以降のPCに置き換えるべくさまざまなキャンペーンが展開中だ。その山場の1つが、予算の確保が行われることが多い10月〜12月期のシーズンだったと想定されるが、その意味でWindows OEM減少はやや残念な傾向かもしれない。
この内訳を、もう少しだけ詳しく見ていこう。
Windows OEMのカテゴリーでは、ProやEnterpriseなどのライセンス費用を別途徴収するタイプの製品と、non-Proというコンシューマー製品向けのライセンス提供の主に2種類が存在する。
戦略上の理由から、non-Proの比率が年々落ちていることは過去の本連載でも何度も触れているが、今回は主に企業向けライセンスでの主役となるProカテゴリーでマイナス2ポイントの落ち込みとなっている点に注目したい。これが意味しているのは、(企業向けを含む)PCリプレイスがこの時期にあまり進んでいないということだ。
この最大の原因は、PC向けプロセッサの供給者であるIntelの製造ロードマップ遅れだ。Wall Street Journalなどがアナリストらの意見を基に解説しているが、14nm製造プロセス世代のプロセッサ供給がいまだ完全には安定しておらず、OEM各社のPC出荷に影響を及ぼしている。
実際のところ、10nm世代以降の製品が安定供給され始めるといわれる2019年後半までは似たような状況が続き、少なくともあと半年以上はMicrosoftおよびOEMパートナー各社の業績に悪影響を及ぼすことになりそうだという予測だ。その意味で、Windows 10への移行状況と合わせ、引き続きウォッチしていきたい項目だ。
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