小売業界の多くが提携相手にMicrosoftを指名する理由:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)
Microsoftが、矢継ぎ早に小売業界のビックネームと提携や協業を展開している。その理由を全米小売協会(Naitonal Retail Federation)の年次イベントから読み解いてみよう。
日本での動きはどうなのか
このように、Amazon.com対抗という流れの中で小売各社によってMicrosoftが指名される一方、Microsoft自身もその小売向けソリューションのアピールのために業界のビッグネームらの名前を活用しているように思う。
求められるのは「成功事例」で、ソリューションの成功そのものをアピールすることで次の機会を狙えるだけでなく、今回のSunriseのように成功事例そのものを「外販」するケースも増えてくるだろう。こういった動きの中で、次世代リテールのリファレンスデザイン的なものが確立されていき、一種のカタログのように横展開が容易になるのだと考える。
事例の1つはスマート冷蔵庫(自販機)で、これは2019年3月に開催される「リテールテック」で実際に展示が行われるという。中国ではJD.com(京東)がよく展開しているもので、今回のNRFではIntelブース内でも展示が見られた。
よくコンビニなどで飲料が入った冷蔵ケースが設置されているが、この内部に監視カメラを取り付け、画像認識と行動認識を用いて利用者がどの商品を手にしたかを分析する。ケース扉の解錠にはQRコード認証などを用い、ここで認証されたアカウントに取り出した商品を課金すればいい。中国では実際にWeChatのミニプログラムの一部として実装されている。
今回、このスマート冷蔵庫を作れるソースコードやケースのリファレンスデザインがGitHubなどで公開されるとのことで、このような形で水平展開可能なソリューションを多数用意していくのもMicrosoftの取り組みの一環なのだろう。
Microsoftが用意するスマート冷蔵庫(自販機)のリファレンスデザイン。中国でよく見られるComputer Visionを使った最新の自販機で、取り出した商品と人の動きをカメラで自動認識し、最初に扉を解錠したときの認証情報で課金を行う。これが実際に作れるソースコードなどの配布を行うという
なお、日本国内では前述した一連の米小売各社との提携のようにイオン、トライアル、ローソンの3社が協業を表明している。個人的には九州エリアを中心にスーパーマーケット(スーパーセンター)を展開するトライアルが注目だと考えている。
同社の店舗では非常に貪欲に最新ソリューションを取り入れ、実験を繰り返している。新技術のキャッチアップも積極的で、地域スーパーながら注目の存在だ。同社に限らず2019年は小売業界でITを使った新しい試みが続いているという話を多数聞いており、興味ある方はぜひ最新ニュースに注目していてほしい。
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