「Sets」騒動に見るWindowsのユーザーインタフェースあれこれ:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
MicrosoftがWindows 10への導入を考えていた「Sets」。紆余(うよ)曲折を経て、組み込みが断念されたようだ。その経過をたどり、そこから浮かび上がってきたことをまとめた。
Windows Insider Programが機能した一例?
過去の本連載記事でも何度か触れているが、「Sets」の問題は結局のところ「ユーザーに理解されにくい挙動をもったインタフェース」という部分にある。Windows 3.0や同3.1に始まり、現在のインタフェースがほぼ確立したWindows 95以降、多くのユーザーに「Windowsとはこのように使うもの」ということが理解されてきた。
一方で、Microsoftは「よりモダンなユーザーインタフェース」を志向して「Windows 8」をリリースしたりするが、既存ユーザーが使い慣れたUIからはかけ離れていたり、あるいはデバイス要件が厳しすぎて機能を満足に利用できるOEM製品が行き渡らなかったりと、結局は続くWindows 8.1でUIをWindows 7以前のものへと寄せ、最終的にWindows 10で元のUIへと回帰することになった。
Setsは従来までアプリケーション単位やウィンドウ単位で管理されていたものが、ユーザーの操作次第でさまざまなコンビネーションをまとめることが可能になり、結果として「複雑さ」を生み出している。
かつて「リボン」UIがOfficeに導入された際も、Microsoftは「ユーザーが使い込むほどに最適化され、必要な機能をシンプルに引き出しやすくなる」と言い立てていたが、人や使い方によって挙動が大きく変化するUIは教育上も非常に筋が悪いと筆者は考えており、個人的にあまり評価していない。
以前、Microsoft本社のテストラボを見学したことがあるが、そこでのフィードバックが世間にいる多くのWindows利用者の声を代弁するものでもなく、とかく作り手側の論理で進められる傾向が強いというのはよくある話だ。
前述のジョー・フォリー氏によれば、「Sets」が最も相性の良かった仕組みは「Microsoft Office」で、実際にOfficeチームが最も熱心にSetsの開発を進めていたようだが、最終的にユーザーからのフィードバックで開発は中止となった。その意味では、形骸化が進みつつあったWindows Insider Programがある程度しっかり機能したということで評価できるのではないだろうか。
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